「自社に合う人材を上手く採用できない」「面接をして採用してもすぐに離職してしまう」など、人材確保に悩む企業は多いでしょう。
自社にカルチャーフィットする人材を見極めると、新入社員の定着率が高まり、ミスマッチによる早期離職を低く抑えられます。
本記事では、カルチャーフィットの概要やスキルフィットとの違い、カルチャーフィットを重視した人材採用のメリットと具体的な方法などを詳しく解説します。
採用ミスマッチを防いで採用した社員の定着率を上げたい方は、参考にしてください。
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カルチャーフィットとは?
カルチャーフィットとは「Culture(文化・行動・思想)」と「Fit(適合)」を組み合わせた造語です。
人材採用のカルチャーフィットとは、企業独自の社風や考え方、価値観、雰囲気が、求職者と適合している状態をさします。
新入社員が自社の社風や考え方にフィットすると「馴染みやすい」「働きやすい」と感じて定着しやすくなり、早期離職の抑制に繋がります。
反対に、新入社員が自社の社風や考え方に適合できないと「馴染みにくい」「働きにくい」とミスマッチを感じて、早期離職に繋がりやすくなるでしょう。
スキルフィットとの違い
カルチャーフィットとあわせてよく使用される「スキルフィット」とは、企業が求めるスキルや経験が、求職者と適合している状態です。スキルマッチと呼ばれる場合もあります。
即戦力が必要とされる中途採用では、定量的に判断しやすいスキルフィットが重視される場合が多かったものの、現在はカルチャーフィットも兼ね備えた人材を求める傾向が高まっています。
スキルフィットだけを見て採用すると、スキル以外の「自社文化や社風に対する人材の適合性(カルチャーフィット)」などを正しく評価できないからです。
重要視される背景
カルチャーフィットが重要視される主な背景は、以下の3つです。
- 深刻な人手不足
- 働き方の多様化
- 中途採用の増加
以下で、それぞれの背景を詳しく解説します。
深刻な人手不足
参考・出典:厚生労働省「一般職業紹介状況(令和5年7月分)について」
令和5年に厚生労働省が発表した「求人、求職および求人倍率の推移」によると、平成26年度から令和4年まで「月間有効求人数」が「月間有効求職者数」を上回る状態が続いているとわかります。
つまり、昨今は求人数に対して求職者数が少ない状況が続いていて、有能な人材獲得の競争率が高まっている状態です。
上記の理由から、人材不足の中で獲得した新入社員の定着率向上をめざす企業が増加していて、カルチャーフィットを重んじた面接や採用を実施し、長く定着する人材を求めています。
働き方の多様化
新型コロナウィルスの流行以降のリモートワークの拡大も、カルチャーフィットが注目される理由のひとつです。
デジタル化やDX化の推進による業務のオンライン化、フレックスタイム制の採用により、常に会社で仕事するのではなく、個人の裁量による自由な働き方が定着しつつあります。
社員同士が直接顔を見てコミュニケーションをとる機会が減少する中、ビジネスチャットツールなどオンラインで情報交換やコミュニケーションを円滑に進めなければなりません。
よって、自社の雰囲気や仕事の仕方に適合する、カルチャーフィットする人材の雇用が必要とされています。
中途採用の増加
長年続いた終身雇用の崩壊により、早期離職者や短期間で転職を繰り返す人が増加しました。中途採用が一般化したことも、カルチャーフィットが重んじられる理由のひとつです。
中途採用者が社風に馴染めず早期離職した例は多く、スキルがフィットしていても、カルチャーフィットが不十分な人材は採用しない会社も増えています。
2020年にリクルートワークス研究所が行った「全国就業実態パネル調査(JPSED)2020」によると、20代でいずれ転職したいと考えている人の割合は約57%、40代で約42%です。
また、厚生労働省「新規学卒者の離職状況(大卒)」によると、3年目までの早期離職者数は2009年以降、増加傾向にあり、今後も若手の離職者は増え続けると予想されています。
カルチャーフィットを重視した面接を行うメリット
カルチャーフィットを重視した面接を行う主なメリットは、以下の3つです。
- ミスマッチによる早期離職を防げる
- 円滑なコミュニケーションがとれる
- 効率的な業務の進行や生産性向上に繋がる
