事務職の求人は資格不問の募集も多いため、資格は必要ないと考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、実際は資格の有無は、スキルを判断する際の目安になり、待遇やキャリアアップにもつながる可能性があります。
それでは、事務職で働く際にはどんな資格を取得しておくと役に立つのでしょうか。資格を取得しておいたほうがよい3つの理由と、代表的な7つの資格についてご紹介します。
資格があると有利な3つの理由
資格不問の事務職でも資格があると有利な理由は、次の3つが挙げられます。
- 1やる気や経験をアピールしやすい
- 2給与アップや特定の仕事への就業につながる
- 3専門職へのキャリアアップにつながる
ポイント1やる気や経験をアピールしやすい
一般事務をはじめ、総務や経理、人事、営業などの事務職の仕事の成果や経歴は、営業成績のように数字で表すことが難しく、面接では能力が見えづらいもの。そのため、スキルを客観的に証明してくれる資格を取得していれば、その分野での実力や経験の深さをアピールする裏付けにもなります。また、同条件の応募者がいた場合には、資格がある人が優先されることもあります。
ポイント2給与アップや特定の仕事への就業につながる
社員・契約社員などであれば、資格によっては、取得することで給与がアップすることや、取得すること自体が昇進の条件になっていることもあります。派遣社員であれば、資格・経験の両面を持ち合わせていることによって、スキルや知識の高さを根拠に時給アップの交渉ができることもあります。ほかにも、外資系企業などでは、事務職の募集条件としてTOEIC700点以上などのスキル要件を設けているところも少なくありません。そのため、職種や求人の選択の幅も広がるといえるでしょう。
ポイント3専門職へのキャリアアップにつながる
資格を取得することで、一般事務から専門職へのキャリアアップにつながる場合もあります。例えば、日商簿記検定を取得することで経理への道が開ける場合や、社会保険労務士を取得することで、人事や労務に特化した職種へのキャリアアップの道が開ける場合もあります。
事務職におすすめの資格7選
- 1MOS
- 2文書情報管理士
- 3秘書検定
- 4TOEIC
- 5簿記
- 6医療事務
- 7司書
事務職の職域は幅広く、パソコンスキルや情報処理、語学、接遇など、幅広い能力が求められます。そのため、パソコンスキルやビジネスマナーのほか、総務で役に立つ社会保険の知識を証明するものなど、汎用性の高いものから専門的なものまで、事務職におすすめの資格はさまざまです。
ここでは、事務職で役立つ資格を7つ厳選してご紹介します。
資格1MOS
MOSとは「マイクロソフト オフィス スペシャリスト」の略で、Word、ExcelをはじめとするMicrosoft Office製品の使用スキルを証明する国際資格です。WordやExcelを使っての文書作成や管理は、事務仕事の基本となります。事務職募集の条件としても、WordとExcelができる人という募集要項は多く、この資格を持っていることでパソコンスキルの証明にもなります。WordやExcelに加え、PowerPoint、Accessなどソフトごとに資格があり、ソフトのバージョンによっても資格が異なります。
資格2文書情報管理士
文書情報管理士は、書類の電子化や個人情報保護への注目の高まりによって作られた資格で、文書情報管理能力を証明するものです。文書管理の基礎知識を中心とした2級、専門知識や実技、文書管理の指導力を加えた1級、課題の本質を明確化するための分析能力や文書情報管理の専門的知識や提案能力など、より高い知識を証明できる上級の3つのレベルがあります。情報漏洩は企業にとって大きな損害を及ぼす可能性があるため、文書情報管理士の資格は、今後より注目されていくのではないでしょうか。
資格3秘書検定
