当社専門家が語る「業務効率化の本質と3つの罠」

業務効率化は、企業の生産性を向上させ、競争力を高めるために欠かせない取り組みです。しかし、その過程には見過ごされがちな「罠」が潜んでいます。効率化を進める一方で、知らず知らずのうちに陥るこれらの罠は、かえって企業の成長を妨げる要因になりかねません。今回は、アデコ株式会社アウトソーシング事業部、事業部長である久田昭紀氏に業務効率化の本質と、陥りがちな3つの罠について解説していただきました。

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思い込みの罠

持続可能な企業成長を支える効率化の取り組み

――業務効率化を進める際、最も陥りやすい「思い込みの罠」とは何でしょうか?

アデコ 久田氏:多くの企業は、業務効率化と聞くと、まず作業のスピードアップやコスト削減を目指します。もちろん、それ自体は悪いことではありませんが、そこだけにフォーカスしてしまうと、効率化本来の目的を見失う危険があります。効率化本来の目的とは、効率化によって得られた時間やリソースを、ただのコスト削減と捉えるだけではなく、企業の成長のためにどのように活用するかが重要です。例えば、作業時間を短縮できても、その空いた時間を利益を生み出す活動に使わなければ、効率化の意味は薄れてしまいます。新たなプロジェクトの推進や、従業員のスキルアップに充てるなど、戦略的な活用が求められます。

アデコ株式会社アウトソーシング事業部、事業部長である久田昭紀氏

複雑化の罠

――効率化を進める過程で陥りやすい「複雑化の罠」とは何ですか?

アデコ 久田氏:「効率化を図るために新しいシステムやプロセスを導入するときに、ついつい細かく作り込みすぎてしまうことがあります。これが『複雑化の罠』です。システムやプロセスを詳細に設定することが、現場では逆に運用が煩雑になり、柔軟性を失わせてしまうことが少なくありません。特にDXを進める際に、過度なカスタマイズを行うと、現場の対応が追いつかず、せっかくの効率化が滞ってしまうリスクがあります。」

システムやプロセスを細かく作り込みすぎてしまう背景は様々で、例えばあらゆる事態を想定して細かく機能設定したが、実際には不必要な機能が多く含まれていたり、管理者と現場で欲しい機能が異なる為に要件定義が多岐に渡るケースや、さらに知識や経験不足から過剰な設定をしてしまう場合、ベンダーの提案をそのまま受け入れて多くの機能を導入してしまうケースもあります。

「効率化の鍵は、シンプルさにあります。自動化やシステム導入の際には、あまり細かい設定は避けて、運用しやすいシンプルな仕組みを構築することが大切です。業務プロセスを必要以上に細分化せず、簡便で直感的に使えるシステムを目指すことが、複雑化の罠を避けるポイントです。目的は効率化であり、システムの完成度ではないという視点と意識を持つことが重要です。」

効率化の鍵は運用しやすいシンプルな仕組みの構築

部署間連携欠如の罠

――部署間の連携不足がもたらす「部署間連携欠如の罠」とは何でしょうか?

アデコ 久田氏:大手企業で良く見受けられるケースとして、各部署が独自に効率化を進めている場合、それが全社的な最適化に繋がらないことが多々あります。例えば、バックオフィスが効率化を進めたとしても、その業務がフロントオフィスとうまく繋がっていなければ、業務全体が停滞してしまいます。特に業務が複雑に絡み合っている場合、個々の効率化が全体のパフォーマンスにプラスにならないこともあります。

ある一例ですが、営業部門が新しい顧客管理システムを導入して効率化を図ったとしましょう。しかし、そのシステムが財務部門の会計システムと連携していない場合、営業部門が入力した顧客情報と財務部門が管理する売上情報が一致せず、結局手作業で確認や修正が必要になってしまいます。結果として、営業部門は効率化できたかもしれませんが、財務部門に余計な負担がかかり、全社的な効率化にはつながりません。

