企業における人材育成にはさまざまな方法があります。日本企業においては、先輩や上長から実務を通して直接学びを得るOJTが一般的です。一方で、OJTと対となる考え方として、OFFJTがあります。
OJTとOFFJTを組み合わせることで、相乗効果が期待できます。OFFJTの特徴やメリット、具体的な施策などを確認していきましょう。
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OFFJTとは
OFFJT(Off the Job Training)は、職場を離れた場所での研修や学習全般を指し、業務を行う上で、必要な知識や技術を座学やe-ラーニングなどで学ぶことです。
OFFJTとは
OFFJTは、職場外でビジネスに関する基礎的な考え方や体型的な理論を学ぶことで、配属後にスムーズに業務を行えるようになる効果が期待できます。
最近ではe-ラーニングを活用したOFFJTも増えており、新卒ではビジネスマナーに関する研修や、幹部社員に向けての階層別研修、コンプライアンス研修などさまざまな種類があります。また、職種別に特定の専門技術に特化したプログラムもあります。
OFFJTの種類
職場から離れて学びを得るOFFJTにはどのような種類があるのでしょうか。
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集合型研修
特定の場所に集まり、講師による講義を聴講する受講形式です。短時間で必要な知識を学べるメリットがあります。同僚とも同時に学ぶことで内容を互いに振り返ることができ、知識の定着につながります。 -
e-ラーニング
e-ラーニングは、オンライン上で配信される動画を聴講する受講形式です。自分に合った場所と時間で受講できるメリットがあります。教材を視聴する形であるため、基本的にはインタラクティブなやり取りはできません。 -
ハンズオン
実際に手元で操作等を行いながら実技指導を受けます。技術習得が必要な場合などに適した方法です。聴講などでは実施できない実技スキルが身に付けられます。
OJTとの違い
OJT(On the Job Training)は、職場で実際の業務のなかで学びを得ていくことです。特に営業職などでは、外回りやコミュニケーションなど現場での経験を重視する傾向が強くあります。 OJTを推進するために、先輩社員がメンターとなったり、ブラザーシスター制度を設けたりして密接な指導ができる仕組みを設ける企業も増えてきました。
現場でのノウハウを直接学べるため、即戦力を育てられるメリットがあります。OJTには追加のコストも不要なため多くの会社で採用されています。OFFJTは現場で行われるOJTとは異なり、現場と離れた場所(off-site)で行われる研修を指します。上述のとおり対面で行う場合もあれば、e-ラーニングで行うこともあります。
SDSとの違い
SDS(Self Development System)は自己啓発援助制度を指します。従業員の職場内外における自己啓発を認めた上で、企業がその支援を行うことです。具体的には、資格取得における受験料の援助などがあげられます。
SDSは基本的に従業員が主導権を持って自主的に取り組むものであり、強制力が強いとはいえません。一方、OFFJTは、企業側が主導権を持って取り組むものであり、必要な従業員に対して等しくスキル習得の機会を提供できます。
OFFJTが求められる背景
OFFJTが求められる背景にはどのようなものがあるのでしょうか。
2025年の崖
経済産業省は、2018年にDXレポートを発刊しました。これまで労働を支えてきた団塊の世代が、2025年に退職してしまうことで労働力が不足することを指摘しています。
特にIT人材の不足は2025年に約43万人まで拡大するとされています。2025年の崖を乗り越え、DXを推進するためにIT人材の育成、人材開発は重要な課題です。なかでも即戦力の育成が強く求められており、その過程における有効な手段としてOFFJTが考えられています。
IT人材を育成する上で、OJTでは人的リソース等の課題が残ります。e-ラーニングなどのOFFJTと組み合わせることで、IT人材を効率よく育成できます。
参考・出典:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~│経済産業省
人的投資の重要性の高まり
日本は労働人口の減少が懸念されています。労働生産性を高めるために、人的投資が以前にもまして重要視されています。