以下で、それぞれのメリットを詳しく解説します。
ミスマッチによる早期離職を防げる
入社直後は誰しも緊張しやすくストレスを感じやすいですが、カルチャーフィットを重んじた面接方法を行えば、企業文化に合う人材を採用できます。
職場環境に馴染むまでの時間を短縮できるため、ミスマッチによる早期離職を抑制できるでしょう。
円滑なコミュニケーションにより信頼関係が築きやすくなる
カルチャーフィットする人材は、自社の社員と似た価値観や考え方を持っています。ストレスなく意思疎通を行えるため、信頼関係を築きやすくなるところがメリットです。
双方への理解や尊重の思いが自然に生まれ、円滑なコミュニケーションがとりやすいでしょう。社内コミュニケーションが円滑になると、社員同士や取引先との関係も上手くいきやすいと考えられます。
効率的な業務の進行や生産性向上に繋がる
カルチャーフィットする人材は、会社の経営方針に沿った働き方が期待できます。似た考え方や価値観を持つ人間が集まると、社内に一体感も生まれるでしょう。
業務上のやり取りや連携もスムーズに進むため、効率的な業務の進行や生産性向上に繋がります。
カルチャーフィットしない人材を採用するリスク
カルチャーフィットしない人材を採用するリスクは、主に以下の3つです。
- ミスマッチによる早期離職が起こる
- チーム内や部署間連携に影響が出る
- 採用コストが増加する
以下で、ぞれぞれのリスクを詳しく解説します。
ミスマッチによる早期離職が起こる
新入社員が会社の雰囲気や価値観にカルチャーフィットしていない場合は、会社や社員に馴染めず、ミスマッチによる早期離職が起こりやすいです。
コミュニケーション不足により、ミスやトラブルが発生しやすくなり、モチベーションの低下に繋がりやすいことも早期離職の理由です。
チーム内や部署間連携に影響が出る
円滑なコミュニケーションがとりにくいため、チーム内や部署間連携に影響が出ます。
「情報伝達が滞る」「意見交換による新しいアイデアが生まれにくい」「ノウハウを共有しにくい」など業務に支障をきたす可能性も考えられます。
採用コストが増加する
人材の採用には、求人広告費、人材紹介会社への成功報酬、採用担当者の人件費、面接の会場費、応募者の交通費など、さまざまな費用がかかります。
新入社員や中途採用社員が早期離職すると、人材確保に要した費用が無駄になってしまいます。さらに、新しく人材を採用するための追加コストがかかるなど、採用コストが増加する点が悩みの種です。
自社のカルチャーにフィットする社員を採用すると、定着率の向上に繋がるため、余分な工数やコストの削減が実現します。
カルチャーフィットに重点を置いた面接方法を6つのステップに分けて解説
カルチャーフィットを面接に取り入れる際は、事前準備が必要な点に注意してください。以下で具体的な方法や手順を6つのステップに分けて解説します。
- 1.自社のカルチャーを明確化する
- 2.自社のカルチャーにフィットするペルソナ設定を行う
- 3.自社のカルチャーを社内だけでなく社外へも発信する
- 4.カルチャーフィットをふまえた面接を行う
- 5.性格適性検査を行う
- 6.自社イベントへの参加や体験入社も取り入れる
① 自社のカルチャーを明確化する
はじめに、自社のカルチャーを具体的に言語化するなどして明確化しましょう。採用担当者が自社のカルチャーを理解していない状態では、応募者がカルチャーフィットしているか見極められません。
社員アンケートを行ったり、面接によるヒアリングを実施したりして、自社のカルチャーへの理解を深めてください。
社員に「自社の好きなところ、良いところと理由」「業務を行う上で大事にしている点」などをヒアリングすると、自社のカルチャーをよく理解できるでしょう。
マルチフォーカスモデルを活用し、自社のカルチャーを診断するのもおすすめです。以下の「独立した6つの次元」と「半独立の2つの次元」で組織の現状を可視化します。
次元1:組織の効果性 手段重視か、目標重視か |
次元2:顧客志向のあり方 内部論理か、顧客優先か |
次元3:仕事の進め方、コントロールのあり方 仕事の規律は厳格か、ゆるやかか |
次元4:組織の関心のあり方 職場の関心は、上司か専門性か |
次元5:組織外との関わり方 組織はオープンか、クローズドか |
次元6:マネジメントの哲学 従業員志向か、仕事志向か |
次元7:リーダーシップの受容度 |
