労働力不足の日本では、可能な限りAIに仕事を任せ、AIが不得手な分野で人間が働くことで、仕事の高効率化と高付加価値化を実現し、社会の生産性向上につながる。国内601種類の職業を対象とした野村総合研究所と英オックスフォード大学の共同研究(2016年)により、職種ごとのAI・ロボットによる代替可能確率が明らかになった。
解説
日本は事務職の就労者が多いため、技術的に代替可能な労働人口の割合は英国より高い。専門職は、定型的な業務が多く代替しやすい税理士、公認会計士などと、臨機応変の対応が不可欠で代替が難しい医師、看護師などに二極化。同様に、営業や販売など、顧客との密なコミュニケーションが必要な職種の代替率も低めとなる。そのため、代替が困難な顧客サポートや営業などがメインの企業は人財を確保し続ける必要があり、代替が可能な事務職などからの人財のシフトが重要になる。また、AIへの代替は、バックオフィス業務から始まり、次にそのAIを搭載したロボットがフロント業務を代替していくだろう。バックオフィスの生産性向上は、企業の商品・サービスの高度化にもつながる。今後、企業においては人財配置に加えて、競争戦略や商品戦略の見直しが求められていくことになる。
(野村総合研究所主任コンサルタント 岸 浩稔氏)
Profile
岸 浩稔氏
野村総合研究所 主任コンサルタント
東京大学大学院工学系研究科社会基盤学専攻博士課程修了。工学博士。専門はデジタルメディアをはじめとする情報通信・放送メディア分野における事業戦略、デザイン思考の実践によるイノベーションマネジメントなど。共同著書に『誰が日本の労働力を支えるのか?』(東洋経済新報社)。