この記事では、業務が停滞している理由が単なる「人材不足」によるものではないという視点から、真の原因を探ります。特に、DX(デジタルトランスフォーメーション)が進まない背景には、専門家の不足や業務の非効率化があることを強調し、その解決策としてDX専門家へのアウトソーシングを提案します。また、業務を指揮するプロフェッショナルを外部に頼ることで、効率的に業務を遂行できることを伝えます。
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はじめに
多くの大企業が業務停滞の原因を「人手不足」と捉えがちですが、それだけが問題ではありません。特に従業員1000名以上の企業において、業務の非効率化や専門的な知識の不足がDXの推進を阻むことが多くあります。本記事では、アデコ株式会社のOSデリバリー事業部長、久田昭紀さんへのインタビューを基に、業務停滞の真因とその解決策を考察します。
日本企業のDX事情
導入率:大企業の約40%強がDXを推進中。中小企業は10%程度にとどまっている。
投資額:2022年、日本の民間企業による情報化投資額は15.8兆円(前年比0.4%増)
推進上の課題:DXプロジェクトの成功率1位は「明確な目的・目標が定まっていない」が28.3%となっている。
アデコ 久田氏:これらのデータからもわかるように、日本企業のDX推進はまだ十分とは言えません。大企業の約40%がDXを進めている一方、中小企業では10%程度にとどまっています。また、情報化投資額の増加率が前年比0.4%と微増にとどまっていることから、全体的な投資意欲も低い状況です。
さらに、「明確な目的・目標が定まっていない」がDX推進上の最大の課題となっており、多くの企業が具体的な戦略を描けていないことを示しています。これを克服するためには、まず明確なビジョンと目標を設定し、それに基づいた具体的な計画を立てることが不可欠です。特に中小企業は、外部の専門家や支援策を積極的に活用して、効率的にDXを推進する必要があります。
参考・出典:独立行政法人中小企業基盤整備機構「中小企業の DX 推進に関する調査(2023 年)」より
参考・出典:総務省「令和6年情報通信白書」より
業務停滞の真因を探る
人材不足だけではない要因
――多くの企業が人手不足を業務停滞の原因と考えていますが、他にも何か要因があるのでしょうか?
アデコ 久田氏:業務停滞の原因は単なる人手不足ではなく、業務の非効率性や特定のスキルや人材に依存する業務フローが原因だったりします。特に人材に業務が依存すると、その人が退職した際に業務が停滞する大きなリスクとなります。
――具体的には、どのような点が問題なのでしょうか?
アデコ 久田氏:例えば、業務の標準化が進んでいないことです。業務が各個人の裁量に依存していると、新しい人材が入ったときに適応が難しく、業務のばらつきが生じやすくなります。これは、多くの企業が抱える「俗人的な業務フロー」が原因です。その人でなければ遂行できない業務が多く、その結果、その人がいなくなれば業務が滞ってしまいます。このような状況を改善するには、業務の標準化を進めることが不可欠です。業務の効率化を図る前に、まずは業務の手順を明確にし、誰でも遂行できるようにすることが重要です。
また、業務の難易度自体が高く、覚えることが非常に多いことも問題です。このような業務に新しい人材が適応するには多くの時間と労力がかかり、それが慢性的な人手不足を引き起こしています。さらに、これらの業務が特定の個人に依存していることで、業務の継続性に支障が出る可能性が高まります。そのため、業務プロセスを見直し、よりシンプルで標準化されたフローに改善することが必要です。標準化により、新たな人材が短期間で業務に慣れ、スムーズに作業を行えるようになります。
業務プロセスの非効率性と標準化の必要性
――業務プロセスの非効率性がDX推進にどのような影響を与えるのでしょうか?
アデコ 久田氏:非効率な業務プロセスではDXツールの導入が難しく、効果を最大限に引き出すことができません。例えば、手作業が多くデータが散在していると、デジタル化によるメリットを享受しにくい状況になります。また、イレギュラーな事象が頻発し、社員の判断が必要な業務はアウトソーシングに向いていません。これは、業務の可視化が不十分なために「アウトソースすべきでない業務」が外注されてしまうケースです。このような状況は誰にとってもメリットがなく、業務品質やコンプライアンス上のリスクも増大します。
まずは業務を棚卸しを行い、無駄を排除し、標準化することが重要です。標準化された業務プロセスは、DXツールの効果的な導入を可能にし、デジタル技術を最大限に活用するための基盤となります。業務の可視化を進めることで、どの部分がデジタル化に適しているのか、どこを外部に委託するべきなのかが明確になり、最適なリソース配分が可能になります。
また、非効率な業務プロセスがDXの導入を妨げるもう一つの要因は、デジタルツールの導入に対する抵抗感です。業務が手作業で行われている場合、そのプロセスをデジタル化するには大きな変革が必要です。多くの企業では、この変革に対する不安や抵抗からDX推進が停滞してしまうことが少なくありません。そのため、まずは業務の現状を可視化し、どの部分が改善可能かを明確にすることがDX推進の第一歩となります。
DX推進の障害と解決策
専門家不足とその影響
――DX推進には専門知識と経験が不可欠だと思いますが、現在、多くの企業で専門家が不足しているとのことです。具体的にはどのような影響がありますか?
アデコ 久田氏:多くの企業で専門家が不足しています。そのため、デジタルツールの検討や導入、業務プロセスの最適化が遅れてしまうのです。内部で対応しなければならない場合、結果としてDXの進捗が滞り、業務効率化の機会を逃してしまいます。また、人手不足の解決策としてアウトソーシングを選択する企業も多いですが、それが成功するとは限りません。
――アウトソーシングがうまくいかないのはなぜでしょうか?