次元8:人と組織の一体感 |
「求める人物像」を明確にし、公開すると、応募者は入社後にどう行動すれば良いのかがわかります。
② 自社のカルチャーにフィットするペルソナ設定を行う
自社のカルチャーを明確化したら、次に自社のカルチャーに合う理想的な人材のペルソナ設定を行います。
理想的な人材とは、どういった性格、価値観、趣味、興味、ライフスタイル、行動パターンなのか、詳細な設定が重要です。
ペルソナの情報源として、自社のカルチャーにフィットした社員にヒアリングすると良いでしょう。
さらに「自社に必要な能力は何か」などスキルフィットも加味して、理想の人物像を作り上げていきます。
③ 自社のカルチャーを社内だけでなく社外へも発信する
自社のカルチャーを社内だけでなく社外へも発信すると、社風や企業理念など企業の魅力が求職者に伝わりやすくなります。発信手段として、SNSや採用サイトなどの媒体を利用しましょう。
求職者は、給与や福利厚生など待遇面だけでなく、実際の社内の様子などリアルな情報も欲しいと思っています。
社外への情報発信は、自社にカルチャーフィットする求職者の背中を押すきっかけになったり、自社に合わない求職者からの応募を抑制したりできるでしょう。
④ カルチャーフィットをふまえた面接を行う
カルチャーフィットの明確化、理想的な人材のペルソナ設定、対外的な情報発信を行ったら、カルチャーフィットを踏まえた面接を実施します。
応募者が自社に合うかどうか判断するために、カルチャーフィットの可否がわかる質問を行いましょう(質問例は後述)。
採用担当者による質問だけでなく、採用後の配属先の上司による面接もあわせて行えば、多角的な視点から判断が可能です。
⑤ 性格適性検査を行う
応募者が自社にカルチャーフィットしているか、履歴書と面接だけでは判断しにくいため、客観的な判断基準となる「性格適性検査」も行いましょう。
性格適性検査で、応募者の性格や考え方や価値観を知ることが可能です。
⑥ 自社イベントへの参加や体験入社も取り入れる
応募者に自社イベントに参加してもらったり、体験入社してもらったりすると、カルチャーフィットしているか判断しやすくなります。
ランチ会やお酒も楽しめる会など、リラックスした状態で交流できる機会を設けると良いでしょう。社員と何気ない会話を行う様子などから、自社の雰囲気に合っているか見極められるからです。
また、体験入社で実際に社内の雰囲気を見てもらうのも良いでしょう。
カルチャーフィットの見極めに効果的な質問例
カルチャーフィットの見極めに効果的な質問例を紹介します。
自社のカルチャーに関して質問する
まず、自社のカルチャーに関する質問をします。
- 自社のモットー:失敗を恐れない
質問例:「大きな挑戦をした経験はありますか?」 - 自社の社風:コミュニケーションを重視する
質問例:「あなたが働きやすいと考える会社の雰囲気は?」
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STAR面接を行う
STAR面接は、応募者の人柄や、過去の体験や経験から学んだ価値観、行動パターンがわかる質問方法です。
STARは、以下の4つの頭文字を意味します。
- 1.Situation(状況)
└仕事でどういった困難な状況に直面しましたか - 2.Task(課題)
└どう課題を解決しましたか - 3.Action(行動)
└具体的にとった行動を教えてください - 4.Result(結果)
└課題解決により、何を学びましたか
人柄に関して質問する
カルチャーフィットを見極めるためには、応募者の人柄や本心に関する質問も大事です。
- 仕事する上で大切にしているポイントは何か
- 苦手な同僚や上司との接し方
- 自身の価値観と異なるチームで仕事する場合、どうコミュニケーションをとるか
まとめ
カルチャーフィットの概要やスキルフィットとの違い、カルチャーフィットを重視した面接を行うメリットや具体的な方法などを解説しました。
カルチャーフィットを重視した面接を行い、ミスマッチを回避すれば、人材の定着率の向上が期待できます。しかし、自社のカルチャーを明確化したり、面接方法を工夫したりする必要があるため、何から手を付けたら良いのかわからない方もいるかもしれません。
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