まず、隣接する部署同士の業務内容を理解し合うことが重要です。各部署がどのように影響し合っているのか、業務の流れを全体として把握することで、効率化の効果を最大化できます。また、プロジェクトマネージャーや経営層が全社的な視点で業務を俯瞰し、部門間の連携を強化する仕組みを作ることが必要です。全社を俯瞰して、どの部分を効率化すれば企業全体にメリットがあるかを考えることが、罠を避けるための一歩となります。

全社的に業務プロセスを見渡し、効率化を進めることが重要

業務効率化の成功要因

――業務効率化を成功させるために、どのような対策が必要でしょうか?

アデコ 久田氏:最初にもお話しましたが、まず、業務を効率化した後のゴールを明確にすることが大切です。効率化によって得られた時間やリソースを、どのように活用して企業の成長に繋げるのか、そのビジョンをしっかりと持つ必要があります。例えば、単にコストを削減するだけでなく、新たな市場開拓や製品開発に投資することで、企業の競争力を強化するなど、具体的な使い道を設定することが重要です。

効率化によって得られた時間やリソースをどのように活用するか?

アウトソーシングのメリットと活用方法

――業務効率化を進める上で、アウトソーシングも一つの手段として有効だと考えますが、どのようなメリットがあるのでしょうか?

アデコ 久田氏:そうですね。業務効率化の一環として、アウトソーシングは非常に有効な手段です。以下のグラフは当社調べではありますが、ご覧の通り、企業がアウトソーシングを活用する理由として最も多いのが『業務効率化』で、約60%の企業がこれを目的にしています。理由としてはアウトソーシングによって専門知識の不足を補い、コア業務に集中する環境を整えることができるからです。さらに、コスト削減や人員削減といった点も重要視されています。

Q.アウトソーシングサービスの利用目的を教えてください

例えば、グラフでは『コスト削減』が50%近く、『専門知識の不足を補うため』が40%を超える企業で選ばれています。これらはアウトソーシングの活用によって、社内リソースをより重要な業務や戦略的な分野に集中できることを示しています。また、『事業拡大への対応』や『リスク管理』、『業務品質の向上』といった項目も目立ちます。これらのメリットが、アウトソーシングを効率化の手段として活用する企業が多い理由と言えるでしょう。

――アウトソーシングを活用する際のポイントは何ですか?

アデコ 久田氏:アウトソーシングを活用する際には、まず自社の業務を見直し、どの業務が委託に適しているかを明確にするための棚卸しが必要です。但し、業務の棚卸や整理について、自社社員が既存業務を抱えながら実施することは、相応の業務負荷となる可能性があります。そこで、業務の棚卸や整理を一緒に伴走してサポートしてもらえるアウトソーシングベンダーと協業して実施することも検討してみては如何でしょうか。業務の棚卸、再設計、構築、改善までのBPR(ビジネスプロセスリエンジニアリング)とBPRによって切り出された業務の運営も履行できるベンダーが望ましいです。

但し、アウトソーシングには、リソースの有効活用や専門性の向上といったメリットがありますが、一方で業務のコントロールが難しくなるデメリットもあります。委託先とのコミュニケーションと品質管理を徹底することが重要です。

アウトソーシングの利点と課題のバランス

まとめ

――最後に、効率化を成功させるためのメッセージをお願いします。

アデコ 久田氏:業務効率化は、単なる作業工数やコストの削減ではなく、企業の成長を支えるための重要な取り組みです。効率化によって得られた時間やリソースを、何にどのように活用して人的資本経営に繋げていくのか、そして持続的な企業の未来を創出していくのか、その視点を常に持つことが業務効率化、すなわち生産性向上における成功の鍵ではないでしょうか。デジタル化やアウトソーシングを活用しつつ、全社的な視点で効率化を進め、組織全体の成長に繋げる取り組みを行っていきましょう。

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