アデコ 久田氏:アウトソーシングがうまくいかない理由は様々ですが、多くの場合、企業が抱える真の課題を理解しないまま、安易にアウトソーシングに頼ってしまうことが原因です。人がやめてしまうのか、なぜアウトソーシングが必要なのか、その根本的な原因に向き合うことが重要です。
――具体的には、どのような提案をされることが多いのでしょうか?
アデコ 久田氏:例えば、現状の業務プロセスを詳細に分析し、どの部分が非効率なのかを明確にします。そして、その中でデジタル化が可能な部分や、アウトソーシングが有効な部分を特定します。多くの場合、企業は人手不足に対してアウトソーシングを検討したりしますが、その前に業務自体のプロセスを見直すことで、無駄を省き、効率化を実現できるケースが多いのです。
――なるほど。つまり、DXを推進するにも、外部に頼る方法と内部で進める方法があり、それぞれに適したアウトソーシングの活用方法があるということですね。
アデコ 久田氏:その通りです。DXをアウトソースするという選択肢もありますが、内部リソースでDXを進める際に、既存の定型業務をアウトソースするという方法もあります。例えば、これまで従業員が行っていたデータ入力や書類作成などの定型業務をアウトソースすることで、従業員はDX推進に集中できる環境を作ることも可能です。
――既存の業務をアウトソースすることで、従業員がDX推進に専念できるようになるのは大きなメリットですね。
アデコ 久田氏:ええ。DX推進には、新しいツールの導入や、業務プロセスの変更など、従業員にとって負担が大きい作業が伴います。既存業務をアウトソースすることで、従業員の負担を軽減し、スムーズなDX推進を支援することができます。
――アウトソーシングの際に注意すべきポイントは何でしょうか?
アデコ 久田氏:アウトソーシングを行う際には、適切なパートナーを選ぶことが非常に重要です。企業が抱える具体的な課題に対して最適な解決策を提供できるパートナーを選ぶことが成功の鍵となります。アウトソーシングによって何を成し得たいのかを共有し、目的の達成に向けてパートナーとどのように連携していくのか、事前にしっかりと協議しておくことが重要です。
――パートナーとの連携を協議するための具体的な方法はありますか?
アデコ 久田氏:はい、パートナーとの連携を確立するためには、定期的なコミュニケーションが非常に重要です。例えば、プロジェクトの進捗状況を定期的に共有し、相互に透明性を持って業務を継続することが求められます。具体的には、週次や月次でのミーティングを設け、問題点や改善策を協議します。また、明確な役割分担を行い、誰がどの部分を担当しているのかを明確に理解することも大切です。さらに、KPI(重要業績評価指標)を設定し、その進捗をモニタリングすることも効果的です。KPIを設定することで、業務の達成度を定量的に評価でき、パートナーとの協力体制を強化することができます。
――KPIを設定することの他に、どのような工夫がありますか?
アデコ 久田氏:もう一つ重要なのは、パートナーとの関係を「一旦委託」としてではなく、長期的なビジネスパートナーとして構築することです。両者がともに成長し、利益を共有するという視点を持つことで、信頼関係が深まり、プロジェクトの成功率も向上します。また、継続的なフィードバックのサイクルを設け、必要に応じて戦略を修正することも重要です。
DXアウトソーシングの成功事例
――具体的な成功事例について教えてください。
アデコ 久田氏:例えば、ある大手エネルギー会社においては、現場の知見を活かしたDX化の取り組みが、極めて実践的かつ効果的であると高く評価されました。大手コンサルファームからのDX化提案もある中で、アデコの提案は現場業務を熟知したオペレーション視点と、アウトソーサーとしての客観的な外部視点を融合した内容により、他社にはない実効性が高い評価の理由となっています。現場の具体的な課題を解消し、業務効率化を実現することができた点も評価の一環です。これにより、業務時間とコストを削減し、従業員はより付加価値の高い業務に集中できました。また、デジタルツールの選定から導入、運用までを私たち専門家に任せて頂くことで、内部リソースの負担を軽減しつつ、最適なツールを活用できました。
さらに、アウトソーシングを活用することで、企業内部では手が届かない部分に対して専門的なアプローチを取ることができました。例えば、業務プロセスの自動化だけでなく、データの統合や分析など、DXを進める上で不可欠な要素を迅速に導入することができました。このように、アウトソーシングを通じて外部の専門家の力を借りることで、DXを加速させ、企業全体の効率化を図ることが可能になります。
まとめ
業務停滞を打破しDXアウトソーシングを成功させる鍵
企業が抱える業務停滞の要因は、人手不足だけでなく、業務の非効率性や専門家不足といった、より根深い問題に起因することが多いです。特に、属人的な業務フローや標準化の遅れは、人材の流失リスクを高め、DX推進を阻害する大きな要因となります。
DXを成功させるには、まず現状の業務プロセスを可視化し、非効率な部分を特定することが重要です。その上で、業務の標準化を進め、デジタルツールを効果的に活用できる環境を整えなければなりません。
専門家不足という課題に対しては、DX専門家へのアウトソーシングが有効な手段となります。アウトソーシングによって、専門的な知識やノウハウを導入し、業務効率化やDX推進を加速させることができます。
さらに、DX推進に注力するために、従来の業務をアウトソースするという選択肢もあります。これにより、従業員はDX推進に専念し、よりスムーズな変革を実現できるでしょう。
アウトソーシングを成功させるには、適切なパートナー選びと密な連携が不可欠です。定期的なコミュニケーション、明確な役割分担、KPI設定などを通じて、パートナーと協力体制を構築し、共通の目標に向かって進むことが重要です。