派遣管理の工数を軽減
―業務委託で築く、持続可能な成長戦略

多くの派遣社員を活用し、正社員管理者が指揮命令と勤怠管理を履行する現行体制では、管理負荷の増大、情報共有の難しさ、法令遵守に伴うリスクが顕在化しています。
今回、当社専門家アデコ久田氏(OSデリバリー事業部長)に、派遣から委託契約へのシフトがもたらすメリット、具体的な導入プロセス、セキュリティ・品質管理対策について、実例や具体的な数値を交えながらお話を伺いました。

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現状の体制と抱える課題について

――現状、多くの企業では派遣社員を活用し、正社員管理者が指揮命令を行う体制ですが、ここにどのような課題が見受けられるのでしょうか?

アデコ 久田氏まず、管理者の様々な負荷が非常に大きい点が挙げられます。現行体制では、派遣社員一人ひとりに対して日々の業務指示、進捗確認、さらには教育やフォローアップを行う必要があり、まるで多くの糸を同時に手繰るオーケストラの指揮者のような状況です。この結果、管理者は本来自身のすべきコア業務に集中できず、業務全体の生産性が低下するリスクがあります。また、派遣社員同士の連携不足やパフォーマンスの高低により、業務プロセスや生産性にばらつきが生じ、品質の均一化が難しいという問題も顕在化しています。さらに、派遣契約には法令遵守や労務管理のコストが伴い、企業側にとって大きな負担となってるケースがあります。

委託契約への移行の意義について

――そのような現状の課題を踏まえ、なぜ委託契約への移行が効果的な解決策となるのでしょうか?

アデコ 久田氏委託契約に切り替えると、業務の成果物に対して受託者が直接責任を持つ体制となるため、管理者が細かな業務指示や進捗管理にかける工数を大幅に削減できます。たとえば、これまで細かい部品を自前で組み立てる職人が多数必要だった作業を、専門メーカーに任せるようなイメージです。委託契約に切り替えることにより、企業は『何を達成するか』を考えることに集中でき、アウトプットに基づく評価が可能となります。さらに、委託先はその業務に特化した専門性やノウハウを有しているため、業務プロセスの標準化や品質管理の向上が期待でき、業務全体の生産性改善に大きく寄与します。

移行プロセスとその対策

アデコ 久田氏

――委託契約への移行プロセスでは、どのようなステップや対策が重要となるのでしょうか?

アデコ 久田氏まずはパイロット的にプロジェクトをスモールスタートさせることが不可欠です。全体を一度に全て切り替えるのではなく、業務の一部で委託契約を試験的に導入し、成果物の定義、KPI、評価基準を明確に設定します。これは、新しいシステムのテスト運用と同様で、実運用前に問題点や改善点を洗い出す重要なプロセスです。さらに、契約書面でセキュリティ対策や情報管理の要件を厳格に定め、万が一のトラブルにも迅速に対応できる体制を構築することが成功の鍵となります。

セキュリティ対策と情報管理の取り組み

――業務委託に移行するにあたりセキュリティの不安ないのでしょうか?

アデコ 久田氏:セキュリティは、業務委託契約への移行に際して企業様が最も懸念されるべき重要なポイントの一つです。当社では、ISO 27001などの国際的なセキュリティ認証を取得し、厳重なセキュリティ体制を確立しておりますが、これはあくまで一例に過ぎません。企業様が業務委託先を選定される際には、まず委託先が国際的なセキュリティ認証を有しているかどうかを確認することが基本となります。こうした認証を取得している企業は、基本的なセキュリティ対策が十分に講じられていると判断できます。また、事前にNDA(秘密保持契約)の締結や、アクセス権限の最小化、定期的なセキュリティ監査の実施など、情報漏洩リスクを徹底的に排除する仕組みを整えるなど、幾重にも厳重なセキュリティ体制で、企業の大切な情報を守る対策が講じることが重要です。

委託契約移行による具体的なメリット

――実際に委託契約に移行することで、どのような効果が期待できるのでしょうか?

