育児や介護の必要に応じて在宅勤務制度の導入を検討していますが、労働時間管理はどのように行えばよいのでしょうか。
出社した場合と同じ始業・就業時刻で勤務可能であれば一番よいのですが、会社が勤務時間を把握することは困難かつ仕事と生活が混在することがあり、通常の時間管理ができないことが多いため、事業場外労働に関するみなし労働時間制を導入することがあります。この制度は、労働時間の全部または一部を社外(自宅)で過ごし、具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難である場合、あらかじめ就業規則や労使協定で定めた時間を勤務したとみなす制度です。ただし、パソコン、携帯電話など情報通信機器により随時指示を受け、情報通信機器から自由に離れることができない場合は適用できません。適用できない場合は、フレックスタイム制を導入する方法もあります。みなし労働時間制と異なり勤務時間の記録は必要ですが始業・終業、休憩時刻を自由に設定できるメリットがあります。
みなし労働時間制、フレックスタイム制のどちらを導入しても時間外労働、深夜労働の割増賃金の支払い義務はそのまま残ります。みなし労働時間制の1日の労働時間を9時間とする場合は、毎日1時間の時間外労働をすることになるので、割増賃金を支払わなければなりません。就業時間が夜10時~翌朝5時の深夜帯に行われるのであれば深夜労働の割増賃金が生じます。休日労働も同様に割増賃金の支払が必要となります。就業規則等で深夜、休日に就業する場合は事前に申請、事後にその実績を報告し承認を受けるといった手続きを定めておくことをおすすめします。もちろん、業務量が多く必然的に作業時間が深夜に及んでしまった場合に事前申請がないことを理由に深夜労働がなかったことにすることはできませんが、家庭の都合で深夜に業務を行わざるを得ないケースについては、深夜労働として承認せず、通常の労働時間と算定することも考えられ、労使間のトラブルの原因になってしまうかもしれません。自由な勤務形態とはいえ、事前に就業ルールを定め周知しておかなければなりません。
POINT過重労働に十分に注意しましょう
在宅勤務は会社から勤務実態が見えにくいので労働時間の過少申告があっても発覚しにくいという欠点があります。日々の勤務報告やサーバーへのログイン状況等も参考にしながら可能な限り実態を把握し、過重労働の防止に努める必要があります。
派遣社員を在宅勤務に切り替えるには?
必要な手続きと注意点を解説
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐねらいから、在宅勤務が広がっています。政府も自社の社員だけではなく、派遣社員も在宅勤務ができるよう対応を求めています。派遣社員を在宅勤務に切り替える場合の、必要となる契約などの手続きや環境面での気をつけるべき点について解説します。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。