企業が業務プロセスの効率化と成果向上を目指す中で、BPR(Business Process Reengineering)は強力な手法として注目されています。アデコ株式会社 OSデリバリー事業部長の久田氏に、BPRを実現するための具体的な手段であるBPO(Business Process Outsourcing)、BPaaS(Business Process as a Service)、BPS(Business Process Services)について、その留意点や課題、成功事例を考察しました。
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BPRの目的と実現手段
――まず、BPRの目的と、それを達成するための具体的な手段としてのBPO、BPaaS、BPSについて教えてください。
アデコ 久田氏: BPRは、企業の業務プロセスを根本的に見直し、効率化と成果向上を図るための手法です。このBPRを実現するための手段として、BPO、BPaaS、BPSがあります。BPOは特定の業務プロセスを外部に委託し、自社のコスト削減と業務効率化を図ります。BPaaSはクラウドベースの業務プロセスサービスで、企業は必要なプロセスをオンデマンドで利用できます。BPSは業務プロセスフローの自動化やデジタル化を進め、生産性を高める手法です。
BPRは目的であり、BPO、BPaaS、BPSは手段
――BPRは、現状の把握と改善のための計画の一環であり、BPO、BPaaS、BPSがその具体的な実行手段であるということですね?
アデコ 久田氏:はい、その通りです。BPRは企業が目指す目的に応じて業務プロセスを徹底的に見直し、どの部分が改善可能かを分析し、最適化するためのプランを策定する段階です。その後、改善策を実行に移す手段として、BPO、BPaaS、BPSが活用されます。BPOは特定の業務を外部に委託することで効率化を図り、BPaaSはクラウドベースのサービスで柔軟に業務を管理します。またBPSは業務プロセスやフロー全体を自動化・デジタル化し、持続的な生産効率の向上を実現します。
BPRからBPO、BPaaS、BPSを行うメリット
――では、BPRからのBPOやBPaaS、BPSを利用するメリットについて詳しく教えてください。
アデコ 久田氏:まず、BPRを実施することで、企業の業務プロセスを根本的に見直し、最適化が図れます。この段階で業務の無駄を排除し、効率化が進むのです。その後、最適化されたプロセスを外部に委託するBPOを活用することで、コスト削減と業務の質の向上が期待できます。特に、外部パートナーは特定の業務に特化しているため、高品質なサービスを提供できます。
さらに、BPaaSの活用により、業務プロセスをクラウドベースで迅速に拡張・縮小することが可能となり、市場の変動にも柔軟に対応できます。これは特に、急激な需要の変動や新しいビジネスチャンスに迅速に対応するために重要です。
また、BPSを導入することで、業務プロセスやフローをデジタル化や自動化することができます。これにより、生産性が大幅に向上し、ヒューマンエラーの削減が可能となり業務品質が向上します。自動化されたプロセスは、一貫性と効率性を保ちながら、リアルタイムでデータを活用することができます。
さらに、総じて、BPRを起点にBPO、BPaaS、BPSを組み合わせることで、企業は業務の最適化からコスト削減、生産性向上、柔軟な対応力の向上まで、多くのメリットを享受することができます。
BPRからBPO、BPaaS、BPSを行うデメリット
――一方で、デメリットもあるのでしょうか?
アデコ 久田氏:はい、デメリットも存在します。まず、外部パートナーに業務を委託すると、そのパートナーに依存する度合いが増します。これにより、場合によっては自社の業務改革がパートナーの運営品質に左右される可能性があります。また、業務プロセスの一部を外部に委託することで、情報漏洩やサイバー攻撃のリスクが高まることもあります。既存の業務プロセスを見直し、外部に委託することは大規模な変革を伴い、従業員の抵抗や適応の難しさが生じることもあります。また、初期投資や運用コストが高くなる場合もあり、期待する効果や成果が得られない可能性もあります。
企業がBPRを失敗せずに行うための秘訣
――企業がBPRを失敗せずに行うには何か秘訣がありますか?
