【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】
デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む
「アスリートプログラム」

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートキャリアデザインプログラム」

スポーツの第一線で活躍するアスリートたちは、競技に打ち込む日々の中で多くの時間と情熱を注ぎます。しかし、引退後のキャリアを考えたとき、新たなステージへの不安や戸惑いを抱えるのが現実です。アスリートは、競技生活の中で、競技力に限らず、人としての成長も遂げています。ですが、競技に集中する環境では、その力に気付かず、「競技しかできない」という思い込みに陥りがちです。

アスリートである時期に、競技力以外の強みに気付き、競技内外を問わず自分の社会的価値を認識し、次の道に踏み出せるようになることが必要です。そのためには、アスリートが保有する力とアスリートが認知している力の間にあるギャップを埋め、社会との接点を増やしながら競技生活を送ることが業界全体の課題として存在しています。
この課題に向き合うべく、デンソー様はアデコと協力し、アスリートが競技引退後も活躍できる仕組みづくりに取り組んでいます。

本記事では、元アスリートでありながらも、現在はデンソー様でこの課題に精力的に取り組む担当者2名のリアルな声を通じ、引退後のキャリア課題や施策の具体的な効果を深掘りしていきます。業界全体が抱える課題に対し、デンソー様がどのように取り組み、解決の糸口を見出そうとしているのか。その最前線に迫ります。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートキャリアデザインプログラム」

◆左:濱中 茜 様
株式会社デンソー 総務部 スポーツプロモーション室

2003~2006 デンソーアイリスバスケットボール部 選手
2006~2016 営業グループ
2016~2021 人事部
2021~ 総務部スポーツプロモーション室

◆右:西條 かおり 様
株式会社デンソー 総務部 スポーツプロモーション室

1999~2004 アスモ株式会社 女子卓球部(現デンソーポラリス/女子卓球部) 選手
2006~2016 デンソーポラリス コーチ
2017~2023 デンソーポラリス 監督

◆インタビュアー:
アデコ株式会社 Vice President, Global Accounts 大前岳志
1999年、アデコ株式会社入社。グローバルセールス・キーアカウントマネジメントを専門とし、日系グローバル企業の国内外における人事・人財ソリューションを支援。現在、グローバルアカウント担当VPとして、企業の人事・人財課題のグローバルな解決をリード。

導入前の課題

  • アスリートが現役中に競技引退後のキャリアを描けない

Adeccoを選んだ決め手

  • 伴走者としてのスタンス、プログラムのカスタマイズ性

導入後の成果・効果

  • アスリートに対するキャリア支援施策の基盤の拡充

――元々アスリートとしてご活躍されていたおふたりが、アスリートのキャリア形成支援を行うに至ったきっかけについて教えてください。

濱中様:
やはり自分自身が味わった引退後の苦労が原点になります。現役時代はバスケットボールに全力を注ぎ、「チームを勝利に導くために、自分の役割は何か」を常に考え目標設定をしていました。競技の世界では勝敗がはっきりと結果として現れるため、日々の努力が成果に直結します。しかし、引退後、スポーツの世界から離れた環境に身を置いたとき、「自分の役割とは何か」「何が正解(勝ち)なのか、不正解(負け)なのか」を自分で決める場面が増え、勝敗の曖昧さに歯痒さを感じ、まるで霧の中を歩いているような感覚に陥りました。そして、しだいにバスケットボールに傾注してきたキャリアを肯定できなくなっていきました。

そんな時、上司から、娘の小学校にバスケットボールを教えに来てほしい。という話しを頂き、引き受けることにしました。子どもたちは、最初はできないことばかりで苦戦していましたが、失敗を恐れずチャレンジすることや、努力をすることで、短時間でも、小さな「できた!」を体感することができました。その時の子どもたちや、それを見守る保護者の笑顔は今でも忘れられません。この経験がきっかけとなり、スポーツには大きな力がある。人を笑顔にすることができる。トップで走ってきた私たちだから伝えられることがある。と、自分自身のアスリートキャリアを肯定することができ、それと同時に、後輩アスリートが引退後も活躍できるようなサポートがしたい。そう思うようになりました。

