取引をしている派遣元がまだ派遣の許可を申請せず、特定派遣のままです。取引を続ける上で留意すべきことはあるでしょうか。
2015年労働者派遣法改正により、特定派遣制度は廃止されましたが2018年9月30日までは特別な手続き等することなく、そのまま特定派遣として事業を続けることが認められていました。そのため、取引している派遣元が特定派遣のままであっても2018年9月30日までは派遣を継続してもらっても問題は生じません。また、2018年9月30日までに許可申請が受理されている場合、許可・不許可が決定されるまでは特定派遣を継続することができます。
ただし、特定派遣は派遣元で常用雇用している者だけを派遣する制度であり、通常の派遣元のように非常用雇用の者を派遣することはできません。派遣できる労働者の雇用形態が限定される代わりに、特定派遣は許可申請をする必要がなく、届出だけで派遣事業を行うことができました。そのため、仮に特定派遣の派遣元が本来派遣してはならない非常用労働者を派遣した場合、派遣先は労働契約申し込みみなし制度を適用されることになります。
労働契約申し込みみなし制度は、2015年10月1日から施行されている違法派遣を受け入れた場合の派遣先へのペナルティです。違法派遣状態になった時から、派遣先がそこで就業する派遣社員に対して直接雇用の申し込みをしたとみなす制度です。違法な状態で働く派遣社員が直接雇用を希望した場合は、派遣社員と派遣元が締結している労働契約と同じ内容で派遣先が直接雇用しなければなりません。この制度が適用される違法派遣は以下の場合です。
- ①禁止業務(港湾労働、建設、警備等の業務)に派遣労働者を受け入れる
- ②無許可、無届の派遣元から派遣労働者を受け入れる
- ③派遣受け入れ期間制限(事業所単位、個人単位どちらも)を超えて派遣労働者を受け入れる
- ④偽装請負になっている
特定派遣の派遣元が非常用労働者を派遣することは、特定派遣の届出で認められる範囲を超えているので上記②の無許可派遣となってしまい、労働契約申し込みみなし制度の適用を受けることになります。また、元特定労働者派遣事業者が許可を受けずに派遣事業を継続している場合も上記②無許可派遣に該当します。
POINT許可有無の判断
労働者派遣事業の許可を持つ会社であるか否かの判断は、厚生労働省の派遣会社、職業紹介会社の検索サイト「人材サービス総合サイト」で調べることができます。経過措置として派遣事業が認められている特定労働者派遣事業者も検索することが可能です。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。