2022年6月には内閣官房より人的資本可視化指針が発表されました。また政府は2024年度までの3年間で「人への投資」に対し4千億円規模の予算を投入する予定としています。従業員のスキルを底上げすることで、DX推進や生産性向上を狙います。
人への投資をより効果的かつ、効率よく行うにはOFFJTが有効活用できます。定額制オンライン研修やe-ラーニングなどは比較的安価かつ、既存人材のリソースを抑えながら、必要なスキル習得を実現できるといえるでしょう。
参考・出典:人的資本可視化指針(案)│内閣官房非財務情報可視化研究会
コロナ禍による働き方の変化
コロナ禍によってリモートワークが普及し、そもそも同じ空間において、対面で教えるということが難しくなりました。e-ラーニングやウェビナー形式でオンライン研修を行えるOFFJTは、今の時代に適用しやすいといえます。
属人的な人材育成からの脱却
これまで述べたとおり、多くの企業において、より効率的かつ的確な従業員の教育が急務となっている現状があります。従来型の教育方法ではOJTを中心に、現場において肌で仕事を覚えることが重要視されてきました。
しかしOJTのみでは必要な知識をカバーしきれず、また担当によるバラつきが生じるなど、属人的にならざるをえない点もデメリットとして指摘されています。
OFFJTは体系的にまとまった知識を学べるため、この点がカバーできる取り組みです。OJTのみならず、OFFJTと組み合わせることで、効果的な人材育成が期待できます。
OFFJTの具体的な活用例
OFFJTの具体的な活用例にはどのようなものがあるのでしょうか。 実務の基礎となるような研修が望ましいでしょう。適切な指導者が社内で見つけられない場合にも有効です。
ビジネスマインド研修
基礎的なビジネスマインドを学ぶ研修です。具体的には新入社員研修や、管理職研修が該当します。他にも、ロジカルシンキングやクリティカルシンキング・プレゼンテーション研修なども実務に役に立ちます。
コンプライアンス研修
コンプライアンスは今や企業にとって重要な経営課題の一つとなりました。たった一つのトラブルにより企業全体の評価が下がり、事業に影響が出てくるケースも考えられます。そのような事態を防ぐために、コンプライアンス研修は有効です。個人情報の取り扱いや、各種ハラスメントについて学ぶ機会が創出できます。
専門分野に特化した研修
経理や法務など、企業にとって欠かせない専門分野は多くあります。しかしながら専門分野の人材採用や育成にはコストと時間がかかります。OFFJTを活用することで、効率よく人材育成が可能です。バックオフィスのみでなく、継続的な学習が必要なプログラミングなど職種と技術に特化した研修も有効です。
OFFJTの実施状況
中小企業白書2022によると、差し迫った経営課題のうち人材についての経営課題を重要と認識している割合は8割超であり、最も高くなりました。経営者の人材に対する関心は非常に高いといえます。さらに、計画的にOJT・OFFJT研修を実施した企業は、売上高増加率が高いことも判明しました。これは企業が能力開発に取り組むことの重要性を示唆しています。
OFFJTのメリット、デメリット
OFFJTのメリット、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
メリット
- 1体系的に学べる
- OFFJTは体系的に業務の背景知識や技術の習得が可能です。OJTの場合は、発生した業務ベースで教えられることもあるため、場当たり的になってしまうこともあります。OFFJTでは学ぶべき順番で漏れなく必要な知識や技術を得られます。
- 2効率的に学べる
- e-ラーニングなどは自分の空き時間、好きなタイミングで受講できるため、効率よく知識を習得できます。
- 3集中できる
- OFFJTでは職場を離れて学びに集中するため、受電や急な業務などに中断されることなく集中して学べます。
- 4客観的な思考や発見につながる
- 職場を離れて学習する機会をつくることで、客観的に業務を見つめられます。また、新たな発見もしやすくなります。
デメリット
- 1コストがかかる
- OFFJTではコストや時間がかかることがあげられます。育成はそもそも長期的な目線で行うため、先行投資として捉える必要があります。
- 2学びを応用するまで時間がかかる
- OFFJTで学んだことを定着させさらに応用するには、業務への理解と実践が欠かせません。そのため、実際の業務に生かすまでには時間がかかる場合もあります。また、職種と研修の組み合わせによっては、座学で得た知識が目先の業務に関係することがない場合もあります。例えば、エンジニアがプレゼンテーションスキルの研修を受けたとしても、すぐに顧客と接する機会は少ないかもしれません。しかしプレセールスなどで営業と同行するようになれば、その知識は生きてきます。