西條様:
引退が近づくにつれて、アスリートキャリアが終了する事への不安と、自分の存在価値が低いと感じ始めました。引退後、思い切って海外留学に挑戦しましたが、言語や文化の壁だけではなく、自分の意見を伝えたり、自己主張をしたりする事が難しく、自信を喪失することが何度もありました。特に学校でのグループディスカッションでは周りの生徒たちの様に自分の意見が言えず、議論が進まない事がもどかしかったです。

そんな中、現地のクラブチームの練習で子どもたちに卓球を教える機会がありました。競技のスキルを通じて笑顔や感謝の言葉をもらえたとき、「自分も少しは存在価値があるのかな・・・」と思う事ができました。この様な経験を、アスリート達にも味わって欲しいですし、競技生活を終える頃には自分がやりたい事や進みたい道を見つける手助けが、アスリート支援に繋がると確信しました。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートプログラム」▲元バスケットボール選手であった濱中様は、「スポーツから離れ、違う角度からスポーツを見る・知ることで、スポーツの素晴らしさを再認識できたことが、アスリート支援に繋がった」と言う。

―― まさにおふたりの原体験が、デンソー様にアスリートのキャリア形成支援をもたらすきっかけとなったのですね。当初感じていた課題に関して、詳しく聞かせていただけませんか?

濱中様:
選手たちが抱える課題には「競技に集中するあまり、社会との接点が限られている」ことにありました。特に、現役中は競技力を高めるために、多くの時間とエネルギーを注ぎます。引退後のキャリア形成に必要なスキルや知識を学ぶ機会がほとんどありません。これはデンソーだけでなく、業界全体に共通する課題です。

例えば選手たちはしばしば、「競技しかできない」と話すことがあります。しかしその言葉の背景には、競技生活で培ってきた能力の「本質」を自らが理解していないという現実があり、こうした「自己理解の不足」こそが、引退後のキャリアにおける大きな障壁となっているのです。この状況を改善するためには、現役中から選手たちが自分の価値に気づき、社会で活躍するための準備を整える仕組みが必要だと感じました。

西條様:
もう一つの課題は、アスリートたちの「自己開示ができる場の少なさ」でした。特に個人競技である卓球では、チームメイトとも対戦する事があるため、チーム内であっても選手同士で深く話し合う事を嫌う者もいます。結果として、自分の強みやスキルを見つめ直す機会が少なく、引退する頃になっても「自分の強みや弱みが何かが分からない」と感じる選手が多いのです。

さらに、「アスリートは競技生活を中心に考えることが当たり前」という風潮が根強く、キャリア支援の重要性が十分に認識されていない現状があります。この意識を少しでも変え、選手が社会とつながる仕組みを作ることが、私たちの取り組みの大きな目標です。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートプログラム」▲元卓球選手の西條様は、個人競技だからこその難しさを体感してこられた。

――アスリート時代に乗り越えた壁が、今どのようにビジネスに生かされているでしょうか?

濱中様:
アスリートとして生きてきた経験が、今の私の考え方のベースにあります。その中でも強いてひとつを挙げるとすれば、「チーム内での意見の伝え方」でしょうか。大学時代、チームのエースの先輩に、キャッチができるギリギリの所に難しいパスを出しました。結果は失敗。試合後のミーティングでチームメンバーからは、私のパスミスと指摘されました。私は、自分のパスは悪くなかった。あのパスを取ってくれなければチームはレベルアップしない。日本一にはなれない。と確信していたので、思い切って先輩に自分の意図を説明しました。次の日、先輩が、「あの時のパスを出してほしい」と自主練習に誘ってくれました。後輩である私の意見を尊重し、認めてくれた。と、とても嬉しかったことを覚えています。

その後、その先輩との信頼関係が深まり、本音のコミュニケーションが取れるようになりました。私の考え方の軸は、「日本一になるために何が必要か」でした。そのために必要だと思うことはチーム内で共有し、意見が分かれた時は対話を繰り返す。その積み重ねでチームの総合力が高まったと感じています。この学びは、ビジネスにおいても目標達成に向け、周囲と協力体制を築くための礎として役立っています。

