派遣契約は、外部企業から人材を受け入れて活用する手段のひとつです。
派遣契約は、少子高齢化に伴う人材不足を背景に、多くの企業が利用しています。また、業務委託契約も派遣契約と同じく外部からの人材を受け入る方法ですが、派遣契約と業務委託契約は何が違うのでしょうか。
本記事では、派遣契約の検討時に役立つ基本情報を紹介します。派遣契約のメリットやデメリットを理解し、派遣契約導入の参考にしてください。
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派遣契約とは
派遣契約とは、他社から人材を受け入れる方法のひとつです。
自社内で必要な人材を確保できない場合などに、派遣会社との間で締結する派遣契約をもとに、期間を決めて派遣会社に所属する社員を受け入れるサービスです。
他社から人材提供を受ける方法には「業務委託契約」も多くの企業で利用されていますが、派遣契約と業務委託契約では何が違うでしょうか。
派遣労働者に対する指揮命令権がある
派遣契約の場合、派遣される社員への指揮命令権は、派遣先企業が保有します。派遣先企業は派遣された社員に対して、自社のルール遵守を求めることや業務上の指示が可能です。
対して業務委託契約の場合、委託業務を実施する社員の指揮命令権は委託先企業が保有するため、業務の進め方は作業者の裁量次第です。
派遣可能期間は最大3年間
派遣契約の期間は、労働者派遣法第三十五条の三で「同一事業所での派遣期間は原則3年まで(異なる課への派遣を除く)」と定められているため、派遣先企業での勤務開始から3年経過した時点で、派遣社員の契約は満了です。
過去には例外的に3年ルールが免除されるケースがありましたが、2015年に労働者派遣法が改正され例外規定が取り除かれて以降は、全職種で3年ルールが適応されています。
派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要
労働者派遣法第五条に「労働者派遣事業を行うには厚生労働大臣の許可が必要」と定められているとおり、人材派遣事業は許可制です。許可なく派遣事業を行うと違法行為と見なされます。
また、人材派遣を受け入れる会社側も、許可のない事業者から派遣社員を受け入れると法的責任を問われるリスクが生じます。
派遣契約の種類
人材派遣を導入する際は、派遣先企業と派遣元企業の間で、以下の契約を締結します。
基本契約
派遣基本契約は、人材派遣に関する基本的な取り決めを定めた契約です。
基本契約の締結は法的に義務づけられていませんが、人材派遣開始後のトラブル防止やリスク回避のため、一般的に締結される契約として認識されています。
基本契約には「労働者派遣法や関係諸法令の遵守」「労働者派遣契約を別途締結」「業務料金の設定方法、計算方法、支払方法」「雇用安定措置」「安全衛生に関する協力、配慮」「情報保護、機密保持、契約解除、損害賠償」などが記載されます。
個別契約(労働者派遣契約)
労働者派遣契約は個別契約とも呼ばれ、派遣される社員毎に派遣先企業と派遣元企業で締結する契約です。
個別契約は労働者派遣法で締結と保管が義務づけられており、派遣先企業は、社員毎の管理台帳を作成し、派遣終了後3年間の保管が義務づけられています。
個別契約には「業務内容、業務に伴う責任の程度」「就業事業所の名称、場所並びに組織の名称」「派遣期間、就業時間並びに休憩時間」「派遣先責任者、指揮命令者、苦情処理担当者の部署、役職、氏名」「派遣料金」が記載されます。
また、人材派遣を受け入れる会社側も、許可のない事業者から派遣社員を受け入れると法的責任を問われるリスクが生じます。
参考・出典:労働者派遣法「第三章 派遣労働者の保護等に関する措置」
覚書
基本契約と個別契約に盛り込まれない契約内容は覚書に追加されます。覚書には「各種手当、インセンティブ」「出張」「貸与物」などが記載されます。
派遣契約とほかの雇用形態との違い
「業務委託契約」や「契約社員」も派遣契約と同じく人材確保の方法として、多くの企業が活用しています。業務委託契約や契約社員とは、どういった雇用形態なのでしょうか。
