〈業務委託の落とし穴〉
なぜその業務はうまく回らないのか?
業務委託を成功させる6つのポイント

業務委託は、多くの企業にとって「業務効率化」「コスト削減」「業務品質の向上」を実現するための効果的な手段として期待されています。しかし、実際に業務委託をスタートすると、期待通りの成果が得られず、むしろ負担が増え、業務がうまく立ち上がらないといった悩みがよく聞かれます。

たとえば、ある企業では、業務委託により管理工数を30%削減する予定でしたが、実際にはSVの配置ミスによりかえって管理工数が40%も増加してしまったというケースがあります。

また別の企業では、業務委託後も正社員が連日のフォローアップに追われ、業務効率が改善どころか逆に低下するなど、深刻な事例も報告されています。

今回は、こうした失敗例を踏まえて、同じような問題で悩んでいる企業、またはこれから業務委託を検討している企業向けに、アデコ株式会社OSデリバリー事業部長の久田氏にその原因と具体的な対策を詳しく伺いました。

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業務委託が失敗する主な原因とは?

――正社員がコア業務に集中できるよう、ノンコア業務を業務委託するというケースが多くあると思います。しかし、せっかく業務委託したにもかかわらず前よりも正社員の手が取られてしまうという失敗ケースがあるようです。それはなぜ起こるのでしょうか?

アデコ 久田氏:業務委託がうまく進まない原因は複数あります。具体的には、

  • 業務プロセスの引き継ぎが不十分で社員のフォローが続くケース
  • 人材供給が不安定で業務品質が安定しないケース
  • コミュニケーション不足で成果物が意図と乖離するケース

などが挙げられます。

しかし、結局は現場を指揮するスーパーバイザー(SV)のパフォーマンスや運営体制に問題があるケースが大半です。例えば、SVが業務改善や課題抽出、解決といった本来の役割を果たせず、社員が頻繁に介入を余儀なくされる悲惨なケースもあります。
また、SV自身が業務に追われてクライアントへの改善提案ができず、業務が停滞するケース、スタッフが頻繁に入退職を繰り返しSVが疲弊して離職し、現場が崩壊するケースなどもあります。
このように、SVの質と運営体制が整わない限り、業務委託の成功は非常に難しいと言えます。

アデコ 久田氏

――なぜSVが重要な要素なのにそのような事が起きてしまうのでしょうか?

アデコ 久田氏:いくつかあるのですがSVの本来の役割が理解されていないケースが多いです。業務委託会社の中には、SVを単なる現場監督と捉え、管理やトラブル対応にしか期待していないことがあります。しかし、本来SVは現場運営を通じて業務改善や課題の抽出・解決提案を担うべき存在です。
また、SV自身のスキルや経験不足も問題です。適切な育成がされていないため、改善提案ができず、結局は社員がフォローする形になり、負担が増える。これでは本来の業務委託の意義が損なわれてしまいます。

このような問題が多い背景には、次のような業界特有の事情や構造的な問題があります。

1コスト競争に陥りがちな業界構造
BPO業界は競争が激しく、「安さ」で選ばれる傾向があります。価格競争に巻き込まれると、SVを教育・育成するための研修費や人材育成費を削減しがちになり、その結果SVの質が低下し、「単なる作業監督者」として配置せざるを得なくなります。
2SVの本来の役割が顧客に伝わりにくい
クライアント企業側がSVの役割を理解できておらず、業務委託会社側もその理解を促す努力を怠っていることがあります。委託会社側がクライアント企業に対してSVを業務改善や提案者として位置づける説明を行わないため、最終的に現場の管理のみがSVの業務になってしまうのです。
3業務委託会社自体に専門性やノウハウが不足している
業務委託会社自身に業務改善やプロセス改善などの専門性が不足している場合があります。こうした企業は、業務の根本的な改善ができず、SVにもそれを求められないため、改善提案が行われないままオペレーションのみに特化した運営となります。
4SV人材の採用・育成に対する意識の低さ
SV人材の採用や育成に対する意識が低く、短期的な採用(契約社員等)や派遣的な運営に終始している企業も多くあります。結果として、SVを育成する仕組みや専門部署がなく、SVは必要最低限の監督業務だけを担当することになります。

こういった構造的な問題を認識し、委託会社選定の際には特にSVの質や業務改善の実績を重視することが重要です。

業務委託業界における課題

業務委託成功のための6つのポイント

――では、業務委託を成功させるポイントもしくは秘訣などあるのでしょうか?