西條様:
卓球の試合は1人もしくは2人でコートに立ちます。そこで感じる緊張や不安を克服するために、メンタルトレーニングを取り入れた事は、今でも大いに役立っています。試合の時は、コートに立ったら「最高の舞台に立って、良い緊張感だなぁ」と自分に暗示をかけ、できる限り平常心で楽しむ様に心がけていました。ストレスのかかる局面においては冷静に物事を分析して判断することと、広い視野で全体を俯瞰して考えることはスポーツでもビジネスでも同じ。緊急の課題やトラブルに直面した際、冷静に状況を分析し、解決策を導き出す力として生かすことができていると思います。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートキャリアデザインプログラム」▲インタビュアーを務めたアデコの大前は、高校までバスケットボール部に所属。今でも余暇にはスポーツを楽しんでいる。

――おふたりの想いの詰まった活動を支援させていただけることを光栄に思っています。ところで、アデコの「アスリートプログラム」をパートナーに選んでいただいた決め手は何だったのでしょうか。

濱中様:
ひとつ目は熱意。私自身、チームスポーツをやっていたからか、同じ志を持つ仲間と共に仕事をすることにやりがいや喜びを感じます。このアスリートプログラムを、そういったメンバーで築いていきたい。純粋にそう思いました。また、選手一人ひとりの個性や目標に合わせた柔軟な支援を提供してくれる点が心強いですね。きっとデンソーにはデンソーならではの状況もあるでしょうから、私たちのことを考え、カスタマイズしてくれる姿勢に頼もしさを感じました。

西條様:
選手たちの不安や強みを丁寧にヒアリングし、現実的かつ希望のある方向性を提示していただけたことが大きな魅力でした。一緒に選手の未来を考えていく「伴走者」のような存在になってくれそうな気配を感じることができたことが大きかったです。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートキャリアデザインプログラム」

――「アスリートプログラム」の取り組みが続いていますね。現時点で、特に効果を感じていただいたポイントがあればぜひ教えてください。

濱中様:
アデコさんが提供してくださった「キャリア形成力の数値化」は、私たちにとって非常に大きな意味を持ちました。選手たちのスキルや成長を数値として可視化することで、これまで曖昧だった「どこを強化すべきか」「何が得意なのか」という点が明確になり、選手自身も自分の現状を客観的に把握できるようになったと思います。

例えば「自分にはコミュニケーション能力が足りない」と感じていた、ある選手がいました。しかし数値化の結果、彼女がチーム内において、実は「意思決定をサポートするスキル」が高いということが分かりました。この気づきは、彼女の自己評価を大きく変えるきっかけになり、さらにその強みを生かす形で新しい役割を提案することができました。数値としての裏付けを得ることで自分の強みや課題に対して具体的な行動を取るようになり、モチベーション向上にもつながりました。

また、私たち人事側にとっても、数値化されたデータは非常に有益でした。個々の選手の強みや弱みが一目で分かるため、支援の方向性を定めやすくなりましたし、進捗を定期的にモニタリングすることで、どの施策が最も効果的かを分析することが可能になりました。この「科学的なアプローチ」は、従来の感覚的な支援から大きく進化したと感じています。

西條様:
このプログラムは国際オリンピック委員会(IOC)と連携するグローバルな枠組みの中で構築されていますが、私たちデンソーの選手たちに合うように細やかなカスタマイズが施されていました。

例えば、私たちは現役中に「社会と接する機会が少ない」という課題感を持っているのですが、プログラムでは選手たちが競技外で自分のスキルや価値を発見するきっかけが得られるように工夫されているように感じます。

また、キャリアの棚卸しセッションでは、選手たちが「これまで競技を通じて何を学び、どんなスキルを磨いてきたのか」を深く考える機会がありました。ある選手は、このセッションを通じて「後輩を育成する力がある」と気づき、将来はコーチとしてのキャリアを考えるきっかけとなったそうです。このように、アデコさんは単なるプログラム提供者ではなく、選手たちの可能性を引き出す「伴走者」として寄り添い続けてくれています。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートプログラム」

――アスリート支援の取り組みを今後どのように発展させたいと考えていますか?