業務委託
業務委託と派遣契約は、外部企業や個人から人材や労務提供を受ける方法ですが、雇用関係の有無と業務の指示命令権の所在が異なります。
業務委託の場合、作業者は委託元企業と受託企業のいずれの企業とも雇用契約を結びません。また、業務の指示命令権は受託企業にあり、業務に対する裁量は作業者や受託企業に任されます。
契約社員
契約社員とは、雇用期間に定めがある有期労働契約を結ぶ雇用形態です。有期労働契約の期間は、労働基準法で原則として最長3年と定められています。
派遣社員と契約社員は、雇用期間に定めがある点で共通していますが、契約社員の雇用主が勤務先企業である点が異なります。
企業が派遣契約を導入するメリット
人材確保の観点では、自社採用でも問題ないところ、派遣契約を利用して他社から人材を受け入れるメリットには何があるでしょうか。
必要な期間だけ人材を補充できる
派遣契約は原則最長3年のため、3年以下で必要な期間に限定して採用したいケースに最適です。
自社で採用する場合、無期雇用の正社員での採用が多く、会社都合での退職は難しいため、事業方針の転換時や市場環境の変化に合わせた人員調整が課題です。
派遣契約は、事業環境に応じて必要な時期に限定した採用を可能とする柔軟な雇用形態として課題解決に有効です。なお、労働者派遣法には派遣契約の最短期間(最短31日)の取り決めがある点にも注意が必要です。
自社のルールや方針に則り作業を進められる
派遣契約の場合、派遣される労働者への指揮命令権は派遣先企業が保有します。派遣先企業は派遣された社員に対して自社のルールに則り、業務上の指示が可能です。
一方、業務委託契約の場合は業務の進め方を委託先企業に一任するため、作業者に対して業務上の指示はできません。業務委託契約は、業務の一部や全てを外部企業に一任したい場合に適しています。
コスト削減効果
派遣契約を利用する場合、コスト削減効果が見込めます。
自社で採用した正社員の場合、社会保険料の企業負担が必要ですが、派遣社員の場合は不要です。また、人材採用の費用も削減が見込めます。
基礎教育の工数削減
派遣契約で派遣される人材の多くは、一定のスキルや経験を有しています。
自社で未経験者を採用する場合と比べて、教育の工数が削減可能で、採用から成果創出までの期間を自社で未経験者を採用する場合と比べて短縮されます。
企業が派遣契約を導入するデメリット
派遣契約の導入にはメリットばかりではなく、状況次第ではデメリットもあるため、導入前に自社の課題を整理し、委託先企業との間で目的や費用などの確認が必要です。
同一組織で3年以上の契約が結べない
派遣契約のメリットで紹介しましたが、派遣契約は原則最長3年の規定があり、3年以上同一組織で派遣勤務ができません。
派遣社員が優秀で3年以上の勤務を望む場合は、直接雇用への切り替えや、無期雇用派遣契約が必要です。
派遣社員に依存した状態で、契約満了となり直接雇用への切り替えができない場合は、業務上で損失が生じるリスクにもなり得るため、派遣社員の能力や役割に応じて、直接雇用の早期検討も重要です。
人材のスキルにばらつきがある
コスト削減や教育工数削減を期待して派遣契約の導入を検討する場合、派遣される人材のスキルにばらつきがある点に注意しましょう。
同じ業界や職種の経験がある人材でも、業務スキルに差がでます。派遣直後から大きな成果を出せる人材もいれば、未経験の新人社員と変わらない人材もいます。また、経験豊富な人材でも自社製品やサービス、社内ルールの習得や業務上の研修は必要です。
状況次第では、自社採用の新入社員よりもコストがかかるかもしれません。
長期利用するとコストが増える場合がある
派遣社員を採用する場合、派遣社員本人への給与と派遣会社への派遣費用が発生します。派遣社員の担当業務や成果によっては、自社採用社員よりもコスト増になるケースも考えられるため、派遣社員のコストと業務内容や業績の費用対効果を入念に確認しましょう。