秘書という名前がついていますが、秘書検定は秘書業務にとどまらず、ビジネスマナー全般を問う内容となっています。社会人としての基本的なマナーを中心とした3級、オフィスでも通用するビジネスマナーが学べる2級、高いコミュニケーションスキルが身に付く準1級、そして最高レベルの1級は、面接試験合格後1年以内に、実用英語技能検定2級以上やTOEIC470点など指定された試験に合格する必要があり、ビジネスシーン全般への高いスキルの証明になります。
資格を持っておくことで、ビジネスの現場にふさわしいマナーや表現方法が身に付いていることをアピールできますし、冠婚葬祭の対応などの知識も得ることができますので、取得しておくとビジネス以外でも役立ちます。
「秘書」関連のお仕事を見る資格4TOEIC
一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会(IIBC)が運営するTOEICは、英語のコミュニケーション能力を評価する世界標準の試験です。外資系企業や、海外と頻繁に取引のある企業などでは、事務職においてもTOEICの点数が応募条件として設けられることも多く、英語スキルを判断・証明する基準として定着しています。
外資系企業に挑戦したい場合は700点以上、履歴書に書く基準は600点以上が目安になります。特に、英語スキルが必須でない企業でも、TOEICの点数が高ければプラス評価につながることが多いので、英語に興味がある人は取得しておくといいでしょう。
資格5簿記
一般事務の中でも専門職である経理は、実践的なスキルや技術が要求されます。会社のお金の流れを記録・管理するのが経理の仕事ですが、簿記はその業務遂行のために必要な企業の日々の経営活動を記録・計算・整理し、企業の経営状態・財政状態を明らかにする簿記のスキルが身に付いているかを問う試験です。
簿記には、いくつかの種類がありますが、日商簿記と呼ばれる「日本商工会議所及び各地商工会議所主催簿記検定試験」が最も有名な簿記試験です。経理関連の書類処理など初歩的な知識が身に付く3級、経営管理に欠かせない財務諸表の数字を読み解く力がつく2級、公認会計士や税理士などの国家資格受験に必須な1級があります。
「簿記」関連のお仕事を見る資格6医療事務
医療機関での受付や会計、診療報酬請求などの業務を担う医療事務は、長く安定して働けると人気の職種でもあります。医療事務に応募する際、資格は必須ではありませんが、医療費の計算や来院する患者さんへの対応などの基本スキルが身に付いていることの証明になります。
医療事務の資格は国家資格がなく、民間資格には、厚生労働省認定の公益財団法人日本医療保険事務協会が実施する、診療報酬請求業務を迅速かつ確実に行えることを証明する「診療報酬請求事務能力認定試験」や、一般財団法人日本医療教育財団が実施する、院内でのコミュニケーション能力なども問われる「医療事務技能審査認定試験 (メディカルクラーク®)」などがあります。他の民間資格と比べて合格率は低いものの、合格すれば医療事務技能をしっかりと証明することが可能です。
「医療事務」関連のお仕事を見る資格7司書
司書の資格は、図書の管理や利用者対応といった図書館業務についての専門知識とスキルが証明できる国家資格です。応募の際に、資格を持っていることで優先的に採用される場合が多いでしょう。資格取得に年齢制限はないため、子育てが一段落して再就職を考える人にも人気の資格です。
事務職の資格以外に会得しておきたいスキル
- 1情報処理能力
- 2PCスキル
- 3コミュニケーションスキル
- 4ビジネスマナー
- 5ITスキル
紹介した資格のほかにも、事務職に就くうえで会得しておきたいさまざまなスキルがあります。中でも重要視される可能性が高いのが、下記のようなスキルです。
ポイント1情報処理能力
事務職における情報処理能力とは、知識や情報を積極的に吸収し、それを実際の業務に生かせるスキルのことです。事務職は、社内の多種多様な業務に携わるため、営業事務なら自社の商品やサービスに関する知識は不可欠ですし、総務事務は社内のあらゆる部署・階層の従業員とのやりとりが発生します。業界によっては、独自の用語やルールについて知っておく必要もあるでしょう。