アデコ 久田氏:委託契約に移行することで、以下のような具体的なメリットが期待できます。

  1. 1.管理工数とコストの大幅削減
    管理者が派遣社員に対して行っていた日々の指示や進捗確認の業務負荷が軽減され、これまでに比べて最大30%程度の管理工数削減が可能となります。これにより、正社員は本来のコア業務に専念でき、業務全体の生産性が向上します。
  2. 2.業務プロセスの標準化と品質均一化
    委託先が専門性を活かし、業務プロセスの標準化を徹底することで、定型業務におけるエラー率が従来の半分以下に低減する事例もあります。これにより、常に安定した品質のアウトプットが担保されることになります。
  3. 3.柔軟なリソース運用とコスト最適化
    成果物に基づいた評価体制が確立されることで、必要な時に必要なリソースを柔軟に調整できるため、固定型から変動可能なシフト導入が可能になり、需要の変動に応じた効率的なコスト運用を実現することが可能となります。
  4. 4.迅速な市場対応力の向上
    委託先の専門知識と迅速な業務改善により、市場環境の変化にも即応できる体制が整い、結果として企業全体の競争力が強化されます。
  5. 委託契約への移行は複数のメリットがある

このように、委託契約への移行は、管理コストの削減、品質の均一化、柔軟なコスト運用、そして市場対応力の向上といった複数のメリットを同時に実現し、企業の長期的な成長戦略に大きく寄与します。

業務委託先の選定について

――業務委託先の選定は、請負契約成功のカギとなりますが、どのようなポイントに注意すべきでしょうか?

アデコ 久田氏業務委託先の選び方は、委託契約の成果を左右する非常に重要な要素です。
まず、委託先が当該業務に対して十分な専門性や実績を持っているかどうかを、過去のプロジェクト事例や実績を通じて確認することが必要です。また、業務プロセスの標準化・自動化の実績、さらにはISO 27001などのセキュリティ認証の取得状況も重要な判断材料となります。従来派遣社員で履行していた業務プロセスを維持したまま委託契約で業務を履行することを提案してくる委託会社には気を付けたほうが良いでしょう。
さらに、企業が求める業務の進め方や品質に対する期待値を、委託先が正しく理解し柔軟に対応できるかを見極めることが大切です。契約前にパイロット的にスモールスタートでプロジェクトを開始し、実際の運用状況や品質、双方のコミュニケーションの円滑さや柔軟性を確認することで、リスクを最小限に抑えながら信頼関係を構築することが可能です。

委託契約へのシフトに向けたアドバイス

――最後に、委託契約へのシフトを検討している企業に向け、アドバイスをお願いします。

アデコ 久田氏まずは自社の現状と抱える課題を正確に把握し、どこに改善の余地があるのかを明確にすることが第一歩です。急激な全面移行はリスクを伴うため、パイロット的にプロジェクトをスモールスタートさせる段階的な移行手法を採用し、効果と課題を検証しながら進めることをお勧めします。さらに、契約書面でセキュリティや品質管理の要件を厳格に定め、委託先との定期的なコミュニケーションを通じて、常に現状の評価と改善を行う仕組みを整えることが重要です。企業は、業務効率化だけでなく、長期的な成長戦略の一環として委託契約を捉え、柔軟な体制変革に積極的に挑戦していただきたいと思います。

専門家まとめコメント

委託契約へのシフトは、従来の指揮命令体制が抱える管理負荷や品質のばらつきといった課題を解決する非常に有力な手段です。段階的な導入、厳格なセキュリティ対策、そして成果物に基づく評価体制の確立が成功の鍵となります。企業は、この新たな働き方を取り入れることで、業務効率と柔軟性を大幅に向上させ、将来的な市場変化にも迅速に対応できる体制を構築できると確信しています。

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