最近「CAD」という言葉を聞いたことがありますか?「CADオペレーター」とは、未経験でもチャレンジしやすく、IT業界でも人気の職種のひとつです。今回は、未経験での人でもチャレンジしやすいといわれるCADオペレーターの仕事内容と、どんな人が向いている職業なのか、紹介します。
そもそもCADとは?CADの定義と役割
すでにCADに関わっている人であっても、改めて「CADって何ですか?」と聞かれたら、ちょっと答えに困るかもしれません。また「2次元CAD」と「3次元CAD」は何が違うのでしょうか?そして、CADのスキルとはどういったもので、何から勉強すればよいのでしょう?
CADの定義
CADという言葉自体は、Computer Aided Design(コンピュータ支援設計)の略語です。広い意味としては、今まで人の手で行われていた設計作業をコンピュータの利用で効率的に行うこと、あるいはそのための支援ツールということになります。
しかし、実態としては「紙に鉛筆で描いていた2次元の図面をコンピュータ内で作図する2次元CAD」、「木を削ったり粘土で造型していた3次元の立体をコンピュータ内でモデリングする3次元CAD」のように、作図やモデリングに使用するツール自体を指していることがほとんどです。本コラムでも、そのようなツールとしての位置付けで「CADって何ですか?」というところから始めましょう。
形を伝える
まずは、製品や機械などの形を表現すること、そして、それを人に伝えることについて考えてみます。[図-1]は実際の製品を手描きの立体的な絵で表現したものです。このような絵はポンチ絵と呼ばれ、概略形状や雰囲気を説明するために、設計や製造の現場でよく使われます。
より詳しい形状を説明する必要があれば、[図-3]や[図-4]のように異なる方向から見た形状や内部構造のポンチ絵も追加します。実際の現場では、定規やコンパスなどは使わず、打ち合わせしながらフリーハンドで素早く描いてしまうことも多いです。
図面と製図
ポンチ絵では、おおよその形状や寸法が説明できれば十分なのですが、より正確な形状や寸法を人に伝える場合は、[図-5]のような「図面」を作成します。図面は複数の方向から見た立体物(3次元)の形状をJISや社内で定められたルールに従って、紙(2次元)に鉛筆(線)で描画したものです。図形は定規やコンパスなどを使って、フリーハンドよりも正確に作図します。このような図面を作る作業を「製図(する)」と言います。
図面を受け取った人は、描画された2次元の図形から立体物を頭の中で想像することになります。そのため、図形(正面図、右側面図、左側面図、平面図、下面図、背面図など)は不足しないように注意しなければなりません。必要に応じて、詳細図や断面図も追加されます。長さ・距離・直径・角度などを示す数値は、上記の図形に寸法として記載します。その他、製図に関する詳しいルールについては、「JIS B0001 機械製図」の内容に目を通しておくと良いでしょう。
手描きの2次元図面は、図形に寸法が記載されていなければ、その距離や角度の正確な数値を読み取ることができません。製図に際しては、必要な寸法を不足無く記載することが求められます。また、紙と鉛筆を使用するので、図形の書き直しや流用は非常に面倒な作業となります。
2次元図面(手描き製図)の特性をまとめておきます。
- 図形は描ける。
- 図形要素間の距離や角度などの測定結果は不正確。
- コピー&ペーストや修正が困難。
2次元CAD
複雑な形状になるほど、必要な寸法を全て図面に記載するのは膨大な作業となります。そこで、コンピュータを利用して正確な図形を描画する方法が考えられました。図形が正確であれば、寸法は図形を測定した結果として得られるので、全ての寸法を図面に記載する必要が無くなります。このような作業に使われるツールが「2次元CAD」と呼ばれるソフトウェアです。
2次元CADで作成した図面(データ)は手描き図面(製図)に対して、以下の事ができるようになります。
- 正確な図形(直線や円弧)が描ける。
- 面積情報を持つ事ができる。
- 図形要素間の距離、角度などが正確に測定できる。
- コピーやカット&ペーストが簡単。
3次元CAD
2次元CADは平面上に図形を描くツールであるのに対し、3次元CADは空間内に立体モデルを造型するツールです。作成した立体モデルを実際に触ることはできませんが、コンピュータのディスプレイ内では、回転・拡大・縮小、移動、分解などの3次元操作が可能となります。
