日本電気株式会社 CHRO 堀川大介氏 × 法政大学教授 田中研之輔氏
今、「人的資本経営」が急速な広がりを見せています。この連載企画では、人的資本経営を牽引する業界のトップリーダーにスポットを当て、その実態に迫ります。
第7回目となる今回のゲストは、NEC様にてCHROを務められている堀川大介氏。エンゲージメントスコアと業績を同時に伸長させ続けている同社の改革について、法政大学の田中研之輔教授と共に紐解きます。

「社員自身がどう変われるか。」これがひとつの大きなチャレンジ。
田中研之輔氏(以下田中氏):キャリア自律と事業グロースの相関。ここの証明には色々な解釈がありますよね。堀川さんはここのリンクをどう捉えていますか?
堀川大介氏(以下堀川氏):2018年当時から、まさにエンゲージメントスコアをベースに施策を打ってきました。スコアは順調に伸長し、当時と比較すると今では2倍以上となっています。同時に営業損益は3倍、株価も3倍になっている。エンゲージメントスコアの伸びと同時に業績が上がったということは、結果論かもしれませんが事実です。

田中氏:125周年の記念すべき年に最高益を出せるのは、本当にすばらしいことですよね。私の考えとしても、エンゲージメントの向上は事業貢献に必ず結びつくと思っています。
堀川氏:ありがとうございます。ただ、次のフェーズを見据えたとき、これで喜んでいる場合ではないとも思っています。これまでエンゲージメントドリブンで結果を出してきましたが、ここから先はまだ別の課題が見えております。先ほど「事業戦略」と「人事戦略」をいかに連動させるか、「適時・適所・適材」が重要であると申し上げましたが、これはあくまで会社都合の話なんですよね。

田中氏:ぜひ詳しく教えてください。
堀川氏:社員の目線に立てば、また違った景色も見えてきます。社員は、自らのキャリアのために会社を選ぶ権利があります。例えばジョブ型を推進する上で、自らのキャリアを成長させるだけのポジションがきちんとNECの中にあるかどうか。さらにそれを選べる環境があるか。そして、社員が違うジョブにチャレンジする時に、会社がきちんとサポートしてくれるのか。こうしたことを含めしっかりと環境支援を行っていかなければ、やはり社員は離れていってしまうと思うんです。そのための色々な仕組みは整えておりますが、「社員自身がどう変われるか」が、ひとつの大きなチャレンジだと考えています。
堀川大介氏 プロフィール
日本電気株式会社(NEC)
執行役 Corporate EVP 兼 CHRO 兼 ピープル&カルチャー部門長
- 1992年4月……日本電気株式会社 入社
- 2015年4月……パブリック企画本部長
- 2017年4月……社会基盤企画本部長
- 2020年4月……執行役員、NECマネジメントパートナー株式会社代表取締役執行役員社長
- 2023年4月……Corporate EVP 兼 CHRO
- 2023年6月……執行役 Corporate EVP 兼 CHRO、現在に至る。
田中研之輔氏 プロフィール
博士号 専門:キャリア開発 組織アナリスト
株式会社 キャリアナレッジ 代表取締役社長
一般社団法人 プロティアン・キャリア協会 代表理事
法政大学キャリアデザイン学部 教授
UC.Berkeley 元客員研究員/Melbourne University 元客員研究員
日本学術振興会 元特別研究員(PD:一橋大学/SPD:東京大学)
著書36冊・社外顧問 36社歴任
<著作リスト・一部>
『プロティアンシフト』(2023.5)
『社員がやる気をなくす瞬間』(2022.12)
『人的資本の活かしかた』(2022.8)
『キャリアワークアウト』(2022.7)
『今すぐ転職を考えてない人のためのキャリア戦略』(2022.4)
『新しいキャリアの見つけ方』(2022.1)
『プロティアン教育ー三田国際学園のキャリアエスノグラフィ』(2021.11)
『ビジトレー今日から始めるミドルシニアのキャリア開発』(2020.6)
『プロティアンー70歳まで第一線で働き続ける最強のキャリア資本論』(2019.8)
『教授だから知っている大学入試のトリセツ』(2019.3)
『辞める研修 辞めない研修ー新人育成の組織エスノグラフィー』(2019.3)
『先生は教えてくれない就活のトリセツ』(2018.7)
『ルポ 不法移民ーアメリカ国境を越えた男たち』(2017.7)
『実践するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『進化するキャリアオーナーシップ』(2024.3)
『キャリア・スタディーズ -これからの働き方と生き方の教科書』(2024.9)
※『これからのキャリア開拓』(2025 刊行予定)
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※本内容は、2024年12月時点の取材にもとづき掲載しています。