Q12 派遣先の賃金情報の提供配慮義務

2015年派遣法改正により派遣先の同種の業務に従事している労働者の賃金水準の情報提供が、努力義務から配慮義務に改正されましたが、具体的にどのような情報を提供するのでしょうか。

派遣元は、派遣社員の賃金決定の際、派遣法第30条の3により派遣社員の従事する業務と同種の業務に従事する派遣先の労働者の賃金水準との均衡を考慮しつつ、同種の業務に従事する一般の労働者の賃金水準、職務内容等を勘案し、派遣社員の賃金を決定するよう配慮することが定められています。派遣先に賃金水準がわからないと、派遣先との均衡を考慮できないので、派遣法第40条で派遣先は派遣元の求めに応じ、賃金水準に関する情報を提供するよう配慮することが求められています。

提供する同種の業務に従事する派遣先労働者の賃金水準ですが、まず同種の業務とは、派遣先労働者と一緒のチームで働く場合、そのチームが同種の業務になります。また、職業分類の細分類項目を参考に同種の業務を判断することも妥当です。次に賃金水準は、基本給だけではなく諸手当も含まれると考えられています。そのため、同種の業務に従事する派遣先の労働者の給与明細を提示することで足りますが、派遣先としてはそのような情報を社外に提供することに大きな抵抗があると思います。そのような場合は、以下の2つの情報どちらかでも良いとされています。

  1. 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種(雇用グループ)について求人情報を公表したことがある場合にはその情報
  2. 派遣先において同種の業務に従事する労働者が属する職種(雇用グループ)に係る一般的な賃金相場(業界における平均賃金等)

派遣社員の従事する職務は、契約社員と同じであるということであれば、契約社員を募集した際の賃金水準を提供すればよく、派遣先の業界における相場でもよいということになります。

POINT努力義務と配慮義務の違い

賃金情報の提供は、2015年改正以前は努力義務だったため、実施の程度、取り組み方等は派遣先の判断に委ねられ、努力の結果、情報提供が行われなかったとしても問題になることはありませんでした。改正により配慮義務となったことで何らかの措置を講じることを検討、実施することが求められています。配慮義務違反は都道府県労働局の助言・指導の対象となります。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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