電話で誤った敬語表現を使っていませんか?この機会におさらいしましょう。
- 1誤った表現例
- (○○さんに伝えてくださいと頼まれて) はい、用件を○○さんにお伝えいたします。
- 1正しい表現例
- はい、ご用件を○○に申し伝えます。私、○○が確かに承りました。
「用件」は、相手の「用件」ですので、尊敬語の「ご」が必要です。なお、社内の人への伝言を頼まれた際、「お伝えいたします」と言うのは、誤りです。この表現はよく耳にしますが、「お伝えする」は、伝える先を高める謙譲語ですので、このケースで使うと社内の人を高めてしまうことになります。「申し伝えます」という謙譲語を使い、社外の人への敬意を表しましょう。また、最後に自分の名前を名乗ると、相手に安心感を与えることができます。
- 2誤った表現例
- (だれあての電話かを確認する場合)どなたにお伝えすればよろしいですか?
- 2正しい表現例
- どの者に申し伝えればよろしいでしょうか?
「どなた」は、「だれ」の尊敬語ですから、社外の人と話すときに、社内の人を「どなた」と高めて伝えるのは間違いです。それに対して「者」は、卑下する場合や、改まった場合に用いられますので、このようなシーンでも使用できる便利な言葉です。この場合も「申し伝える」を使います。なお、「よろしいですか」→「よろしいでしょうか」→「よろしゅうございますか」の順に丁寧な表現になります。
- 3誤った表現例
- (相手の名前を聞く場合)失礼ですが、お名前さまを頂戴できますか?
- 3正しい表現例
- 恐れ入りますが、お名前をお聞かせいただけますか?
「失礼ですが」よりも「恐れ入りますが」のほうがワンランク上の表現です。「恐れ入りますが」は、目上の人や社外の人などに「申し訳ない」という気持ちを表すクッション言葉です。なお、「お名前をいただけますか」「お名前を頂戴できますか」もよく使われる言い回しですが、名前はあげたりもらったりするものではありませんので誤った表現です。「お名前をお聞かせいただけますか」と表現しましょう。
Column 「早急」
「早急に対応します」「早急に対策を講じます」などとビジネス上の会話でも使われる「早急」という言葉があります。「そうきゅう」「さっきゅう」どちらの読みがよいのでしょうか。平成15年度の文化庁調査では、「そうきゅう」と読む人が7割を超えていましたが、伝統的には、「さっきゅう」です。明治時代の国語辞典は「さっきゅう」のみでしたが、大正時代から両方載るようになり、現在にいたっています。言葉は時世とともに変化するものですが、「さっきゅう」は本来の読み方でもあり、〈非常に急いで行う〉という姿勢がストレートに伝わるでしょう。放送局などでも「さっきゅう」という読みを採用しています。
Profile
NHK学園※「通信敬語講座」専任講師。航空会社接遇資料作成協力、TVクイズ番組敬語問題監修にも携わり、研修、講演を全国で行う。著書に『敬語のルール』(明日香出版社)など、多数。