電話でよく用いる敬語表現を学びましょう。
解説 1
社内の人の休みに敬語を使う必要はありません。この場合の「いただく」は、「もらう」の謙譲語で、休みを「もらう人」を低め、「与える人」を高めます。一般に休みを与えるのは社内の上司ですから、社内の人を高めることになります。電話の相手に対してへりくだる気持ちで使う人もいますが、違和感を与える恐れがあります。また、「8日まで出社しません」と表現すると、いつ出社するのかがはっきりしないため、出社する日(連絡がとれる日)を明確に伝えましょう。
解説 2
電話応対の時間を短縮するためにこのような省略表現が使われることがあるかもしれませんが、一般的な表現ではありません。このような省略表現は雑な印象を相手に与えかねないため、注意しましょう。また、「連絡させます」よりも「ご連絡いたします」のほうがやわらかい印象になります。「連絡します」→「連絡いたします」→「ご連絡いたします」の順に丁寧な表現になります。なお、この場合の「ご」は謙譲語です。
解説 3
社外の人に対しては、「今日」ではなく「本日」という「改まり語」を使いましょう。「改まり語」とは、「あした→みょうにち」「こっち→こちら」「もうすぐ→まもなく」のように改まった場面で使う言葉です。また、「直帰」という言葉は便利な言葉ですが、社外の人に使う言葉ではありません。相手が聞いてすぐに理解できる言葉を選ぶことも電話のマナーです。こちらの都合で連絡がとれない場合、再び電話していただくよりもこちらから電話をする心遣いも必要です。
Column 「数日」
ビジネスシーンでも使われる「数日」とは何日くらいを指すのでしょうか。あるビジネスウーマンは、「数日後にお届けします」という表現を頻繁に使っていたそうです。その女性は5~6日後をイメージして使い、お客様は2~3日後と受け止めたことからトラブルに発展しました。同様の事例は数多くあります。スピード社会の影響か、「数日」は指し示す日数が減ってきていて、「2~3日」だと考える人が多くなってきているようですが、個人や年代によって捉え方が違います。そのため、ビジネス上では使用を避け、相手が「数日」を指示した際には、具体的な月日の確認をして、行き違いや誤解を防ぐように心がけましょう。
Profile
NHK学園※「通信敬語講座」専任講師。航空会社接遇資料作成協力、TVクイズ番組敬語問題監修にも携わり、研修、講演を全国で行う。著書に『敬語のルール』(明日香出版社)など、多数。