派遣契約を更新しない場合の注意点とは?
派遣先企業の対処方法を解説

派遣社員の契約更新をしない場合、関連法規への抵触や社員とのトラブルなどのリスクに注意が必要です。

また、派遣社員の契約更新状況や雇用期間によっては、契約更新しない旨を事前に通告しなければなりません。一定条件を満たした派遣社員に対しては、無期雇用への転換などの別途対応が必要です。

本記事では派遣契約を更新しない場合の注意点や雇止めと中途解除の違いを解説します。

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そもそも派遣の仕組みとは

人材派遣では、人材派遣会社と派遣先企業の間で派遣契約を締結し、派遣元企業から派遣先企業に人材を派遣します。

派遣される人材は、派遣元企業と雇用契約を結び、派遣先企業の指示のもと実際の業務に就きます。

人材派遣の仕組みは、「労働者派遣法」をもとに成り立っており、労働者派遣法では派遣契約で就労する人材の立場が保護されています。

契約更新しないといつまでに伝えれば良い?

派遣元企業が派遣労働者に契約更新しない旨を伝える場合、契約更新回数や雇用期間により事前予告の義務が生じます。

契約更新3回以上もしくは雇用期間1年以上の場合、契約期間満了の30日前までの事前予告が必要です。契約更新2回以下もしくは雇用期間1年以下の場合、事前予告の義務はありません。

ただし、派遣労働者の次の就業機会確保のため、余裕を持った時期に事前予告が一般的です。

参考・出典:厚生労働省「派遣会社の事業所の皆様へ~派遣契約の中途解除に伴い派遣労働者を安易に解雇しないでください~」
参考・出典:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」

契約更新しないときのポイント

では、派遣契約を締結している社員と契約更新しない場合にはどういったポイントがあるのかを解説します。労働者派遣法など、人材派遣に関わる法律などを踏まえた適切な対応はトラブル回避に繋がります。

有期労働契約の締結時の判断基準に則り判断する

派遣労働など雇用期間に定めがある有期労働の場合は、雇用する際に「有期労働契約」の締結が労働基準法で規定されています。

有期労働契約では「契約更新の有無」と「契約更新する場合としない場合の判断基準」を明示しなければなりません。

判断基準の例には「契約期間満了時の業務量」「労働者の勤務成績、態度」「労働者の能力」「会社の経営状況」「従事している業務の進捗状況」などがあり、契約更新の際には判断基準をもとに更新の有無を判断します。

証明書発行を求められる場合がある

労働基準法の規定に基づき「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準第3条」で、派遣社員から請求があった場合、使用者(派遣元企業)は雇止めの理由を明示した証明書の発行が義務づけられています。

派遣契約を更新しない場合、派遣社員から契約を更新しない理由に関する証明書の発行を請求されるケースもあるので注意が必要です。

参考・出典:厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」

派遣労働者の契約期間満了(雇止め)と中途解除の違い

派遣労働者の派遣契約満了に伴う、派遣元企業と派遣社員の契約を更新しないことを「雇止め」と呼びます。

一方で、派遣先企業による契約中社員の途中解約を「中途解除」と呼びます。

派遣先企業は、派遣契約を中途解除する場合には派遣元企業に対してあらかじめ解除を申し入れ、合意を得なければなりません。さらに、関連会社などでの就業をあっせんするなど派遣労働者の新たな就業機会の確保も必要です。

契約更新しないときは契約期間により対応が異なる

派遣元企業が派遣労働者に契約更新しない旨を伝える場合、契約更新回数や雇用期間により事前予告の義務が生じます。

中途解除の対応

派遣先企業が、契約期間中の派遣社員を中途解除する場合、あらかじめ相当の猶予期間をもって派遣元企業に解除の申し入れを行う必要があり、派遣元企業から中途解除の合意を得なければなりません。

また、派遣先の関連会社での就業をあっせんするなど、派遣労働者の新たな就業機会の確保が必要です。なお、派遣労働者の新たな就業機会の確保ができない場合、派遣先企業は派遣元企業に中途解除で生じた損害を賠償する義務が生じます。