派遣契約は、決められた期間や予算内で導入する場合にはコスト削減が見込めますが、欠員補充として長期的に利用する場合にはコスト増の可能性があるため、派遣期間が長期化する場合には直接雇用への切り替えも検討してください。
派遣契約の流れ
実際に派遣契約を導入する際の、契約の流れを解説します。
STEP1 人材派遣会社に依頼、相談
人材派遣の導入を検討する場合、まずは人材派遣会社に相談をします。
人材派遣会社は、企業ごとに得意な業界や職種があるため、企業ホームページなどを参考に選定します。
企業選定後、人材派遣会社に派遣契約を依頼し、派遣社員に任せる業務内容、初期費用、ランニングコストを確認します。
STEP2 基本契約の締結
人材派遣会社と業務内容や費用面で合意すると、企業間での基本契約を締結します。
さらに、実際に人材派遣を開始する段階で派遣社員ごとに個別契約を締結します。
アデコの人材派遣サービス
人材に関するさまざまなお悩みや課題を、アデコの人材派遣が解決します。アデコの人材派遣サービスを活用いただくメリットは以下の3点です。- メリット1:人材の安定確保
- メリット2:課題に対応した派遣形態
- メリット3:パフォーマンス最大化
在籍している派遣社員は34,000名以上と、さまざまなニーズに応える確かな人材供給力を有しています。また、全国に40以上の拠点を展開しているので、きめ細やかな対応が可能です。テレワーク派遣にも対応しており場所にとらわれない人材も紹介します。
また、アデコでは、企業様が直面する人的課題に幅広く対応するため「有期雇用派遣」と「無期雇用派遣」の両方に対応しています。一時的な人員補充ではなく、同じ人材を期間の制限なく活用いただけるための無期雇用派遣サービスを拡充させています。
派遣契約に関して企業が知っておきたい法律
派遣契約は、自社で採用する正社員とは雇用関係が異なるため、関連する法律や制度も違います。
派遣契約を導入する場合、派遣社員を受け入れる企業として知っておきたい法律を解説します。
労働者派遣法
人材派遣の仕組み全体を規定する法律が「労働者派遣法」です。
労働者派遣法は、派遣元企業と派遣先企業の双方が守るべき内容を定めています。具体的には、派遣事業を行える会社の条件や派遣が禁止されている業務、派遣期間の制限などが規定されています。
労働基準法
「労働基準法」は、派遣労働者を含む全労働者に適用される労働条件の最低基準を定めた法律です。
労働基準法には「労働契約」「賃金」「労働時間、休憩、休日及び年次有給休暇」「就業規則」「罰則」などが定められています。
労働契約法
「労働契約法」は、労働関係の安定のために、会社と社員の労働契約の基本ルールを定めた法律です。
たとえば、有期労働契約が通算で5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換するよう規定されています。
まとめ
派遣契約は、外部企業から人材を受け入れる手段のひとつです。派遣契約では、最長3年までの派遣契約が可能で、業務に関する指揮命令権を派遣先企業が保有可能です。
短期的な人材確保に適した手段のため、活用次第ではコスト削減にも繋がりますが、長期的な人材確保には繋がりにくいため、自社の課題や経営計画に沿った活用が大切です。
アデコでは、人材派遣事業を展開しており、有期雇用派遣から無期雇用派遣までニーズに応じてさまざまなサービスを提供しています。
さらに、人材に関する様々なテーマを取り上げた無料セミナーを多く開催しています。セミナーでは、労務管理や組織開発、人材育成などをテーマに、日々の人事業務や企業の人材戦略に活かせる情報発信を行っています。
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【人事・労務 担当者必見】人材派遣活用のチェックリスト
人材派遣を活用するにあたって外せないチェックリストをご紹介します。
- 【初めての方向け】派遣先担当者がはじめに確認すべきこと
- 労働法制を遵守するための派遣活用チェックリスト
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