2023年から2024年にかけ、日本シップヤード株式会社様(以下、NSY)はアデコの支援の下、企業における羅針盤ともいえる「NSY経営ビジョン2030」と「バリュー」の策定を行いました。
先日開催された「ビジョン浸透プロジェクト中間報告会」では、各部署においてビジョン浸透活動を展開する従業員のプレゼンテーションや、今後どのように加速させるかといった議論が繰り広げられ、熱気のこもった一日となりました。
この度、一連のプロジェクトを主導した代表取締役社長・檜垣清志さま、経営本部長・神田哲夫さまにお話しを伺いました。
ヒアリング協力:
日本シップヤード株式会社
代表取締役社長 檜垣 清志さま
経営本部長 神田 哲夫さま
担当コンサルタント:
コンサルティング事業本部 冨山 智香子
コンサルティング事業本部 細川 峰也
導入前の課題
- 異なる企業文化が混在する中、シナジーを最大化する必要があった。
Adeccoを選んだ決め手
- 画一的なコンサルティングではなく、背景や想いまで理解してくれるスタンスが心強かった。
導入後の成果・効果
- 新しい対話文化の基盤が機能し始めた。
――「ビジョン浸透プロジェクト中間報告会」で、皆さまの発表を間近でご覧になられて、率直にどうお感じになりましたか?
檜垣さま とてもエキサイティングな一日であったと思います。従業員の皆さんは今回の発表に至るまで、本当に大変な思いと試行錯誤を繰り返されたのだなと感じました。
皆さんが本気で取り組んでくれたからこそ、今回のイベントはこれからNSYが変わっていくための非常に重要な一日になったのだと思います。
まずは従業員の皆さんに、心より感謝いたします。
――そもそも、なぜNSYさまに「ビジョン」と「バリュー」が必要だったのでしょうか?
檜垣さま NSYが「ビジョン」と「バリュー」を策定するに至った背景には、いくつかの重要な経営課題がありました。まず、NSYは今治造船株式会社(以下、今治造船)とジャパン マリンユナイテッド株式会社(以下、JMU)という2つの企業が共同出資し、両社の営業設計会社として設立した合弁会社です。社員も両社からの出向者で構成されています。両社はそれぞれ強みを持っていますが、文化や業務プロセスの違いが障壁となり、提携による相乗効果が十分に発揮されていませんでした。このままでは、両社の持つ強みを最大限に引き出せない可能性がありました。
また、造船業界自体が激しい国際競争にさらされています。中国や韓国が造船業の世界シェアを大きく占める中で、日本はわずか15%程のシェアに落ち込んでいます。私たちは、日本の造船業が再び競争力を持つために、NSYが業界全体を牽引するリーダーになる必要があると考えました。そのためには、NSYとして一つの方向に進むための共通の指針が必要だったのです。
――「ビジョン」と「バリュー」がどのようにこの課題解決に役立つとお考えですか?
檜垣さま 私たちが策定した「ビジョン」は、2030年に会社全体が目指すべき未来像です。これまで、NSYは異なる文化を持つ社員が集まる会社でしたが、ビジョンが明確でなければ、全員が同じ方向に向かって進むことはできません。経営ビジョン2030では、「私たちは一致団結し、海事産業から頼りにされるパートナーになります。新しい技術に挑戦し、社会を幸せにする船の実現に邁進します。」という大きな目標を掲げています。これにより、社員一人ひとりが全社で統一した目標に向かって、どのように行動すべきかを考えることができるようになりました。
また、「経営ビジョン2030」を実現するために、社員一人一人が持つべき価値観を「バリュー」として定めました。「勇気を持って自ら変化を」「誠実な心で共に感動を」「高い視座で未来のために」という3つの価値観は、異なる背景を持つ社員がお互いを理解し尊重し、共に行動を起こすための基盤となります。これにより、社員同士の対話が増え、違いを超えて協力し合える組織風土が生まれることを期待しています。
――ビジョン浸透化活動において、どのような変革を期待されていますか?
檜垣さま ビジョン浸透化活動を通じて期待しているのは、社員が単に与えられた業務をこなすのではなく、自らが変革の担い手として新しいアイディアや挑戦に取り組む姿勢を持つことです。今治造船とJMUのそれぞれの強みを融合させるためには、これまでの枠組みや慣習にとらわれず、積極的に新しいことに挑戦する柔軟な組織文化が必要です。
特に、NSYが成長していくためには、社員一人ひとりが「ビジョン」を共有し、その実現に向けて自発的に行動することが欠かせません。ビジョン浸透化活動では、こうした行動変革を促進し、社員同士の対話を深めることで、組織全体が同じ方向に向かって進んでいく基盤を作っていきたいと考えています。
――NSYの今後の目標についてお聞かせください。
檜垣さま NSYは、2030年に向けてゼロエミッション技術や新燃料の活用に積極的に取り組んでいます。これらの技術革新を通じて、国際的な競争力を強化し、環境問題にも対応していくことが重要です。また、営業や設計のプロセスを効率化し、市場のニーズに迅速に対応できる体制を整えることで、日本の造船業が再び世界に存在感を示し、持続的に成長していけることを目指しています。
私たちは、社員全員が「ミッション」・「ビジョン」・「バリュー」を共有し、それを日々の行動に反映させることで、さらなる成長と発展を遂げていくつもりです。これからも変化を恐れず、新しいことに挑戦し続けるNSYを作り上げていきたいと思っています。
アデコの関わりについて(NSY経営本部長・神田哲夫さま)
『経営ビジョン2030』と『バリュー』は、これからのNSYが一体となって未来へ進むための最も重要な指針です。