契約期間満了(雇止め)の対応

先述のとおり、派遣元企業が派遣社員との派遣契約の更新を行わない場合、契約更新回数や雇用期間により事前予告の義務が生じます。

中途解除の対応とは異なり、契約更新3回以上もしくは雇用期間1年以上の場合、契約期間満了の30日前までの事前予告が必要です。

契約更新2回以下もしくは雇用期間1年以下の場合、事前予告の義務はありませんが、派遣労働者の次の就業機会確保のため、余裕を持った事前予告が求められる点に注意してください。

派遣労働者を契約更新しないときの法律上の注意点

派遣元企業が、派遣労働者の契約を更新しない場合には「労働契約法」で定められた「雇止め法理」「無期転換ルール」と労働者派遣法で定められた「3年ルール」に注意が必要です。

雇止め法理

労働契約法には、派遣契約で働く社員の雇用機会の確保を目的に雇止めを規制する「雇止め法理」があります。労働契約法第19条では「一定要件を満たす場合、従前と同一の労働条件で契約が更新される」と明記されています。

契約が更新される要件は以下です。

  • 過去に有期労働契約が反復して更新されており、雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められること
  • 労働者が有期労働契約の契約期間満了時に、有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められることのいずれかに該当する

上記の要件を満たし「有期雇用労働者が契約期間満了日までに契約更新の申し込みをした場合」または「契約満了後に遅延なく契約更新の申し込みをした場合」には契約が更新されます。

仮に、派遣労働者の受け入れ先企業が雇止めを行おうとしても、客観的に合理的な理由に欠けていると判断された場合は認められません。

参考・出典:厚生労働省「「雇止め法理」の法定化(第19条)」

無期転換ルール

労働契約法第18条第1項には「有期労働契約を締結する労働者の契約期間が通算5年を超えた場合、労働者の使用者に対する申し込みにより、無期労働契約に転換する」と規定されています。

つまり、派遣元企業は有期労働契約期間が通算5年を超える派遣社員の無期転換を拒否できません。

始期付無期労働契約を終了するために解雇申し入れしても、合理的な理由がない場合、労働契約法第16条位に基づき、権利濫用とみなされ無効になるでしょう。

参考・出典:厚生労働省「コロナ禍における雇止めには注意が必要です」

3年ルール

労働者派遣法第35条の3では「派遣労働者が同じ事業所で3年を超えて働くこと」を原則として禁じています(ただし、一定の手続を経れば3年を超えて働けます)。

派遣元企業は、派遣労働者が同じ事業所の同じ課などに継続して3年派遣される見込みの場合は、継続就業を希望する有期雇用派遣労働者に対し、雇用安定措置を講じなければなりません。

雇用安定措置とは、派遣先への直接雇用の依頼や新たな派遣先の提供、派遣元での無期雇用転換などです。

また、派遣期間が3年を超える日は「抵触日」と呼ばれ、同じ事業所への派遣が禁止されているため抵触日の前までに派遣社員の引上げが必要です。

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契約更新しないとき起こりやすいトラブルはどう防ぐ?

派遣社員との契約を更新しない場合のトラブルを防ぐには、契約締結前に派遣の仕組みや有期雇用に関して十分な説明による派遣社員の理解が大切です。

また、契約時に派遣社員が更新を期待する発言に注意しましょう。

さらに、契約書の内容にも注意し、更新に関する条件を明確にします。状況によっては、更新の上限を設定するなどの措置を検討しましょう。

契約更新しないでトラブルに発展した際の対処法

派遣社員の雇止めをした際に起こる主なトラブルのひとつが、派遣社員からの不服申し出です。

雇止めに対する不服申し出に対しては、雇止めに客観的で合理的な理由があり、社会通念上からも相当であるとの証明が必要なので、雇止めの対象となる社員の勤務状況を管理し、問題となる点や行動、指導履歴などを記録しましょう。

まとめ

人材派遣は、労働者派遣法に定められた派遣元企業と派遣先企業双方の守るべきルールや基準などをもとに運用されています。

派遣契約で働く社員は、労働者派遣法により立場が保証されているため、派遣先企業と派遣元企業は雇止めや中途解除に注意が必要です。派遣先企業、派遣元企業は、関連法規を理解した上で適切なサービス活用や派遣社員管理が求められます。また、派遣社員とのトラブルを防ぐためにも、事前説明の徹底や契約書の内容への留意が重要です。

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