メンバーズCHRO 武田雅子氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏
今、「人的資本経営」が急速な広がりを見せています。この連載企画では、人的資本経営を牽引する業界のトップリーダーにスポットを当て、その実態に迫ります。
第三回目となる今回のゲストは、株式会社クレディセゾン様、カルビー株式会社様、株式会社メンバーズ様にて人事トップを歴任されてきた武田雅子氏。CHROとしての振る舞い、そして人的資本経営に対する考え方、そして今後の展望について、法政大学の田中研之輔教授と共に紐解きます。
CHROとして、社員からは「話しかけやすい人」でありたい。
田中研之輔(以下田中):クレディセゾン、カルビー、メンバーズと、文化の違う3社で人事トップを歴任されてきた武田さんですが、 改めてCHROってどのように振舞ったら良いのでしょうか? ボードメンバーとしての振る舞いはイメージできますが、現場の社員と触れ合わなければいけない。その時の作法はどのようなものなのでしょう?
武田雅子(以下武田):そうですね。一言で言えば「話しかけやすい人」。CHROは誰よりも社員のことを分かっていなければなりませんから。私自身、100%常にそのように振舞えているかはわかりませんけど、基本はいつも「ねえねえ」と社員から声をかけてもらえる人になれたらいいなと思っています。
田中:やはり親しみやすい存在になることが大切なのですね。例えばどんなことを心がけているのですか?
武田:もちろんたくさん社員がいらっしゃいますので、顔と名前が一致しないこともあります。それでも、こちらから話しかけてしまいますね。雑談から、色々な話を伺ったり。きっと偉いとかあまり思われていないので、話しかけやすいのでしょうね。
田中:私にとっても、非常に話しかけやすいです。そういう方がCHROにいらっしゃるから、組織が変わっていくのですね。
優秀なCHROは、全社発信のチャネルの使い方が巧いですよね。
田中:カルビー様でもされていたように、メンバーズ様に行かれた際にも社員との1on1は行われましたか?
武田:はい、行いました。何よりも現場の話を聞くことが基本ですから。最初にまとめて行ったのは200名くらいでしょうか。もちろん今も続けています。メンバーズは若い方が多く、私も全社向けの動画配信でキャリアのことについて発信をすることがあります。面白いのはそれを見た社員から「1on1してもらっていいですか?」とチャットが届くのです。私も時間が空いていれば「いいですよ」といって、話が始まる。
田中:武田さんのメッセージや想いは、従業員に対してどのように届けているのですか?
武田:一番多いのは社内のイントラサイトでしょうか。その時の人事の戦略や、全社キックオフの一部、またはキャリアの話など、その時々に応じて色々な話題を発信しています。短いものであれば1分くらいのものもあるでしょうか。
田中:経営層や人事のトップは、人的資本経営が歴史的転換だと気付いていて、「やるぞ」となっています。しかし、多く相談を受けるのが、「どうやって社員に伝えていこうか」ということ。例えばメールもじっくり読んでくれない、動画も見てくれない。従業員の人数が多いほど、本当に響いていかないという悩みを聞くことがあります。しかし逆にうまくいっているCHROは、そのチャネルの使い方が巧い。今武田さんがおっしゃったように、ショートの動画で視聴負担をかけないで届けるというのも、効果的なやり方ですよね。
武田雅子氏 プロフィール
株式会社メンバーズ 専務執行役員CHRO
1989年にクレディセゾン入社。全国のセゾンカウンターで店舗責任者を経験後、営業推進部トレーニング課にて、現場の教育指導を手がける。その後、戦略人事部において人材開発などに関わり、2014年人事担当取締役に就任。2016年には営業推進事業部トップとして、大幅な組織改革を推進する。2018年5月、カルビーに入社。全員が活躍する組織の実現に向けて、人事制度・施策改革に取り組んだ。2023年3月より株式会社メンバーズにて、専務執行役員CHROを務める。
田中研之輔氏 プロフィール
博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書32冊・社外顧問 35社歴任
<著作リスト・一部>
『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
※『グロース・マネジャー』(2024 刊行予定)
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今回は、大東建託株式会社の代表取締役社長・竹内啓氏。2023年に制定した「託すをつなぎ、未来をひらく。」というグループ・パーパスに込められた想い、そして人的資本経営に対する考え方を、法政大学教授の田中研之輔氏と共に紐解きます。
※本内容は、2024年9月時点の取材にもとづき掲載しています。