濱中様:
今後は、選手たちが競技に集中しながらも、社会との接点を自然に持てる環境を整えていきたいと考えています。特に注力したいのは、数値化されたデータを活用し、よりパーソナライズされたキャリア支援を提供することです。例えば、選手たちが自分のデータをもとに、社内のさまざまなプロジェクトに参加し、現場での経験を積める仕組みを導入したいと考えています。

具体的には、デンソー内外のさまざまな部署や業界と連携し、選手が業務を通じて「ビジネスの現場感覚」を養う場を提供することが目標です。また、キャリア形成のプロセスを可視化し、選手自身が「どこに向かっているのか」を明確に認識できる支援体制をさらに強化していきたいと思います。

西條様:
これからの支援で最も重視したいのは、「選手たちが社会とつながる経験を通じて、自分の価値を再発見すること」です。競技を通じて培ったスキルや人間性が、競技外でも大きな武器になることを選手たち自身が理解し、自信を持てるような支援を目指しています。

そのためには、地域社会や他企業との連携をさらに深め、選手が競技以外のスキルを生かせる場を提供したいと考えています。例えば、地域のイベントで子どもたちに競技を教える活動や、企業での研修プログラムに参加する機会を増やすことで、選手が「自分が社会に貢献できる」という実感を持てるような仕組みを作りたいです。

また、選手たちの成長を数値化し、それをもとに彼らが自分の進化を実感できる支援プロセスを確立していくつもりです。可視化されたデータは選手たちにとってもモチベーションの源となり、引退後のキャリア形成への一歩を確実に後押しすると信じています。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートプログラム」▲インタビューは、デンソー様の本社(愛知県刈谷市)にある体育館で行われた。アスリートたちがトレーニングに励むだけでなく、昼休みにはスポーツを楽しむ従業員も姿も。デンソー様の健康経営に対する感度の高さを伺い知ることのできる場であった。

◇アデコが提供するアスリートプログラム

アデコの「アスリートプログラム」は、競技者の引退後のキャリア形成を支援するために設計された世界的な取り組みです。このプログラムは、国際オリンピック委員(IOC)との連携を通じて培われた豊富なノウハウを基盤とし、オリンピアン・パラリンピアンを含む60,000人以上のアスリートを支援してきた実績を持っています。2020年からは対象を拡大し、すべてのアスリートが恩恵を受けられるよう設計されています​。

(1)全体像

アスリートプログラムは以下の3つの段階を通じて、アスリートが競技キャリアから次のステージにシームレスに移行できるようサポートします。

【アスリートのキャリア支援が、企業を躍動させる。】 デンソー様の元アスリートがアデコと共に挑む「アスリートキャリアデザインプログラム」

(2)デンソー様向けにカスタマイズされたプログラム

今回のデンソー様への提供にあたっては、アスリートプログラムを大幅にカスタマイズ。競技生活を重視する選手の特性を考慮し、「デュアルキャリア(競技とキャリア形成の両立)」という考え方を軸に、選手が現役中から無理なくキャリアを意識できる仕組みを構築しました​。また、選手たちのスキルや成長を数値化し、課題を明確化することで、個別の支援内容を最適化しています。これにより、選手自身が「自分の可能性」に気づき、現役アスリートである今を更に大切にしながら、次のキャリアへの自信を持つことができるようになりました​。

(3)現役生活も、引退後も豊かに

アデコのアスリートプログラムは、競技生活からの引退をキャリアの終点ではなく、新たなスタートラインとして捉えております。競技で培ったスキルや経験を資本として再定義し、アスリートたちが社会で躍動する未来を描けるよう、全力でサポートを行っております。

アスリートプログラム

アスリートが競技中に獲得したスキル、経験、価値観を社会でのキャリア発展に活用できるよう、包括的に伴走支援します。アスリートがスポーツの枠を超えて社会でも才能を存分に発揮できるようサポートします。

※本事例の内容は、2024年11月時点の取材にもとづき掲載しています。

人材躍動化コンサルティング

アデコの人材躍動化コンサルティングは、当社が一方的にサービスを提供し、お客様がそれを受け取るという関係性で進めるのではなく、研修やプロジェクト等を「共に作り上げて」いくべく伴走をさせていただくのが特徴です。

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