何かを学びたいという意欲はいつもあるのに、なぜか、「学び」が続かない。そんなあなたのために、「学び」を成功させるコツをお教えします。
1.「何のために学ぶのか」を明確にする
「友人が語学教室に通っている」「著名な経営者が『これからのビジネスパーソンには英語が必須スキルだ』と言っていた」……このようなきっかけで語学教室に通い始めたけれども、途中で挫折してしまったという話をよく聞きます。英語を学びたいという情熱はあるのに、なぜ続かないのでしょうか?それは「何のために学ぶのか」「学ぶことによって、どんな自分になりたいのか」という、学びの先にあるゴール像がないからです。例えば、英語を学ぶなら、「貿易関連の仕事に就く」「海外旅行に行って、現地の人と会話を楽しむ」など、あるいは、決算書や財務諸表を勉強するなら、「会計の仕事のプロになる」「資格をとってキャリアアップする」など、なりたい自分の姿をイメージできるならば、がんばりは長続きするはずです。
2.学習の全体像を把握する
何かを学び始めるときに失敗しがちなのが、やみくもに何か1冊本を買ってきて、とりあえず読み始めてしまうこと。それは、地図もないのに砂漠を歩き出すようなもの。どんなに進んでも、どこまで行けばいいのか分からなければ、やる気がなくなる一方でしょう。まずは、一日二日かけてもいいので、学習の全体像を把握することが必要です。その領域の全体像をおおざっぱにでも理解しておけば、「ここはとっかかりで、ここは概要の部分、ここは必要になったら学べばいいところ」など、学びのカンどころが分かってくるはずです。そのうえで、どこに力を入れて、どれだけの時間勉強をすればいいのか。まず何を勉強して、次に何に着手すればいいのかを把握することが大切です。これが分かっていれば、長期にわたる学習計画であっても、迷わずに進めることができます。
3.自分が勉強していることを周囲にオープンにする
「いまさらこんな勉強をしているなんて、自分の無知をさらすようなもの」「学習効果が上がらなければ恥ずかしい」。そんな気持ちから、周囲に黙って勉強する人が多いのではないでしょうか。しかし、「隠れて勉強」するよりも「自分が何を勉強しているのかを周囲に宣言」し、「分からないことは人に聞いて学習する」ほうが、学習効率ははるかに上がります。第一に、その手助けになる情報が集まりやすくなり、第二に、勉強の成果を、自分だけでなく、周囲も気にかけてくれるので、モチベーションを維持しやすくなるからです。
4.健康な生活が学びの基本
社会人の学びが学生と大きく異なる点の一つに、「かけられる時間をやりくりしなければならない」点が挙げられます。学びに専念するために仕事をやめるという人もいると思いますが、それは限られた例でしょう。多くの人は仕事をしながら学ぶわけで、となると、どうやって学習時間を捻出するかが鍵となります。よくあるのは睡眠時間を削ることですが、長い目で見ると、これは「百害あって、一利なし」。毎日の睡眠時間から数時間を削ったとして、眠い目をこすりながらでは、本を開いても内容は頭に入ってきませんし、最悪の場合、体まで壊してしまうことも。睡眠時間を削るのではなく、遊びや飲食のお付き合いをセーブするなど、仕事後の自由な時間をいかに有効に使うかを考えましょう。
5.基礎知識の学びの基本は書籍の「多読」
多少、テーマが重なっていても気にせずに数十冊をざっと読みこなす「多読」こそが、学びには重要です。なぜなら、基礎知識のインプットは「質より量」だからです。例えばテニスで一つのテクニックを身につけるためには、何時間にもわたって同じ練習を繰り返して体に覚えさせます。何を学ぶにせよ、こういう絶対投入時間・絶対投入量は必要なのです。数十冊を読むと基礎力がつくだけでなく、大切な情報と、放っておいていい情報を見分ける目利きができるようになります。
6.学習計画は短期決戦
1年間毎日学習を続けることは、よほど自分に厳しい人でなければできません。でも1週間だけやる、1カ月だけやる、ということなら何となくできそうな気がしませんか?乗り気のしない勉強でもごく短期間なら続けられます。例えば、英語の勉強なら、「2週間後に外国人が集うパーティに参加する」など学習成果の発表の場をつくってしまいます。すると、それまでの2週間で、1フレーズでも2フレーズでも英会話を覚えようという意欲が湧くでしょう。短期のゴールを決めて集中的に学ぶことを繰り返す。これも学習を続ける一つのコツです。
7.学習時間は期間内の総量で考える
