コンプライアンスは、法令遵守を意味する言葉として広く浸透しています。
社会全体のコンプライアンスに対する意識は年々高まっており、企業にも徹底したコンプライアンス遵守を求める姿勢が強まっています。コンプライアンスが遵守できない場合、企業イメージの低下や離職者の増加を招くリスクが生じます。
本記事では、コンプライアンスの概要をコンプライアンスの違反事例などとあわせて解説します。
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コンプライアンスとは
はじめに、コンプライアンスの言葉の意味や概要を紹介します。また、コンプライアンスに似た「コーポレートガバナンス」との違いやコンプライアンス意識の高まりや注目される背景もあわせて解説します。
コンプライアンスの意味
「コンプライアンス」は、英語の「compliance」がもとになった言葉で「要求に応じる」「規則に従う」意味を持ちます。日本では法令遵守を表す言葉として広く使われています。
現在は「法令遵守」のほかにも「法令以外の社会規範全般や倫理への遵守」を求めるより広い意味を持つ言葉として使われています。
企業に求められるコンプライアンスに含まれる社会規範や倫理とは、森林や海洋など自然環境や宗教や習慣など社会環境への配慮や人権保護などが該当します。
具体的には、過剰な木材の伐採による森林破壊や特定魚種の乱獲による海洋環境の破壊、宗教や習慣などを無視した事業展開および就労環境、児童就労や職場での性差別などの人権侵害なども社会規範や倫理に反する企業活動としてコンプライアンス違反に該当します。
参考・出典:独立行政法人 労働政策研究・研修機構「第1章 企業のコンプライアンスと社会的責任(CSR)」
コーポレートガバナンスとの違い
コンプライアンスと似た場面で使われる「コーポレートガバナンス」は「企業統治」を意味する言葉で、健全経営を行う上で必要な「企業の管理体制」を表します。
企業経営のなかでコンプライアンスを遵守するためには、コーポレートガバナンスの整備が必要です。
コンプライアンスが注目される背景
現在の日本社会で、コンプライアンスが注目される背景のひとつが1990年代~2000年代にかけて頻発した国内企業による業務上の不祥事です。
当時の日本では、大手企業による金融、証券不祥事や食品偽装事件などが発生し、多くの消費者に被害をおよぼしました。結果として、企業に対する法令遵守を求める国民からの要請が強まり、社会全体のコンプライアンスへの意識が高まりました。
現在ではPCやスマホ、SNSなどのデジタルITツールが普及し、プライバシー保護や情報流出への対応や社会のグローバル化や多様化が進むなかで、消費者保護の観点から配慮すべき事案が増えていることもコンプライアンス意識を高めています。
コンプライアンス違反の事例
続いて、コンプライアンスの理解を深めるために、企業のコンプライアンス違反事例を紹介します。
法令違反
企業のコンプライアンス違反で、代表的な事例が法令違反です。
企業が事業運営を行う際は食品衛生法や著作権法などさまざまな法令法規に関与します。各法令は、企業が適正な事業運営の促進と消費者保護を目的としているため、法令違反は消費者被害に直結します。
過去に発生した「食品偽装事件」などは、食品衛生法の法令違反事例で、集団食中毒の発生などの消費者被害が発生し社会問題として何度も注目されています。
不正経理
企業の事業運営で消費者に影響を与える重要な要素のひとつが会計経理です。
企業には、事業運営に関わる売上や利益などの適切な管理が求められますが、消費者に対して不当な費用を請求する架空請求や、投資家に対して虚偽の会計情報を提供する粉飾決裁など、会計経理上のコンプライアンス違反も多数発生しています。
架空請求や粉飾決裁、業務上横領などの不正な会計経理処理の多くは消費者や投資家、企業に多大な実害を与えるため、内容次第では刑事罰が適応されます。
情報漏えい
情報漏えいは、スマホやSNSなど情報ツールの発達に伴い、近年注目度がアップしている事案です。
企業の情報漏えいは、企業が保有管理している顧客情報や機密情報の外部流出を意味します。消費者の観点では、個人の特定や預金口座情報などの個人情報保護の重要性が高まるなかで、個人情報流出は企業の社会的信用の失墜を招く大きなリスクを抱えています。
状況次第では企業の存続問題にまで発展します。
コンプライアンス違反が企業にもたらす影響
企業のコンプライアンス違反は、企業経営に対して深刻なダメージを与えます。
法令違反や不正会計処理は多くの消費者や投資家に被害を与え、企業のあり方に対する疑問を社会全体に生じさせます。