アデコ 久田氏:はい、ウルトラCのような事はありませんが、SVが非常に重要であると説明をしましたのでその軸でお話をさせていただきますと以下6つのポイントは非常に重要だと考えます。

1業務特性に合ったSVの選定と配置
業務にはそれぞれ特性があります。特性を理解し、その業務に最適な能力と経験を持つSVを配置することが重要です。
業務特性に合ったSVの確保ができない場合SVの業務理解が不十分で、指示が曖昧になったり、適切な指導が行われず業務が混乱する可能性があります。結果的に品質低下やコスト増につながります。
2 SVの役割を明確にする
SVは単なる現場オペレーターではなく、業務改善や改革の推進者として役割を明確に定義する必要があります。
SVの役割を明確にしない場合、SVが現場オペレーションに忙殺され、本来の業務改善や課題抽出が進まず、問題が放置され続けます。業務の非効率性が慢性化し、改善が難しくなります。
3安定したスタッフ供給能力
スタッフの頻繁な入退職はSVの負担を増やし業務品質を低下させます。スタッフの安定供給ができる委託会社を選定することが重要です。
スタッフの安定供給ができない場合、スタッフが頻繁に入れ替わることで、SVが常に新人教育に追われ、本来の役割を果たせずに現場が疲弊します。業務品質が安定せず、トラブルが多発します。
4SVへの専門部署による支援体制
DXや専門的な技術支援を提供できる専門部署がSVをサポートする仕組みが整っていることが重要です。
SVへの専門部署の支援がない場合、高度な専門知識や技術支援を必要とする場面でSVが対応できず、業務が停滞するだけでなく、クライアント企業の信用や信頼を失う可能性があります。
5第三者部署による品質評価体制
委託会社の窓口が営業担当者だけでなく、第三者による客観的な品質評価と監査体制を整備している委託会社を選ぶべきです。
第三者による品質評価がない場合、業務の状況が営業担当者の報告に依存し、実態が隠されたり改善が進まなくなります。問題が表面化した時には手遅れとなるケースもあります。
6SVへの組織的なサポート体制
SVが孤立しないよう組織的にサポートできる体制があれば、業務品質の安定化につながります。
SVへの組織的なサポート体制がなく、現場任せにしている場合、SVが孤立し、業務上のプレッシャーや負担に耐えられず、休職や離職を引き起こすリスクが高まります。その結果、現場が混乱し業務が滞留して履行できなくなります。

これらのポイントをしっかり理解し実行すれば、業務委託を成功させ、本来の目的である効率化やコスト削減を実現できると考えます。

業務委託先を選ぶ際のチェックポイント

――それでは今後業務委託を考えている企業はどのようなBPO・アウトソーシング企業を選ぶべきでしょうか?

アデコ 久田氏:こちらは先ほどの6つのポイントと重複する部分もありますが、いくつか説明いたします。

1実績が豊富で信頼できること
特に自社業務に類似した案件の実績を多数持っている委託会社を選ぶことで、安心して業務を任せることができます。
2安定した人材供給力があること
業務委託の安定性はスタッフの安定供給に依存します。常時多数のスタッフを抱えている委託会社を選ぶことで、安定運用が可能です。
3コスト削減以外の価値を提案できること
単なるコスト削減だけを強調する委託会社は、品質面でリスクが伴います。適正な投資を促す委託会社は長期的な業務品質向上に寄与します。
4SVの教育制度や研修体制が充実していること
SVが継続的に教育・育成されることで、安定した運営と継続的な改善提案が可能になります。
5業務改善提案を積極的に行うこと
委託業務の品質改善や効率化を日常的に提案してくれる委託会社は、業務委託による成果を最大化できます。
6業務の立ち上げや運営時の品質管理が充実していること
業務開始時に発生するトラブルを迅速に解決し、安定運用後も定期的に詳細な運営状況のレポートを提供できる委託会社は、長期的に信頼できます。

まとめ

業務委託を成功させている企業の特徴は、コストを削るところと投資するところのメリハリを明確に持っています。特に重要なのはSVのパフォーマンスと体制であり、ここに適切な投資を行うことで、業務改善や効率化、ひいてはコスト削減が実現できます。これから業務委託を検討する企業はもちろん、すでに業務委託を導入し、思ったような成果が出ていない企業も、改めてSVを中心とした体制の見直しを行うことで、大きく改善される可能性があります。委託会社選定の際は、SVの質やサポート体制に特に注意して慎重に見極めることを強くおすすめします。

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