庶民的な飲食店や居酒屋などと違い、ワンランク上のレストランでの食事では、正しいマナーを覚えておく必要があります。
突然の会食にも慌てずにスマートな振る舞いができるよう、オトナとして知っておきたい洋食マナーをご紹介します。
食事の前に覚えておきたいこと
マナーに気を配らなければならないのは、実際の食事をする場だけではありません。クロークの利用から着席の仕方など、入店時からさまざまなルールが存在しているのです。
1 目上の方が優先的に入店する
入店する際は、必ず目上の方に優先して入店してもらい、その後をついていくようにしましょう。ただし、西洋料理のレストランでは、レディファーストが基本です。お店の人や男性がエスコートしてくれた場合はそれに従い、男性がドアを引いて入店を促してくれたら、会釈をして入店しましょう。
2 大きな荷物や上着はクロークへ
フォーマルなレストランでは、受付を通る際に「お荷物をお預かりします」と声をかけられます。大きめの荷物やコート、スカーフ、マフラー、手袋などもクロークに預けましょう。お店の人がコートを脱ぐお手伝いをしてくれた場合は、きちんとお礼を言います。
テーブルに持ち込む物は、財布と携帯電話程度にとどめ、かさばる荷物を持ち込むのは避けるのが礼儀です。化粧ポーチを持ち込みたい場合には、背もたれに置けるサイズの小さなバッグを用意しておくと良いでしょう。持ち込んだバッグは、左側の足元に置き、テーブルの上には携帯などの物を置かないことが重要です。
3 着席は左からが基本
原則として、椅子の左側から着席も離席も行います。座る際にウェイターが椅子を引いてくれた場合には、椅子がひざの裏にあたるのを合図に腰を下ろすといいでしょう。
また、入り口から遠い席が、年配の方や目上の方をお通しする上座です。2人席の場合は、奥側にお通ししましょう。ウェイターが最初に椅子を引いた席が上席なので、上席がわからない場合も心配ありません。
ナプキンの使い方
テーブルに用意されているナプキンは、食事中に手や口を拭くために用意されています。最初の料理が運ばれてきたら、二つ折りにした輪の部分がお腹側にくるようにしてひざの上に置きましょう。食事の途中で中座するときは、軽くたたんで椅子の上に置くか、椅子の背にかけると、食事中の合図になります。食事が終わったら適当にたたんで、テーブルの左側に置きます。
きれいにナプキンをたたんで席を立ちたくなるかもしれませんが、これは好ましくありません。端と端をずらしてくしゃくしゃにして置いておくと、「ナプキンをたたむのを忘れてしまうほど、おいしい食事だった」というメッセージになります。
カトラリーの使い方
ナイフ、フォーク、スプーンなどのカトラリーは、皿を挟んで両側に並べられており、外側から使うのが基本です。デザートには、皿の奥に置いてあるカトラリーを使いましょう。
食事中にカトラリーを置く場合は、フォークは下向きに、ナイフは歯を手前に向けた状態で、皿の上に八の字に置きます。食事が終わったら、カトラリーの柄が右斜め下に向くようにそろえて置くのが基本です。フランス式のマナーでは、カトラリーの柄が3時の方向を向くように置くこともあります。
また、食事中にカトラリーを落とした場合、自分で拾うのはマナー違反です。同席者に一言お詫びを言ってから小さく手を挙げ、ウェイターを呼んで交換してもらいましょう。カトラリーを使う順番を間違えてしまった場合は、焦って正しい物に取り換えたりせず、使い続けましょう。お料理をサーブしてくれる際に、スタッフがさりげなく新しい物を持ってきてくれます。
正しいテーブルセッティング
西洋料理では、どの国の料理でもフルコースのテーブルセッティングはほぼ同じです。アラカルトなど一品料理の場合は、料理に合わせてカトラリーが提供されるので、出てきたとおりに使っていきましょう。
フルコースでは、席についた時点で食器類とカトラリーがセットされており、食べ終わったら順番に下げられます。基本的なテーブルセッティングは以下のとおりです。
料理の品数が増えればカトラリーも増えますが、「外側から使っていく」という基本は同じです。フルコース(8品)では、前菜に突き出しとしてアミューズが出たり、さらに格式の高いコース(11品)ではサラダやチーズ、フルーツが追加されたりする場合がありますが、代表的なコース料理(7品)の場合は、次のような順番で提供されます。
- 1.前菜(オードブル)
- 2.
スープ
- 3.魚介のメイン料理
- 4.
ソルベ(口直しのシャーベット)※サラダに変わる場合もある
- 5.
肉類のメイン料理
- 6.デザート
- 7.
コーヒー
料理別の正しい食べ方
カトラリーやナプキンの使い方に続いて、料理別の食べ方のポイントを確認しておきましょう。
- スープ
どの国の料理でも、スープは音を立てて飲まないのが基本です。フランス料理の場合は奥から手前にスプーンを動かしますが、イタリアンなどその他の国の料理の場合は、手前から奥にスプーンを動かしてスープをすくいます。スープが残り少なくなってきたら、スープ皿を少し傾けてすくいます。パンにつけて食べるのはマナー違反なので注意しましょう。
- 肉(ステーキ)
ステーキ肉の場合は、左側からナイフを入れて切り分けていきます。このとき、肉が冷めてしまったり肉汁が出てしまったりするのを防ぐために、一度にすべて切り分けてしまうのではなく、一口ずつ口に入れる分だけを切り分けるようにしましょう。また、切り口は同席者に見えないように、斜めにカットするのがマナーです。
- 魚
切り身ではなく魚が一匹丸ごと調理されている料理は、左手にフォーク、右手にフィッシュナイフを持って、最初にヒレと小骨を外します。次に、頭から尾にかけて背と腹に切り込みを入れ、骨と身を分けます。
フォークとナイフで挟んで身をずらしたら、一口大に切って食べていきましょう。ソースもいっしょに楽しみたい料理の場合には、ソースを絡めやすいようにフィッシュスプーンが用意されていることがあります。
間違いやすい洋食のマナー
最後に、乾杯やフィンガーボウルなど、間違いやすい洋食のマナーをご紹介します。
乾杯でグラスをぶつけない
乾杯の掛け声とともにグラスをぶつけ合うのは、正式な西洋料理の席ではマナー違反です。乾杯では、グラスを目線の位置まで上げて目と目を合わせ、静かに「乾杯」と言いましょう。
食べ物をフォークの背にのせない
イギリスでは、マッシュドポテトなどをフォークの背にのせて食べる習慣がありますが、食べ物をフォークの背にのせて食べるのはマナー違反です。フォークで刺して食べるか、フォークの腹ですくって食べるのがマナーです。また、食べにくい場合には、右手に持ち替えても構いません。
フィンガーボウルの正しい使い方
小さな器に水を張ったフィンガーボウルは、手を洗うために出される物です。牡蠣などの殻付きの料理や骨付き肉など、手を使って食べる料理のときに出てきます。ただし、基本はナイフとフォークで食べるので、どうしてもカトラリーでは食べにくいときだけ使うものと覚えておきましょう。洗うときは片手ずつ、親指、人さし指、中指の第2関節までをこすり合わせるようにして洗い、濡れた指はナプキンで拭きましょう。
食事のマナーは、ビジネスにおいても重要
食事のマナーは、コミュニケーションと同じくらい大切なもの。マナーを知らずに食事をすると、自分が恥をかくばかりか、いっしょに食事をする人を不快な気持ちにさせてしまいます。
「この人とだったらいっしょに仕事をしたいな」と思ってもらえるよう、基本的なマナーやタブーはしっかり理解しておきましょう。