業務に関する知識や情報をしっかりと自分のものとして理解したうえで、状況に応じて適切に対応できる力が求められます。さらに、指示や情報が与えられるのをただ待つのではなく、課題に対して自ら解決策を考えていく姿勢も重要です。
ポイント2PCスキル
書類作成をはじめ、データ入力やデータ分析、メール対応など、事務の仕事にはPCでの作業が付き物です。WordやExcelといったOfficeソフトの操作やキーボードでの正確な文字入力など、基本的なPCスキルは必要不可欠といえます。任される仕事内容によっては、会計ソフトや勤怠管理ソフト、販売管理ソフトといった、専用ソフトを使用することもあるかもしれません。
多くのソフトは専門的な知識やスキルがなくても操作できるように設計されていますが、それでも、PCの操作自体に慣れているほうが仕事をするうえで有利です。
また、書類や資料の作成には、正確さとスピードの両方が求められます。いくら作成スピードが速くても、間違いばかりの資料ではあまり意味がありません。反対に、内容が正確でも、期日に間に合わなければ、せっかく作成した書類が役に立たなくなってしまうこともあります。正確かつスピーディーに作業を進められるように、PCスキルの向上を目指しましょう。
ポイント3コミュニケーションスキル
事務職にとって必須といえるのが、コミュニケーションスキルです。事務の仕事は自分一人だけで完結するものではありません。業務を行う中で、必ず社内外の人とのやりとりが発生するはずです。外部とのやりとりには、来客応対や電話対応、メール対応、受発注業務などが挙げられます。また、社内においても、書類作成や伝票処理の依頼を受けたり、必要な情報を報告したりと、日常的にコミュニケーションの機会が生じます。周りの人との良好な関係の構築は、業務を円滑に進めるためには必要不可欠です。
相手の要望や意図を的確にくみ取ることや、要点をまとめて報告すること、不明点を質問して解決することなどは、すべてコミュニケーションスキルが必要です。
近年は、対面でのコミュニケーションのほか、メールやチャット、社内SNSなど、さまざまなコミュニケーションツールが登場しています。目的に応じてツールを使い分け、臨機応変なコミュニケーションを心掛けましょう。
ポイント4ビジネスマナー
ビジネスマナーは、仕事を円滑に進めるために必要なスキルのひとつです。前述したように、事務職は社内外の人と接する機会が多い仕事です。挨拶や言葉遣い、名刺交換、席次など、基本的なビジネスマナーは押さえておくべきスキルといえます。特に電話や来客対応など、社外の人と接する際には、「自分の印象が会社の印象になる可能性もある」ということを意識するのも大切です。
ビジネスマナーが身に付いていないと、敬語だと思って発した言葉が、反対に相手に不快感を与えてしまうようなことがあるかもしれません。
また、事務の仕事では、社外の相手に書類やメールを送付することも少なくありません。挨拶や言葉遣いなどと同時に、ビジネス文書やビジネスメールに関するマナーも習得しておきましょう。文書やメールの送付時にビジネスマナーを意識することで、伝達漏れやミスの防止にもつながります。
ポイント5ITスキル
近年では、あらゆる業種でIT化やDXが加速しています。それに伴って事務職にも、ITスキルが求められる傾向があります。
特に、AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)といった技術で、かつては人の手で行っていた単純作業や定型作業の自動化が可能になりました。これにより、多くのルーティンワークが効率化されていますが、ITツールを使いこなすスキルが必要になってきています。
事務職の仕事の中でも、データの入力・登録や集計、照合などは、AIによる自動化の流れが進んでいるのです。
一方、必要に応じてデータの抽出条件を設定したり、データが意味するものを分析したり、視覚的にわかりやすくまとめたりすることは、人が対応することになるでしょう。これからの事務職には、IT化できる業務と人間が行わなければならない業務を切り分け、適切に対応できるスキルの重要性が増すと考えられます。