アデコ 久田氏:企業がBPRを成功させるための秘訣はいくつかあります。まず、明確な目的と目標を設定することが重要です。どのような目的で何を達成したいのかを具体的に定めることで、プロジェクト全体の方向性が明確になります。次に、全社員の理解と協力が不可欠です。BPRは全社的な取り組みであり、従業員の協力なくしては成功しません。そのため、従業員への教育とコミュニケーションを徹底し、変革の意義を理解してもらうことが重要です。
さらに、BPRのアプローチ手法の選定も成功の鍵です。添付の画像に示されるように、手法にはトップダウンアプローチとボトムアップアプローチがあります。それぞれにメリットとデメリットがあり、目的や状況に応じて最適な手法を選ぶことが重要です。
トップダウンアプローチのメリットは、経営判断に基づく意思決定が迅速であり、着手開始までのスピードが速いことです。また、階層型組織での実装が容易です。しかし、従業員の関与感や自主性が低く、表面的な情報収集になりがちな為、現場での本質的な課題や持続可能な解決策を見落とすリスクがあります。
ボトムアップアプローチのメリットは、従業員の関与感と自主性が高く、エンドユーザー視点に立った課題の深掘りができる点です。これにより、実態に即した実用的で持続可能な解決策が見つかることが多いです。ただし、改善ノウハウの不足や部門間での合意形成に時間がかかることがあります。
BPRでは現状分析をしっかり行い、問題点や改善点を洗い出すことが必要です。これには、業務の理解と共に棚卸とデータや情報の収集と分析が不可欠です。さらに、段階的な業務改革の実施を心掛け、短期的な成功を積み重ねることでプロジェクト全体のモチベーションを維持します。
最後に、外部の専門家やコンサルタントを活用することも有効ですが、注意が必要です。専門家の知識と経験を取り入れることで、業務の棚卸と整理はできるかもしれませんが、現場運営の実態にそぐわない業務改革となっているケースもあります。業務構築と運用もできる外部コンサルタントを選ぶことが望ましいでしょう。
具体的なBPRの事例
――具体的なBPRの事例があればお聞かせください。
アデコ 久田氏:ある運輸業界の企業様からの依頼で、子会社20社のバックオフィス業務を段階的に棚卸し、標準化と平準化を進めています。まず、同種の業務でありながら各社ごとに異なるプロセスで実施されている業務を棚卸し、分析しました。その結果、業務プロセスとフローの標準化を策定しました。これにより、業務の重複や無駄を排除し、効率化を図りました。具体的には、経理や人事、調達などのバックオフィス業務を中心に、デジタルツールを導入し、自動化を推進しています。
このプロジェクトは以下のステップで進めています:
- 1.現状分析と課題の洗い出し:各子会社の業務フローを詳細に調査し、非効率な部分や改善点を特定します。
- 2.共通業務フローの策定:標準化された業務プロセスを作成し、全子会社で統一した手順を順次導入していきます。
- 3.デジタルツールの導入:最新のデジタルツールを活用し、業務の自動化と効率化を図ります。例えば、RPA(Robotic Process Automation)を導入し、定型業務の自動化を行いました。
- 4.教育とトレーニング:全従業員に対して新しい業務フローやデジタルツールの使い方を徹底的に教育します。
- 5.進捗管理とフィードバック:定期的にプロジェクトの進捗を管理し、フィードバックを元に改善を続けます。
上記により、業務効率が大幅に向上し、コスト削減を実現することが可能です。また、デジタルツールの導入により、業務の自動化と品質向上も実現しています。
このプロジェクトは3年間かけて進行中であり、全社のバックオフィス業務の改善(生産性向上)に大きな期待を寄せられています。
アデコ社のアウトソーシングサービスの強み
――アデコ社のBPRからのBPOやBPaaS、BPSサービスの強みについて教えてください。
アデコ 久田氏:アデコの強みは統合的なアプローチです。私たちはBPRの段階から企業に寄り添って伴走し、業務プロセスとフローの全体像を把握した上で業務改革を策定し、最適なBPO、BPaaS、BPSを提案します。また、品質管理体制としてQC(Quality Control)専任チームがあり、プロジェクトマネジメントの役割を担い、業務の立ち上げから運営、品質管理まで一貫してサポートします。また、デジタルツールの活用にも力を入れており、業務デジタル化と自動化を推進しています。あわせて、業務運営を通じてVOC(Voice of Customer)分析を行い、企業の新たな価値創造に繋がる提案を実施しています。
今後のビジネス環境におけるBPRの役割
――今後のビジネス環境に関して、BPRからのBPO、BPaaS、BPSの役割はどう変わりますか?
アデコ 久田氏:未来のビジネス環境に関して、これまで以上に迅速かつ柔軟に変化に対応する必要があります。そのためには、企業全体の業務プロセスの最適化と効率化を実現していくことがより重要となります。従来のように業務の一部を切り出すのではなく、企業全体の業務プロセスにスコープをあててBPRを実施し、BPO、BPaaS、BPSをフレキシブルに活用することで、企業はコア業務に集中し、非コア業務を効率的に外部へ委託することが可能となります。そして、デジタルツールの活用により、業務の生産性や品質を大幅に向上させることができます。
アデコは、単なるアウトソーサーではなく、これらのソリューションを通じて、企業の事業改善と成長を支援し、競争力強化を実現するパートナーとして、より多くの企業に寄り添っていきます。
Adeccoでは、上記のような人事ノウハウをわかりやすくまとめ、定期的に更新しております。
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