2015年の派遣法改正で派遣元に派遣社員の教育訓練が義務付けられたそうですが、これに関して派遣先が気をつけなければならないことはありますか。
派遣元が実施する段階的かつ体系的な教育訓練に関して、派遣先に努力義務を課しています。派遣先指針第2の9(3)に次のように定められています。
「派遣元事業主が派遣労働者に対し段階的かつ教育訓練を実施するに当たって、求めがあったときは、派遣元事業主と協議等を行い、当該派遣労働者が当該教育訓練を受けられるよう可能な限り協力するほか、必要に応じた教育訓練に係る便宜を図るよう努めなければならない。」
派遣元は、雇用するすべての派遣社員に対し、段階的な教育訓練を実施することが義務付けられています。特に入社から3年間は、フルタイム勤務の派遣社員一人につき8時間以上となる教育訓練計画を実施していくことが求められ、入職時訓練は必須となっています。この教育訓練は派遣社員に費用負担を求めず無償で実施し、かつ教育訓練の時間は労働時間として扱い、賃金を支給しなければならないものです。さらに実施状況についても毎年の報告が義務付けられている派遣元に厳しい制度となっています。
教育訓練の実施方法は、多くの派遣元で集合研修だけではなくeラーニングを活用し派遣就業の妨げにならないよう工夫をしていますが、研修が派遣就業時間と重なってしまった場合は、可能な限りご協力ください。
POINT
質の高い派遣元を選ぶ基準のひとつとして優良派遣事業者認定制度があります。教育訓練制度を含めた厳しい認定基準をクリアした派遣元しか認定を受けられないので選定基準の一つになりうると思います。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。