アデコグループにて人財部門の責任者(イギリス、及びアイルランド)を務めるヘレン・トムリンソンが来日し、日本企業の人的資本経営におけるキャリア自律と従業員エンゲージメントの重要性について語りました。
→対談の全編はこちらからご覧ください。
管理職になりたくないZ世代の若者たち
ヘレンは次世代リーダーの育成において、若いビジネスパーソン達が管理職になることに対し消極的に感じていることが大きな課題であると指摘しました。特にZ世代の女性においてその傾向は明らかに顕著で、自らが管理職として歩むキャリアビジョンに対し極めてネガティブなスタンスであることが調査によって明らかになっています。
この背景には、管理職が「疲れる役割」として認識されていることが影響している、とヘレンは考えています。多くの若者たちは親世代の働き方を見て育ち、そのストレスやワークライフバランスの問題を目の当たりにしてきました。そのため、同じような働き方を避けたいという意識が強くなり、自ずと管理職になることを忌避するようになっているようです。ヘレン自身も、休暇中にメールをチェックし続けることで、チームメンバーに同じ働き方を期待させてしまうリスクに気づき、今では意識的にそれを避ける努力をしていると述べています。
思いがけないキャリアに踏み出すためには、組織の支援が不可欠
ヘレンは1995年以来、人事採用や営業といった職務を中心にキャリアを築いてまいりました。しかしながら現在は「女性活躍」や「雇用問題」「D&I」といった領域において、新しい役割を担っています。これは本人にとって、コロナ禍の影響を受けた予想外のキャリア変容でもありましたが、自身のキャリアを異なる方向に進める機会として前向きに捉えました。そして、このような変化には「組織の支援」が不可欠であると述べています。
例えば、本人が予想していない新たな可能性に魅力を感じてもらうためには、従業員が自分のキャリアについてオープンに話し合える環境を整えることが重要であると語っています。ヨーロッパの企業では、従業員のキャリア開発に重きを置く企業が多く、様々なサポートや独自の仕組みが走っています。そのひとつが、イギリスの企業においてポピュラーな仕組みである「能力フレームワーク」です。
イギリス企業の手法に学ぶ、従業員に対するキャリアマインドの育み方
「能力フレームワーク」とは、組織内の「役職」や「報酬パッケージ」、その役職を目指す上で必要となる「スキル/レベル」を、入社段階から確認できるように可視化するものです。このフレームワークを設置することで、従業員は自らの成長に対し明確な道筋を描くことができるようになり、キャリア意識の醸成やモチベーションの向上を大いに促進させるものとなっています。
企業と従業員のエンゲージメントを強固にするリーダーの姿
従業員エンゲージメントの向上も「人的資本経営」において欠かせない要素です。例えばヘレンはチームメンバーと、本人の未来に関する対話を積極的に行っています。たとえ本人の描いた未来が現在の延長線上に無くても、共に前向きに考え続けることで、キャリア開発を促すことができると信じているためです。
直属の上司は従業員が望む未来を実現するためのタレントパートナーであり、部門全体が本人のスキルを向上させる責任を負っています。従業員とのエンゲージメントが無ければ、他のどんな人事施策も有効に展開することはできず、従業員との関係構築こそがすべての基盤である、とヘレンは指摘しています。
人的資本経営が描く、日本企業の未来
キャリア自律の促進やエンゲージメントの向上を実現する「人的資本経営」の促進は、企業が持続的に成長し、競争力を維持するための鍵です。従業員を価値ある「資本」として捉え、本人の成長と機会提供にコミットし続ける。これこそが優秀な人財を惹き付けるための大きなヒントであり、ヨーロッパ企業のみならず日本企業における経営の最重要項目のひとつなっております。
いかがでしたか。ヨーロッパの事例のみならず、国内外ありとあらゆる事例は、人的資本経営推進のヒントになるのではないでしょうか。順調なスタートを切った日本の人的資本経営は、今まさに新たな局面を迎えています。アデコはグローバルに広がるネットワークを生かしながら、皆様との情報交換を通じ、共に進化していきたいと考えております。
(左から)
◆吉水文哲:アデコ株式会社 コンサルティング部 人的資本グループ シニアマネージャー
◆ヘレン・トムリンソン:(プロフィールは下欄参照)
◆古河原久美:アデコ株式会社 コンサルティング部 部長
◆山本祐一:アデコ株式会社 コンサルティング部 人的資本グループ グループ長
■ヘレン・トムリンソン(Helen Tomlinson) プロフィール
・Head of Talent Development The Adecco Group UK & Ireland
・英国政府更年期雇用チャンピオン(イギリス政府によって任命され、更年期を迎えた女性の雇用環境を改善する役職です。主な役割は、更年期の女性を支援する政策提言、教育と啓発活動、企業との連携を通じて、働きやすい職場環境の構築などです。2023年、へレン・トムリンソンは初代更年期雇用チャンピオンに任命されました。)
ヘレン・トムリンソンは、英国政府初の更年期チャンピオンです。労働年金省と協力し、更年期を迎える女性が仕事を続けキャリアを進展させるための施策を、雇用主が策定する支援をしています。教育とアライシップの原則を適用し文化的変革を促進し、女性の健康の観点からキャリア全体にわたるインターセクショナリティのすべての側面をサポートするための戦略を構築しました。
ジェンダー平等を推進することは、ヘレンの30年にわたる採用と雇用能力セクターでのキャリアを通じた一貫したテーマです。ボランティアでの更年期チャンピオンの役割に加え、アデコクループにて人財およびインクルージョン部門の責任者(英国およびアイルランド)を担っています。更年期と仕事に関する彼女のポッドキャストは、アデコグループに英国初の企業更年期ポリシーの設計と実施を促しました。
以来、様々な規模の企業が支援的な環境を作り、オープンな対話を促進させ、更年期を迎えた女性達による職場における成功を支援しています。マネジメント、営業、戦略的人事計画という30年の経験を持つヘレンは、ビジネス上の利点を組織に認識させ、雇用主とその従業員に対して前向きで実践的な変革の推進に取り組んでおります。
アデコが提供する「人的資本経営コンサルティング」
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