ことのはじまりは2023年3月から始まった「ワイガヤ会」。NSY社員が有志で自発的に集まり、目指すべき未来について本音で語り合う活発な場となりました。全7回にわたって約30名が参加、現実と理想のギャップを埋めるために何ができるかを共に考え、互いに想いを打ち明け合ったことは、大変刺激的でありワクワクに満ちた時間だったのを覚えています。
ワイガヤ会が発端となって、改めて会社としてオフィシャルに「ビジョン」を策定するプロジェクトをスタートすることになり、ワイガヤ会にオブザーブして会社の雰囲気を理解してくれていたアデコさんに正式にご支援を依頼しました。コンサルタントの冨山智香子さんは、両親会社の文化の違いや、社員一人ひとりの想いや背景を丁寧に汲み取りながら対話の場を支えてくださり、社員が過去ではなく未来を見据える後押ししてくれました。同じくコンサルタントの細川峰也さんのコーチング理論をベースにした問いかけも、我々の前例踏襲的な発想を広げ、一人一人の思考やメンバー間の議論を深めるきっかけを与えてくれたと思います。
私たちの想いを汲み取っていただいたお二人がおっしゃった言葉が、今でも鮮烈な印象として残っています。「ふたつの企業、どちらかの考えに寄せていくのではなく、せっかく新しい会社ができたのだから、みんなで新しい価値観を編み出していきましょう」と。決して指示的にならず、社員たちが自然と「自らの手でNSY独自のビジョンを共に創る」という認識を深めていけたのは、こういったお二人の一貫した姿勢によるものだと思っています。
2024年の1月からは、策定した「ビジョン」と「バリュー」を社内に浸透するプロジェクトがスタートし、各組織の中でも社員同士の対話が始まりました。最初はファシリテーションに戸惑っていたビジョンリーダーも試行錯誤をしながら粘り強く運営してくれて、部署内に留まらず、部署や拠点を超えた対話も自発的に行われるようになりました。2024年4月から始まった「社長車座」では、経営陣が社員の声に直接耳を傾け、半年間で60回、率直な意見交換を重ねる機会が作られました。(この企画にもアデコさんに同席いただいています。)経営陣と社員が直接対話することで、社員が抱える問題意識や期待を正面から受け止められ、自分たちの声が未来を形作っていくのだという実感が広がりました。アデコさんはこうしたNSYにおける対話文化の波及を裏方として支え、社員と経営陣、社員と社員の間に信頼の架け橋を築くサポートをしてくださっています。
また、この秋には対話を通じた相互理解のもと、さらに互いの行動や成果を認め合うための承認文化の醸成を目指して表彰制度も見直しました。安心して意見を交わしながら、失敗を怖れずに挑戦できる環境を整えつつあるところです。この表彰制度もアデコさんと共にNSYの事務局メンバーが何度も議論を重ねて再構築しました。これらの施策が、NSY社員全員が共に未来を描き、行動に移すための基盤として、少しずつ機能し始めてくれることを期待しています。
とはいえ、まだまだ道のりは始まったばかり。今後もきっと、さらに多くの試行錯誤が必要でしょう。しかしながらここまで歩んだ道のりは、間違いなくNSYが未来に向けて力強く踏み出すための土台になったと強く感じております。エンゲージメントサーベイの結果も如実に改善しました。社員一人ひとりが自らの潜在能力を存分に解き放ち、挑戦の担い手として未来を切り拓いていく。そのためのスタートを共に支えてくださったアデコさんに感謝しつつ、NSYはこれからも前進を続けてまいります。
※本事例の内容は、2024年11月時点の取材にもとづき掲載しています。
日本シップヤード株式会社様ご紹介
- 事業内容:LNG船を除くすべての一般商船・海洋浮体構造物の設計、販売等
- 本社:東京都千代田区有楽町1丁目5番1号 日比谷マリンビル12階
- 役員:代表取締役社長/檜垣清志、代表取締役副社長/奈良間真也、他
- 営業開始:2021年1月
アデコ株式会社 コンサルタント紹介
Profile
大手旅行会社で長年法人営業を担当し、トップセールス表彰やグループリーダーとしてトップグループ表彰を受賞。その後、所属する法人事業会社の本社で営業推進や事業推進を歴任した後、グループ会社に転籍。コンサルティング部門でワークモチベーションやホスピタリティをテーマとしたコンサルティングに従事し、エンゲージメントサーベイを起点とした組織変革や顧客対応力の向上、マネジメントの育成等数々のプロジェクトの企画からデリバリーまでを担当。2022年にアデコに入社した後はパーパス・ミッション・ビジョン・バリューの策定、浸透支援、事業の転換に伴う組織・人財開発支援や、人事制度の構築支援等幅広い領域で活躍している。
Profile
外資系ITコンサルティング企業にて、金融業界をクライアントとしたITコンサルタントとして、証券会社・投資顧問会社・メガバンクなど金融業務とITの橋渡しを支援。また、プロジェクトマネージャーとして、100名規模のシステム再構築プロジェクトのマネジメントを成功に導く。その後、コーチングファームにて、コーチングを起点とした組織変革(組織開発&個人開発)を支援。組織の目指す姿・実現したい姿に向けて多数のプロジェクト企画・立案。経営者・事業管理者に対するエグゼクティブコーチとしてコーチングを提供する。アデコでは組織開発コンサルタントとして、組織の目指す姿に向けたパーパス・ミッション・ビジョン・バリューの策定と浸透、組織風土醸成に向けて、組織開発・人財開発ソリューション・プログラムの企画開発・集合型ファシリテーションを実施。
人材躍動化コンサルティング
アデコの人材躍動化コンサルティングは、当社が一方的にサービスを提供し、お客様がそれを受け取るという関係性で進めるのではなく、研修やプロジェクト等を「共に作り上げて」いくべく伴走をさせていただくのが特徴です。