3次元CADは立体である(体積情報を持つ)という点で、平面である2次元CADとは異なっています。立体(体積)情報を持っているので、以下のように質量特性や干渉チェックなども簡単に行えます。
- 立体モデルが作成できる。
- 体積情報を持つ事ができる。
- 質量特性(質量・重心・慣性モーメントなど)が得られる。
- 干渉チェックが可能。
- 解析や加工データとして利用できる。
現場で使われる様々なCAD
企業の現場では業務に合わせて様々なCADが利用されています。大きく分類すれば「2次元CAD」と「3次元CAD」になりますが、複数のCADを混在させている企業も多くあります。どのようなCADであっても、基本的な考え方や操作方法は似ていますので、どれかひとつのCADに精通すれば、他のCADの習得はそれほど難しくないでしょう。
2次元CAD
設計・製図ツールとしては「手描き図面」→「2次元CAD」→「3次元CAD」と移行して来ましたが、図面だけで十分に用が足りる業界では、まだまだ2次元CADが製図ツールとして使われています。手描きの製図作業をコンピュータに置き換えただけなので、習得はそれほど難しくありません。ただし、需要があるとはいえ、今では特別な技能ではありませんので、オペレータとしての付加価値は低くなりがちです。
主な2次元CADとしては以下のものがあります。(全てではありません)
- Auto CAD
- Micro CADAM
- Jw_cad
- Vectorworks
- その他有償から無償まで多数
3次元CAD
自動車・家電・機械業界などの大手企業では、多くが3次元CADに移行しています。ただ、その利用実態には差があるようです。導入はしたものの、うまく使えていないという話を聞くこともあります。2次元CADに比べると、立体データを作成する操作コマンドが増えるので、習得しにくいというのも理由のひとつになっているようです。そのため、3次元CADで立体モデルを作成する作業(モデリング)を専任者に任せている企業も少なくありません。オペレータの需要は2次元CADよりも多く、技能も要求されるため、付加価値も少し高めになるようです。そのようなこともあり、本コラムでは、主として3次元CADの使用を前提に話を進めていく予定です。
主な3次元CADとしては以下のものがあります。(全てではありません)
- CATIA
- Creo Parametric
- NX
- Solid Edge
- SOLIDWORKS
- その他有償から無償まで多数
CADオペレーターになるには?未経験からスキル習得するために
3次元CADの習得やスキルアップを考える際に、その結果として、どのような仕事が可能となるのかを想像しておくのは大切なことです。初心者であれば、まずは「オペレータ」や「モデラ」から始めることになるでしょう。
オペレータ/モデラ
3次元CADを使ってはいるが、2次元CADを使って図面を作成(設計)した後で、設計検証や干渉チェック・製造データを作成するために3次元モデルを作成している企業も多くあります。このような場合、2次元図面や指示に従ってモデリング(立体データを作成)する専任者が必要とされます。いわゆる、オペレータやモデラと呼ばれる仕事ですが、3次元CADの入口としては一般的なものです。
普通のオペレータやモデラでは、指示に従って3次元CADを操作するだけなので、スキルアップとしては以下のような「ひと味違うモデラ」を目指すのが良さそうです。
- 設計のプロセスが理解できる。
- どんな曲面形状でも作成できる。
- どんな複雑形状でも作成できる。
- 手が早い。
アシスタント/エンジニア
本来、CAD は Computer Aided Design の略語であるように、設計を支援するツールです。世の中にある全ての製品や機械は何らかの理由で、あるべき形に設計(Design)されています。いや、設計されるべきと言ったほうが良いかもしれません。オペレータやモデラであっても、設計のプロセスなどを学んでおくのは必要なことです。単に「形を作るモデリング」しか出来ない人と、「形を作る過程をモデリング」できる人とでは、付加価値に差が付いてきます。最初はオペレータやモデラであったとしても、設計の考え方が理解できるところまでスキルアップすれば、アシスタントやエンジニアとして仕事の幅も広がるでしょう。
スキルアップについては次回以降のコラムで詳しく説明する予定ですが、「3次元CADなどのツールはあくまでもツールであり、それらは目的ではなく目的へ至る手段に過ぎない」ことを忘れないようにしましょう。
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