最近では、DX・ITスキルを習得できる講座など、リスキリングの機会も広がっていますので、ITスキルの向上を目指すなら、そのような講座を活用するのも効果的です。
アデコのリスキリングを通じたキャリアアップ支援事業について詳しくはこちら事務職が資格取得のためにスキルアップする方法
事務職としてスキルアップするには、具体的にどのような行動をとれば良いのでしょうか。資格取得やスキルアップを目指しても、勉強のための教材の準備などに費用がかかることから、二の足を踏んでいる人もいるかもしれません。
また、スクールや講座に通おうと思っても、「事務職に必要なスキルを学べる講座が見つからない」という人もいるでしょう。そのような人も安心して取り組めるスキルアップの方法には下記のようなものがあります。
ポイント1国の支援制度を活用する
国や自治体は、資格取得やスキルアップを支援するさまざまな制度を用意しています。 例えば、新しいスキルの習得や資格取得にかかる費用を国が一部負担するのが「教育訓練給付制度」です。
教育訓練給付制度を利用して対象となる講座などを受講・修了した場合、費用の一部が教育訓練給付金として支給されます。対象となる講座は、資格取得を目標としたものやデジタル関連、大学、大学院、専門学校など約1万5,000講座(※2023年10月1日現在)に上り、オンラインで受講できる講座や、土日や祝日に受講可能なものもあるのでぜひ活用してみてください。
ポイント2派遣会社のスキルアップ研修やセミナーを利用する
多くの派遣会社では、事務職として働くうえで必要なスキルが身に付く研修やセミナーを開催しています。派遣会社に登録している人なら無料で受講できることも多いので、上手に活用すれば無理なくスキルアップを目指すことが可能です。
例えば、アデコのキャリアサポートでは、次のような研修やセミナーを実施しています。
アデコのサポート1ビジネス基礎講座
報告・連絡・相談といった業務上のコミュニケーションや敬語の使い分け、言葉遣いのほか、電話・メールにおける対応、ビジネス用語、身だしなみなどが動画で学べるコンテンツをご用意しています。
動画で学ぶ!ビジネス基礎について詳しくはこちら>アデコのサポート2OAレッスン
事務職に不可欠といえるMicrosoft Office(Word、Excel、PowerPoint、Access)の初級・中級講座や、日々の業務効率化につながる便利な機能などをeラーニングで学べるレッスンをご用意しています。さらに、全国展開のパソコンスクール「Winスクール」のOA講座を、特別価格で受講できるサポートも実施。基礎はもちろん、ウェブデザインやCAD、プログラミングといった専門性の高い講座を受講することも可能です。
OAレッスンについて詳しくはこちらアデコのサポート3課題解決力2.0/Digitalリテラシー
将来的な予測が困難といわれるVUCAの時代において、活躍するために必要なスキルである「課題解決力2.0」と「Digitalリテラシー」の習得を目指す講座を受講いただくことが可能です。
「課題解決力2.0」は、ビジネス課題に対して、顧客を中心として解決するための思考法のこと。「Digitalリテラシー」は、すべてのビジネスパーソンに求められるITリテラシー(利活用する力)を駆使し、課題解決の生産性を高める力を指します。
課題解決力2.0/Digitalリテラシーについて詳しくはこちらアデコのサポート4提携スクール
提携スクールの各種講座を、入会金や受講料の割引などアデコの特別価格で利用可能です。OA・IT、ビジネス、語学、資格取得など、幅広いジャンルがそろっているので、キャリアプランに合わせて活用いただけます。
提携スクールについて詳しくはこちら事務職に役立つ資格の取得に積極的にチャレンジしよう
資格が応募の必須条件ではなくても、資格は面接においてやる気やスキルを証明するための武器になります。 また、資格を取得する過程で身に付けた知識は、業務だけでなく自身のキャリアを築くうえで選択肢を増やしてくれたり幅を広げてくれたりします。気になる資格があれば、ぜひ挑戦してみてください。