【連載企画】人的資本経営トップ対談 #4
「従業員のキャリア自律がドライブする『マネジメント改革最前線』」

ヤマト運輸常務執行役員 石井雅之氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏

今、「人的資本経営」が急速な広がりを見せています。この連載企画では、人的資本経営を牽引する業界のトップリーダーにスポットを当て、その実態に迫ります。

第四回目となる今回のゲストは、株式会社ブリヂストン様、ヤマト運輸株式会社様にて人事トップを歴任されてきた石井雅之氏。グローバルな視座でマネジメントと向き合ってきた石井氏が、まさに今挑んでいる組織改革へのアプローチとは? そして人的資本経営に対する考え方とは? 法政大学の田中研之輔教授と共に紐解きます。

ヤマト運輸常務執行役員 石井雅之氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏

「制度」の問題なのか、「運用」の問題なのか。課題感の本質を見極めることからはじまる。

田中研之輔氏(以下田中氏):私が人的資本経営において、ブレイクスルーのポイントになると感じていることがあります。それは優秀なキーマンが他の業界からバーンと飛び込み、企業人事のトップに入ること。まさにそれを体現された石井さんにまず伺いたいのは、そのような立場で着任された場合はたして一体何から着手すべきなのでしょうか?

石井雅之氏(以下石井氏):最初の1~2ヶ月でやったことは、まずは何よりも周りにいる人事の仲間に対し徹底的に質問をしました。例えば制度のこと、運用のこと。それらがどこで決定され、どういった展開をしているのか。周囲の管理職を中心に、少なくとも30人にはしっかりと話を伺ったと思います。

田中氏:徹底的にお話を聞く。やはりそれがすごく重要ですよね。そこから、どんなことが浮かんできたのでしょうか?

石井氏:やはり、人材に対するマネジメントの考え方。これがまだまだブラッシュアップできるのでは感じました。

田中氏:石井さんは、ここからまさに企業の文化を変えていくための動きに着手されるわけですが、これは相当ハードなことだとも思います。どのように挑んでおられるのでしょうか?

石井氏:今も取り組んでいる最中ではありますが、まずは私が感じる課題感を「制度の問題」なのか「運用の問題」なのかという区分で整理をしました。特に運用の問題であるならば、なぜその運用となっているのか、その背景を掘り下げるべくさらにたくさんの人に話を聞きます。そしてそれを変えるためには誰に何のアプローチをしなければいけないのかを、明らかにしていきました。そして最終的に考えたのが、やはり「方針」を出すことが最重要であるということでした。

石井雅之氏 プロフィール

ヤマト運輸株式会社
常務執行役員 人事/人材開発 統括
1988年に株式会社ブリヂストンに入社。本社、工場、技術センター勤務後、アメリカ、スペイン、ベルギーの各事業法人で人事・労務を担当。
帰国後、本社でグローバル人事・人材開発、経営企画、コーポレートコミュニケーション、リスク管理、海外事業管理などを担当。
2022年10月にヤマト運輸に入社。

田中研之輔氏 プロフィール

博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書32冊・社外顧問 35社歴任

<著作リスト・一部>

『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
※『グロース・マネジャー』(2024 刊行予定)

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※本内容は、2024年9月時点の取材にもとづき掲載しています。

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