上司との会話でありがちな誤った表現をご紹介します。それぞれ正しい表現を学びましょう。
- 1誤った表現例
- 書式ってあるじゃないですかぁ。教えてもらっていいですか?
- 1正しい表現例
- 書式があると思うのですが、教えていただけますか?
これは、最近よく耳にする表現です。「○○って○○じゃないですかぁ」は、ビジネスシーンでも使ってしまいがちですが、この表現は、「なれなれしく不遜な人」という印象を相手に与えかねません。また、「○○してもらっていいですか?」も若者を中心に使用されていますが、この表現には尊敬語も謙譲語も含まれていません。使っている本人は敬語を使い、相手に配慮しているつもりでも、押しつけがましい表現として届いてしまうことがあるので、注意しましょう。
- 2誤った表現例
- すいませんが、この報告書を拝見していただけますか?
- 2正しい表現例
- お忙しいところ申し訳ありませんが、こちらの報告書をご覧いただけますか?
本来は「すみませんが」が正しく、くだけた口語表現である「すいませんが」をビジネスにおいて使うことは避けましょう。「こちら」「そちら」「あちら」のような語を「改まり語」と呼びます。改まり語を使うと、「細かいところまで行き届いた表現をする人」という印象を与えることができます。「拝見する」は、「見る」の謙譲語で自分の立場を下げることで相手を敬う言葉です。このシーンでは、目上である上司が「見る」ので尊敬語を使い「ご覧になる」が正しい表現になります。
- 3誤った表現例
- 課長、部長が課長からの連絡を待っております。急いでいるみたいでした。
- 3正しい表現例
- 課長、部長が課長からのご連絡をお待ちです。お急ぎのご様子でした。
会話の中に登場する二人に敬語を使わなければならない、難易度の高いシーンです。その場に部長がいなくても、課長の上司でもある部長への敬意を忘れてはなりません。「待っております」では、部長を低める表現になってしまいます。部長に対する敬意は、「お待ちです」「お急ぎ」「ご様子」で表現します。課長への敬意は、「ご連絡」で表現します。
Column 「役不足」
「私は役不足でできません」「私には役不足なのでお断りします」などという表現を耳にしたことはありませんか?
「役不足」の本来の意味を踏まえてこの発言を解釈すると、「私にとっては、役目が軽すぎますのでお断りします」と言っていることになります。「役不足」の本来の意味とは、「①俳優などが割り当てられた役に不満を抱くこと。②力量に比べて役目が不相応に軽いこと」(『大辞泉』)です。意味を取り違えて発言する人が増え、誤用が広まったと考えられます。謙虚な姿勢を示して断るときには、「まだ力不足で」「実力が伴いませんので」などと表現すると真意が明確に伝わるでしょう。
Profile
NHK学園※「通信敬語講座」専任講師。航空会社接遇資料作成協力、TVクイズ番組敬語問題監修にも携わり、研修、講演を全国で行う。著書に『敬語のルール』(明日香出版社)など、多数。