当社では、65歳までの雇用確保措置として定年後は1年契約の有期雇用で再雇用していますが、技能継承が上手くいかず65歳を超えてからもあと数年勤務してもらいたい社員がいます。このような場合にも労働契約法の5年超で無期転換は適用されるのでしょうか。
労働契約法の改正により、2013年4月から「無期転換ルール」が施行されています。同一使用者との有期労働契約が5年を超えて繰り返し更新された場合、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換するという制度で、2018年4月以降無期転換権を持つ雇用労働者が登場します。有期労働契約の濫用的な利用を抑制し、労働者の雇用の安定を図ることを目的として定められたものですが、改正当初から、定年後の再雇用における有期労働契約にも同様に無期転換申込権が発生することへの違和感があったため、例外として「有期雇用特別措置法」を制定し、以下の①、②の労働者については特性に応じた雇用管理を行うことを条件に特例として無期転換申込権が発生しないことになりました。
- ①専門的知識等を有する有期雇用労働者(高度専門職)
- ②定年に達した後、引き続いて雇用される有期雇用労働者
ご質問の継続雇用の高齢者が特例対象者になるには「事業主が適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けていること」「労働者が定年に達した後、引き続いて雇用されていること」の2つの条件を満たすことが必要です。
認定を受けるためには「第二種計画認定申請書」を作成し、以下のいずれかの措置を講じて、都道府県労働局に申請する必要があります。
継続雇用高齢者の特性に応じた雇用管理措置の内容
- 1.高年齢者雇用推進者の選任
- 2.職業訓練の実施
- 3.作業施設、方法の改善
- 4.健康管理、安全衛生の配慮
- 5.職域の拡大
- 6.職業能力を評価する仕組み、資格制度、専門職制度等の整備
- 7.職務等の要素を重視する賃金制度の整備
- 8.勤務時間制度の弾力化
次に「引き続いて雇用されていること」という条件ですが、グループ会社での再雇用も含めて、定年に達した者を継続雇用した場合だけを指しています。そのため60歳以後、新たに雇用した場合は対象にならないことに注意が必要です。
POINT指導・助言には真摯な対応を
第二種計画認定の有効期間の定めはないため、一度認定を受ければ変更がない限り届け出は不要ですが、都道府県労働局長は、認定を受けた企業に対し、上記措置の実施状況の報告を求め、必要な指導と助言を行うことができるとされています。この指導・助言に従わない場合は認定を取り消されることもあります。認定が取り消された場合、特例の適用はなくなり、当初の労働契約(定年後継続雇用の開始)から、通算契約期間が5年を超えていれば無期転換申込権が発生します。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。