Q30 過労死等ゼロ緊急対策と企業名公表

2016年12月に発表された過労死等ゼロ緊急対策で違反企業の企業名公表基準が変わるようですが、具体的にどのような変更なのでしょうか。

違法な長時間労働の要件を強化すること、企業幹部に対し呼び出し指導が実施され、全社的な立ち入り調査を実施することが主な変更点です。従来、月100時間超の違法な長時間労働による是正指導が1年間に3事業場で発生すると企業名公表の対象とされてきましたが、新しい制度では次の5種類となります。

  1. 月80時間超の違法長時間労働が、10人以上または4分1以上の労働者に認められる。
  2. 過労による労災支給決定があり、被災者について月80時間超の違法長時間労働が認められる。
  3. 事案の態様が①②と同程度に重大・悪質と認められる。
  4. 月100時間超の違法長時間労働が10人以上または4分1以上の労働者に認められる。
  5. 過労死、過労自殺による労災支給決定があり、被災者について月80時間超の違法長時間労働が認められる。

1年間に①~③により2事業場で指導を受けた場合、企業本社を管轄する労働基準監督署長は企業幹部を呼び出し指導し、その後の改善状況を全社的立ち入り調査で見極めます。ここで改善が行われていないと都道府県労働局長の指導の実施とともに企業名が公表されます。

④⑤が1年間に2事業場で認められる場合、企業幹部への呼び出し指導を経ずに都道府県労働局長の指導、企業名公表が行われます。

POINT違法長時間労働とは

単に月80時間を超える時間外労働ではなく、以下のいずれかの労基法違反が生じている場合を指します。36協定の特別条項で80時間を超過した場合や建設業等の例外で限度基準を超える36協定が締結されている場合は対象になりません。

  1. 36協定で定める限度時間を超えて時間外労働を行わせている(労基法32条違反)
  2. 36協定で定める休日労働の回数を超えて休日労働を行わせている(労基法35条違反)
  3. 時間外、休日労働に対して法定の割増賃金が支払われていない(労基法37条違反)

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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