「継続は力なり」。学習もその例外ではなく、毎日続けることが最も大切です。ただし、重要なのは「毎日やる」ことで、「毎日同じ時間やる」必要はありません。たとえば「平日は15分、土日は3時間」とか「平日は30秒、土曜日は2時間で日曜日は3時間」など、メリハリをつけることをおすすめします。つまり、「学習時間は、1カ月や1週間といった期間内の総量で捉える」「毎日均等に時間を割り振る必要はない」のであり、学習時間をグロスで考えることがポイントです。
8.毎日1時間より毎日30秒。ハードルは下げられるだけ下げる
仕事をしながら学習を続ける場合、毎日長時間勉強することは不可能です。それにしても「30秒では短すぎるのでは」と思いますか?そんなことはありません。というのも、「毎日1時間がんばる」なんて決意すると、自分の覚悟とは裏腹に、「無理に決まっている」という自分への負の先入観が先に働いてしまうからです。しかし30秒となると、「無理に決まっている」という根拠がありません。どんなに忙しくても、最低30秒はやる。これなら実行可能です。学習時間に対して無理なハードルを設けて「今日もさぼってしまった」とネガティブになるより、「今日も30秒は本を開いた」とポジティブになれるほうが、学習へのモチベーションが維持できます。
「学び」の効率&効果を高める方法
毎日の学習の中で、より効率&効果を高めることができる具体的な方法をご紹介します。
読書の場所を分散させる
本を読む場所がたくさんあると、読書欲を維持・向上させるうえで、とても便利です。通勤電車の中、自宅のベッドやお風呂、リビングのソファ、キッチンの片隅。あらゆる場所を読書スペース化する。そうすることによって、日常生活のあらゆるシーンに読書を取り入れられます。また、環境を変えることによって、頭の切り替えがスムーズになり、効率的に本を読むことができます。
漫画で、自分が学ぶ世界に触れる
漫画を読む最大のメリットは、自分がこれから知りたい、学びたいと思うテーマの雰囲気やカルチャーが分かること。漫画家の方々は、一つの作品を描くために何十冊もの書籍を読み、膨大な時間をかけて取材しています。それを作者が限られた紙面に知識を凝縮して、しかもストーリーで展開するのですから、入門書としては最適といえるでしょう。学びたい分野に漫画がある場合にはおすすめです。
いい勉強会やセミナーを探して参加する
生の声を直接聞くことで良い刺激を受けられるのが、勉強会やセミナーの魅力。ただし、受け身では、その学習効果はあまり期待できません。必ず、自分から発信することが大事です。例えば、一つでもいいから質問をする。あるいは、終了後のアンケートに「勉強会の何がどう良かったか、今後どのようなことに役立てたいか」などを具体的に書き込む。そこまで書くことで、聞いた内容が自分の中で消化されます。
読書サークルをつくる
同じテーマを学ぶ仲間たちと読書サークルをつくるのも効果的です。例えば、同じ本を同時に読んで、各人で要約を行って見せ合う。すると、それぞれの人の習熟度、理解度が違うのが分かります。レベルの高い人の要約を見れば、「私はまだまだ……」と自分に気合いを入れることができるし、また自分の弱みも分かり、次の学びへの意欲につなげることができます。
3色の付箋を使い分ける
「本は読まずに眺めるもの」。楽しむ読書ではなく、学習するための読書なら、こう割り切ることも大切。読まずに眺めて、目当てのキーワードや使える文章を拾っていくというのが、短時間でインプットするために不可欠な読み方だからです。そのとき役立つのが3色の付箋。黄色は重要なキーワード、青色はデータベース用などと使い分けると、あとで本の内容を検索するのが楽になります。
ブログで自分の学びを公開する
自分の中では「まだまだ人前に出すレベルではない」と思っていても、学んだことはどんどんアウトプットしていくべき。そうすることで、それに対するアドバイスやコメントがもらえ、学習を継続するモチベーションが維持できます。ブログで自分の学びを公開するのも、その方法の一つ。多くの人に見てもらって、さまざまなコメントがもらえるツールとして活用できます。
Profile
IBMビジネスコンサルティングサービス(IBCS)アソシエイトパートナー。1998年にプライス ウオーターハウス コンサルタント(現IBCS)入社。新規事業戦略立案・展開支援、コンサルタント育成強化、人材開発戦略・実行支援などのプロジェクトをリードし、企業変革戦略コンサルティングチームのリーダー、Learning & Knowledge部門リーダーを経験。著書に『プロの学び力』(東洋経済新報社)。