アクサ・ホールディングス・ジャパンCEO 安渕聖司氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏
今、「人的資本経営」が急速な広がりを見せています。この連載企画では、人的資本経営を牽引する業界のトップリーダーにスポットを当て、その実態に迫ります。
第五回目となる今回のゲストは、GEキャピタル・ジャパン社長兼CEOを経て、Visaの日本代表、アクサ・ホールディングス・ジャパン様、およびアクサ生命保険様にて代表取締役社長兼CEOを務められている安渕聖司氏。同社が推進する最先端の健康経営がもたらす、世界基準のリーダーシップとは? 法政大学の田中研之輔教授と共に紐解きます。

「人的資本経営」はCHROだけの仕事ではない。
田中研之輔氏(以下田中氏):社員を活性化させたいと、どの経営者も考えていると思います。安渕さんにとって、特に効果があると手応えを感じているメソッドは何ですか?
安渕聖司氏(以下安渕氏):何よりもまず、それぞれの人の能力を上司がしっかりと見ていることです。そしてそれを伸ばそうという努力をしてくれることなんですよね。どこが強いかを見定めて、しっかりフィードバックも行って。その上で、これからさらに幅を広げるのであれば、こんな仕事はどうかと提案を行う。そういったキャリアの相談を会社の中でしっかり自由にできることが大切だと思うんですよ。
田中氏:安渕さんは、それを1on1でやっておられる?
安渕氏:やはり「成長×貢献」の軸をどれだけ最大化できるかということを、上司および周りがしっかりサポートしていく。
田中氏:1on1の最中の理想の配分はどのくらいですか?
安渕氏:例えば私が上司だと、私が喋るのが2割、相手が8割です。聴くスキルがすごく大事で、話ってニュアンスがあるじゃないですか。話している最中に「どこまで聞いていいかな」と考えながら話すことが大事。議題はこちらから設けず、相手の話したいことを話していただくようにしています。

田中氏:今のお話は、キャリア開発領域でいうところのコーチングの視点という最先端の知見が入っていると思います。今のいわゆるCEOクラスの方で、その知見が入っている方って珍しいですよね。
安渕氏:日本の問題点は、人材とか人的資本経営が「CHRO」だけの仕事だと思っている人が多いということです。
田中氏:そうですね、それは問題ですよね。「CHRO」だけじゃない、「CEO」の仕事でもあると。
安渕聖司氏 プロフィール
アクサ・ホールディングス・ジャパン株式会社 代表取締役社長兼CEO
三菱商事、リップルウッド・ジャパン、UBS証券投資銀行本部を経て、2006年、GEに入社。GEキャピタル・ジャパン社長兼CEOを経て、2017年よりVisaの日本代表、2019年より、保険のグローバル・ブランドであるAXAに移り、アクサ・ホールディングス・ジャパン(株)およびアクサ生命保険(株)代表取締役社長兼CEOに就任。 著書『GE世界基準の仕事術』(新潮社, 2014)、『GEの口ぐせ』(PHP研究所, 2015) 経済同友会幹事。(一財)KIBOW評議員。学校法人至善館理事、(公財)茂木本家教育文化財団理事、(一社)ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事、UWC-ISAKジャパン・ファウンダー。熱心な歌舞伎、文楽ファン。 早稲田大学政経学部卒、ハーバードビジネススクールMBA。
田中研之輔氏 プロフィール
博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書32冊・社外顧問 35社歴任
<著作リスト・一部>
『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
※『グロース・マネジャー』(2024 刊行予定)
アデコが提供する「人的資本経営コンサルティング」
持続可能な企業経営を目指し、人的資本経営の導入を検討されている企業担当者様におすすめのサービスが、アデコの「人的資本経営コンサルティング」です。
人事方針策定/KPI策定~施策推進・システム基盤整備+開示戦略まで、組織の持続可能な成長を支える人的資本経営をご支援します。
*課題や傾向、メソッドなど、ノウハウが詰まった資料を無料でダウンロードいただけます。
あわせて読みたい
人的資本経営トップ対談 #1
「外資人事部門のトップが仕掛けた マネージャー躍動化計画」
あわせて読みたい
人的資本経営トップ対談 #2
「ヒトにこだわる『新・人的資本戦略』」
今回は、大東建託株式会社の代表取締役社長・竹内啓氏。2023年に制定した「託すをつなぎ、未来をひらく。」というグループ・パーパスに込められた想い、そして人的資本経営に対する考え方を、法政大学教授の田中研之輔氏と共に紐解きます。
あわせて読みたい
人的資本経営トップ対談 #3
「プロCHROが仕掛けた『現場型』人的資本戦略」
今回は、株式会社クレディセゾン様、カルビー株式会社様、株式会社メンバーズ様にて人事トップを歴任されてきた武田雅子氏。CHROとしての振る舞い、そして人的資本経営に対する考え方、そして今後の展望について、法政大学の田中研之輔教授と共に紐解きます。
あわせて読みたい
人的資本経営トップ対談 #4
従業員のキャリア自律がドライブする『マネジメント改革最前線』
※本内容は、2024年10月時点の取材にもとづき掲載しています。