ビジネスメールは、今や仕事に必要不可欠なツール。上司・同僚、クライアント、もしくは派遣元からの連絡など、やりとりするメールの数も種類も非常に多いもの。そんな普段から何気なく使っているメールですが、当たり前のように行っている操作が仕事の効率を上げていることもあれば、実は仕事の効率を下げる原因になってしまっていることもあります。また、使い慣れた文章が自身の評価を左右するポイントになっていることも…。
今回は、慣れているからこそ無意識に行っている、メールに関する10のクセと、今すぐ実践できるメール術をご紹介します。
メールの書き方編
①「恐れ入ります」をどんな場合でもしっかり使うように意識している。
⇒メールは丁寧すぎると逆効果に。必要に応じて使い分けを!
「大変、恐縮ですが」「大変、恐れ入りますが」のように、恐縮しすぎたり、丁寧すぎる言葉は、相手との間に距離を置いている印象を与えます。「恐れ入ります」をいつも使っていると状況に適した気持ちが伝わりません。また、漢字の使いすぎは堅い印象を与え、使い慣れていない言葉は違和感を生みます。とはいえ、ストレートすぎる表現は冷たいイメージを与えるもの。文面にはひらがなを混ぜて適度に柔らかくしたり、気持ちが伝わるような使い慣れた言葉を使うなど、過剰にならない丁寧さを心掛けましょう。
②お願いする際の語尾は「〇〇してください」「○○ください」を多用している。
⇒「○○ください」は押し付けているように受け取られることも。状況によって文末を調整しましょう
何回も「~ください」を繰り返すと、読んだ相手は押し付けられた印象を受けたり、命令されたように感じるものです。「〇〇していただけますか」「〇〇していただけるとありがたいです」と書くと好印象です。「ありがたいです」と同様に「助かります」「幸いです」などもイメージアップできる言葉です。
③書類などを送る際は端的に「送付します」「お送りします」という言葉を使用している。
⇒2点注意が必要です!
まず1点目は「添付」、「郵送」、「宅配便」など、送付方法を明記すること。どの手段で送られてきたのかがメールの受信者に分かりやすく、丁寧な印象を与えます。2点目は、「送付」「送る」という言葉は「(相手に)送り付ける」という印象を与えることもあるので、「郵便でご送付いたします」、「宅配便でお送りいたします」という表現にすると、より丁寧で、敬意も表せます。
④メールは宛名や社名も丁寧にタイピングしている。
⇒相手の名前、社名はできるだけコピペを
名前や社名などはタイピングミスにつながりやすく、間違いは非常に失礼です。たとえば「斎藤」さんの場合、「さいとう」と入力すると「斉藤」「齋藤」など、多くの変換候補が出てきます。急いでいると間違いやすく、勘違いや思い込みによるミスなどは1度は経験したことがあるのではないでしょうか。とはいえ、送信のたびに名刺や受信メールで確認していては時間がかかってしまいます。相手のメールからコピペすることで、間違う失礼を回避しましょう。
メールの管理編
⑤差出人別、クライアント別、業務別など、受信ボックスは自動振分けで細かく管理。
⇒フォルダ別で優先順位をつけてしまい、それにより処理効率が落ちる場合もあります
差出人や業務ごとにフォルダを作ると、無意識のうちに、面倒な案件やコミュニケーションの取りにくい相手のフォルダを後回しにする心理が働くものです。業務上、フォルダを分ける必要もあるかと思いますが、すべて受信トレイで受けて、先に届いたメールから処理するほうが効率的な場合もあります。
⑥受信メールは一旦すべて内容を確認し、優先順位の高いメールから返信している。
⇒メールは届いた順に処理しましょう
優先順位をつけるために、受信したメールを全部ざっとチェックしていませんか?重要度を比較するための時間が、必要以上にかかってしまっている場合があります。その作業に時間をかけるより、先に届いたメールから処理したほうが効率的です。返信に時間のかかると判断した内容にはフラグをつけるなどし、ほかのメールの処理が終わった後で対応をすると、溜まってしまったメールにストレスを感じず、効率的に処理ができます。
⑦メールはデスクトップ通知で都度チェックしている。
⇒通知のたびに集中力がそがれてしまい、対応中の仕事に支障が出てしまう場合も
デスクトップ通知をオンにしていると、通知のたびに気になり、取りかかっている仕事への集中力が途切れ、結果的にその仕事に費やす時間が長くなってしまうこともあります。この機能は、必要に応じてオン・オフの設定を使い分けることをおすすめします。
気遣い編
⑧関係者はできるだけ積極的にCCに入れている。
⇒CCに入っている人の受信メールを無駄に増やしてしまい、かえって自分の評価を下げてしまうことも
CCでお知らせすることが丁寧な対応になる場合と、そうでない場合があります。たとえば、様々なプロジェクトに関わっている人ですと、受信メールが多すぎてストレスの原因になったり、重要なメールを見逃す危険性もあります。特に重要な内容の場合と、必要最低限のメールだけをCCに入れるようにするなど、CCに入れるべきかどうかの見極め判断をしたり、CCに入れるべきか相手に判断を仰ぐことも、受信者への気遣いの1つといえます。
⑨きちんと文書として残るので、連絡はすべてメールで行っている。
⇒メールと電話を上手に使い分けて、良好なコミュニケーションを
物事がスムーズに進んでいるときの連絡はメールでよいですが、トラブル対応やメールによるやりとりがうまくかみ合わないときなど、電話で話したほうが誠意や意思が通じるケースがあります。また、電話で話した内容を簡単にまとめ、改めてメールで送ると、仕事が丁寧な人という印象につながります。
⑩メールのやりとりは、簡潔さを重視し、こちらの伝えたいことだけを端的に書いている。
⇒やりとりを先読みして、相手の言いたいことを予測して返信しましょう
会話の場合、たとえば「この仕事は今日中にできますか?」「すみません。他の仕事もあるのでできないです」「では、いつまでかかりますか?」「明日なら大丈夫です」といった簡単なやりとりでコミュニケーションできます。しかし、メールはいつ返信がくるかわからずやりとりに時間がかかるので、「今日は無理ですが、明日ならできます」というように、対応が難しい場合は代替案を出したり、相手が次に聞きそうな内容を予測して返事をしたりすると、“仕事ができる人”という評価を得られます。
メールは、日常の業務を通じて自分の付加価値を上げることができるビジネスツールです。また一方で、コミュニケーションツールでもあります。それゆえ、対面の場合と同様に、すべての人やケースに通じるテクニックがあるわけではありません。今回ご紹介したテクニックを、相手と状況に応じて適切に使い分けて、派遣先での業務効率と自分の評価を上げ、快適なビジネスライフを送りましょう。
Profile
一般社団法人日本ビジネスメール協会代表理事。株式会社アイ・コミュニケーション代表取締役。ビジネスメール教育の第一人者。メールマナーに関するメディア掲載1000回以上、著書26冊。メールスキル向上指導、メールのルール策定、メールの効率化による業務改善や生産性向上等を手がける。官公庁や企業等へのコンサルティングや講演、研修回数は年間150回を超える。近著は『仕事を高速化する「時間割」の作り方』(プレジデント社)。