また、個人情報漏えいや情報管理ミスなどの不適切な情報管理は、法的処分の対象となる可能性があり、企業存続ができないかもしれません。
コンプライアンス違反が起こる原因
コンプライアンス違反は、法令違反や不正な業務処理など注意すれば防げる可能性がありますが、社会的な信頼がある大手企業などがコンプラアンス違反を起こすのはなぜか、原因を紹介します。
知識不足
コンプライアンス違反が起こる代表的な原因が知識不足です。
コンプライアンスを遵守するには、法令法規に関する知識が求められます。経営層から一般社員まで社内全体で、法令や社内規定のほか社会通念や倫理的規範を正しく理解した状態でなければ、コンプライアンス遵守はできません。
社内に防ぐ仕組みがない
企業内でコンプライアンス遵守を徹底するには、コンプライアンスの正しい理解とあわせてコンプライアンス違反を防止する仕組みが必要です。
具体的には、企業が守るべきコンプライアンス基準を明確にし、社員全員に対するコンプライアンス遵守徹底の意識付けや啓蒙活動を定期的に実施し、コンプライアンスに関する知識の習得と定着を目指した教育の場を設けるなど、企業環境の整備が求められます。
従業員への過剰なプレッシャー
社員が日常業務のなかでコンプライアンス違反を犯すケースも存在しますが、原因として企業から社員に対する過剰なプレッシャーがあると考えられます。
民間企業の多くは営利目的のために事業経営を行っていて、事業経営の目的として売上と利益の獲得が重視する企業姿勢は問題ありません。
しかし、過度な売上や利益獲得を重視した売上至上主義により従業員が追い込まれ、コンプライアンス違反を助長する可能性があります。
健全な事業運営による持続可能な経営を行うためにも、コンプライアンスを遵守した適正な業務活動から適正な売上と利益の計上が求められます。
コンプライアンス違反を防止する方法
コンプライアンス違反は、発覚すると企業存続にも影響する大きな問題となるため発生を未然に防止し、コンプライアンス違反を発生させない環境作りが重要です。コンプライアンス違反を防止するための具体的な方法を紹介します。
行動規範の作成
先述どおり、コンプライアンス違反の主な原因に知識不足と違反防止の仕組みの不備があげられます。
コンプライアンス遵守には、行動規範の作成と明示が重要です。企業内の行動規範として社内規則が存在しますが、コンプライアンスの基準にもなるため、コンプライアンス遵守に向けて見直します。
また、コンプライアンスに則った経営に向けて「して良いこと」と「してはいけないこと」の基準の明確化も大切です。
コンプライアンス研修の導入
コンプライアンス遵守を目指した行動規範の整備とあわせて規則の徹底に向けた社員への周知が重要です。
社員への規則周知に向けた活動の具体例としては、コンプライアンス違反事例をもとにした研修などがあり、社員のコンプライアンス意識を高める活動が必要です。
働き方の改善
社員が引き起こすコンプライアンス違反の背景には勤務環境があり、社員にとって望ましくない勤務環境は、コンプライアンス違反の温床となる可能性があります。
社員に対して成果創出に関する過度なプレッシャーを与える働き方が存在する場合は改善が必要なので、社員に対してヒアリングやアンケートを行い、職場環境の問題点を明確にして改善に取り組む必要があります。
相談窓口の設置
コンプライアンス違反は、社員の内部告発によって発覚するケースが多いため、防止に向けた取り組みとして、社内の相談窓口設置も効果的です。
しかし、どういった形で相談窓口を設置すべきか、どの社員に担当をさせるのかなど設置を検討する際の対応に迷う企業担当者もいるかもしれません。
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まとめ
企業に対するコンプライアンス遵守を求める社会の意識は、年々高まりをみせています。コンプライアンス違反が発生すると、企業に対する行政処分や企業に対する社会的信用の失墜など企業存続にも関わる重大案件にまで発展する可能性があります。
コンプライアンス遵守に向けた社内体制の構築には、経営層から一般社員まで社内全体のコンプライアンスへの理解を深めるために、行動規範の見直しや再構築、ルールの徹底に向けた社員向けの啓蒙活動と教育の実施など社内の体制整備が重要です。
また、コンプライアンス違反の多くは内部告発から発覚するため、社員が気軽に利用するコンプライアンスの相談窓口の設置も違反防止に効果的です。
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