OFFJTの効果を高めるにはOJTと組み合わせる
上述のとおり、OFFJTの実施における一般的な課題として、学んだ内容をすぐに実務につなげられないというものがあります。早期に学びを生かすための取り組みとしては、OJTとOFFJTを連動させることが考えられます。
取り組み例としては、研修の実施前後に現場の管理職と学びの内容や目的を共有しておくことが挙げられるでしょう。そして研修後に学んだ内容を確認・評価し、研修内容で得た点にフォーカスして指導しながら、与える業務の内容を変化させていくことなどが考えられます。
OFFJTの取り組み事例
企業におけるOFFJTの取り組み事例にはどのようなものがあるのでしょうか。具体例を見ていきましょう。
住友商事株式会社
住友商事株式会社では、OJTとOFFJTの両輪を基本とした人材育成を行っており、階層別の研修や自社における事業精神の浸透を目指しています。
OFFJTは各国で働く従業員との交流の場にもなっています。研修は主に住商ビジネスカレッジ(SBC)で開催され、250種類を超える研修内容の豊富さが特徴です。
個人のキャリアにフォーカスするキャリア研修や、多様な人材を指導する管理職向けのマネジメント講座も常にアップデートされています。
東京都中央区銀座に研修施設「住友商事グローバル人材開発センター」を設けており、従業員が国を超えて将来のビジョンや戦略について語り合う場になっています。経営人材育成にも力を入れており、SC MBAプログラムという専門のプログラムを運営しています。
日本マクドナルド株式会社
日本マクドナルド株式会社は「マクドナルドは、世界中どの街でも、ベストな雇用主となる」というピープルビジョンと「マクドナルドは従業員の皆さんとその成長および貢献を、価値のあるものとして大切にします」というピープルプロミスを掲げています。
特徴的な取り組みとして有名なのは「ハンバーガー大学」です。世界約100カ国以上にあり、日本では年間約10,000人以上が受講しています。
ハンバーガー大学ではリーダーシップスキルやチームビルディングなど、階層や役職に応じたカリキュラムがあり、WebやDVDなど複数の学習方法を提供しています。
Adecco Academy
Adeccoでは、自立自走型人材育成のための研修プログラム「3 Skills プログラム」を提供しています。 これは「Digitalリテラシー」「課題解決力2.0」「内発的動機」の3つのカテゴリーからなるプログラムです。
Digitalリテラシーの集合型オンライン研修では、業界を問わず基礎的なITリテラシーについて理解することからはじまり、AIやビッグデータなどの新技術まで学べます
課題解決力2.0研修では
- 顧客中心主義
- ロジカルシンキング
- デザインシンキング
といったプログラムを通じて、複雑化したVUCA時代の課題に対応するための思考法をトレーニングします。 論理的思考とデザイン思考について事例を基に学ぶことで、適切なフレームワークを使えるようになります。
内発的動機研修では、集合型と1on1型オンライン研修を組み合わせることで内発的動機の形成をサポートします。自己理解を深めて内発的動機付けを行うことで、生産性やエンゲージメント向上が期待できます。
内発的動機研修は、
- リーダシッププログラム
- キャリアデザインワークショップ
- キャリアコンサルティング
- ビジネスコーチング
を通じて行われます。
Adecco Academy
Adecco Academyでは、将来の予測が困難なVUCAと呼ばれる現代に必要なスキルとして「内発的動機」「課題解決力2.0」「Digitalリテラシー」の3つのスキルを習得する教育プログラムを提供し、組織における人材の躍動化をサポートします。
まとめ
OFFJTは、OJTと組み合わせることで人材育成に効果を発揮します。中小企業白書2022によると、計画的にOFFJT研修を組み込んで実施した企業は、売上高増加率が高くなっていましたす。即戦力人材を育成する効果も期待できるといえるでしょう。
2025年の崖が迫り、まず何から手を付けて良いかわからないという場合には、外部サービスを使うのも有効です。実務的なスキルからモチベーションまでサポートしてくれるAdecco Academyは、自立自走型人材育成につながります。
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