受け入れている派遣社員が業務中にケガをした場合、派遣先はどのような手続きを行う必要があるでしょうか。
業務中にケガをした場合、派遣社員は派遣元の労災保険を使用して治療や休業補償を受けることになります。そのため派遣先で労災保険の手続きをとる必要はありません。しかし、まったく何もしなくてもよいものではありません。労災が発生した際の派遣先のやるべきことは以下の手順になります。
1. 派遣元への連絡
派遣元に労災の発生状況を連絡してください。連絡すべき事項は、負傷日時、場所、どのような作業中に、どのような状態で、どのような災害が発生したかです。派遣元は連絡を元に医療機関への提出書類である「療養補償給付たる療養の給付請求書(通称5号用紙)」を作成します。
2. 5号用紙の証明欄記入
派遣社員以外の方が労災で治療を受ける場合は、会社の作成した5号用紙を医療機関にそのまま提出しますが、派遣社員の場合、5号用紙裏面の派遣先証明欄に記名・押印し負傷日時と発生状況を証明した上で派遣社員が医療機関に提出します。
3. 労働者死傷病報告の提出
労災により休業が生じる場合、派遣先、派遣元どちらも「労働者死傷病報告」を労働基準監督署に提出します。派遣先は「労働者死傷病報告」を提出したらそのコピーを派遣元に送付してください。それをもとに派遣元も作成、提出をします。「労働者死傷病報告」に関する派遣労働者特有の事項は以下の通りです。
派遣先 | 派遣元 | |
---|---|---|
提出先 | 派遣先の所轄労基署 | 派遣元の所轄労基署 |
労働保険番号 | 派遣先の番号 | 派遣元の番号 |
事業場名称 | 派遣先の名称 | 派遣元の名称 |
事業場所在地 | 派遣先の所在地 | 派遣元の所在地 |
労働者数 | 派遣先の人数 | 派遣元の人数 |
POINT安全な職場環境作りを
労災保険に基づく補償は派遣元ですが、その災害の原因が安全装置の不備や機械、設備の欠陥による場合、派遣先の安全配慮義務違反が問われることがあります。その場合、慰謝料などの損害を賠償する責任が生ずることになります。安全な職場環境づくりは派遣社員も含めてご検討ください。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。