新型コロナウイルス感染拡大の影響で、旅行業界は大きなダメージを受けました。しかし、2022年10月には訪日個人旅行の解禁や全国旅行支援なども行われ、2023年に入ってからは復活の兆しを見せています。
そんな中、株式会社日本旅行は2020 年度からスタートした中期経営計画「TRANSFORM 2025」を、開始と同時期に発生したコロナ禍の影響拡大を受け一時凍結。2021年、マーケットが「コロナ禍以前には戻らない」ことを前提とし、日本旅行が進む方向性の明確化を図るため、新たな中期経営計画をスタートしました。
ウィズコロナ時代の生き残りに向けたビジネスモデル変革の核となるのがDXです。DX推進のため、近年さまざまな人材育成施策を進めてきたものの、自社対応では限界を感じていた矢先、Adecco Academyの他社合同開催のアデコのDX研修(3 Skills プログラム)を人事部・DX推進本部のメンバーが受講。今回、株式会社日本旅行 DX推進本部 デジタルイノベーション推進部 原井川寿美さんに、受講前の課題や受講後の効果をお聞きしました。
ご依頼者さま:
株式会社日本旅行
DX推進本部 デジタルイノベーション推進部 マネージャー
原井川 寿美さま
導入前の課題
- 自社で研修を実施していたが、受講する側との意識のずれがあった
Adeccoを選んだ決め手
- 内発的動機の醸成を前提としていたこと
- 異業種交流の場面が提供されたことで参加者の受講モチベーションを保ち、全員を取り残さない研修環境を創出していたこと
導入後の成果・効果
- 研修の実施には対象者とテーマを明確にするという大前提に立ち返り、Adeccoさんとともに当社独自のリーダー層を対象とした「事業化人材研修」の企画実行に至ったこと
自社だけでは人材育成に限界を感じていた
――はじめに、日本旅行様の直面されていた課題についてお聞かせください。
原井川さま 旅行業界はコロナ禍で大きくダメージを受け、DX推進による抜本的な事業改革や新たなビジネスモデルの創出を迫られている現状です。DXは全員で取組むものという考えのもと、全社員DX研修を始めたのが昨年でした。
具体的には①「DXとは何か」を伝えるコンテンツ、②経営者の対談コンテンツ、③他社でDXを推進している若手社員との対談コンテンツ、の3つを動画にして社内で公開し、いずれも全社員に視聴してもらいました。
しかし、社員は仕事も年齢もスキルもさまざまで、単純にDXを上から押し付けられても、自分の仕事につなげるのが難しいという意見がありました。
そこで、もう少し、コンテンツを職種や年齢でセグメントして実施しようと、今年に入ってから試行錯誤していたところ、Adeccoさんにお声がけいただき、他社合同開催のアデコのDX研修をおすすめいただいたんです。
研修を提供する側として、Adeccoのプログラムが参考に
――他社合同開催のアデコDX研修を受講する決め手は何でしたか?
原井川さま私はDX担当でありインターネット販売部門と兼務ですが、人事部と共に研修を実施していく中で、研修を受講する側の気持ちが分かっていなかったと感じたのがきっかけでした。これまでは、考えていなかったわけではないものの、どこかコンテンツを漫然と発信してしまっていた部分があったのです。
実際にアデコのDX研修を受講してみて、いかに自分が受講する側の気持ちがわかっていなかったかを痛感しました。たとえば、昨年実施した動画コンテンツ配信でも、視聴する側になってみると、業務が忙しい中で、15分でも視聴するのが辛い(笑)。研修を検討する上で、どのような伝え方をすれば学びを得てもらえるかを考えるきっかけになりました。
――アデコのDX研修の内容はいかがでしたか?
原井川さまこれまで、社内の希望者でのセミナー参加などはありましたが、今回、初めて他社の方との合同研修参加だったので正直不安もありました。しかし、社外の業種業態のまったく違う方々との研修は面白く、大変刺激になりました。現場の社員はお客様中心の働き方で、こうした他社を交えたリスキリングの時間は取りづらいですが、ぜひ現場の社員にも受けてもらいたいと思える内容でした。
また、研修を実施する上での具体的な進め方も大変参考になりました。具体的には、Eラーニング視聴のリマインドの仕方から、そもそもやる気のでるユーザビリティ、ワークショップでのアイスブレイクの仕方、ファシリテーションの手法などです。研修を提供する側の視点から勉強させていただきました。
「人」で選んでもらえる会社をつくっていく
――今後、自社の研修に活かせそうなことはありましたか?
原井川さま 個人的に、DXなどの知識のインプットも重要ですが、何よりもプログラムの最初にあった、内発的動機の醸成が重要だと感じています。自分が会社で何を成し遂げたいか、なぜ働くのかなどを考える場を持つことは、仕事をする上で根本的な部分であり、それは事業化人材の育成においても非常に重要です。
一方で、内発的動機の持ち方は、人によって状況が大きく異なります。今回の他社合同プログラムのように、社内で実施する研修で伝えるより、外部と協働して学んでいくなかで自然に身につける方が効果的な面もあり、そのコラボレーションは我々だけではできない部分です。
その意味で、引き続きAdeccoさんに伴走してもらい、一緒に内発的動機の醸成に向けた“礎”を作っていきたいと考えています。
――ありがとうございます。最後に、日本旅行様の今後のビジョンを教えてください。
原井川さま 正直、当社は業界のリーディングカンパニーというわけではありません。ですが、良くも悪くも“いい人”が多いんです。
コロナ禍で旅行が完全になくなった際にはワクチン事業を始め、社員一丸となって慣れない受付業務やコールセンター業務に必死で取り組んだのですが、そのとき、日本旅行は「人」で成り立っているんだな、と改めて感じました。
そもそも、旅行という無形商材を扱う以上、当社のビジネスは能力や人柄に依存しています。今でも営業や店舗スタッフの人柄で仕事をいただいているところが多々ある状態ですが、だからこそ、その状態を大事にしたい。革新的な商品はありませんが、社員にフォーカスを当て、「人」で選んでもらえる会社をこれからも作っていきたいです。