Q34 派遣社員の労働時間管理の責任

労働基準監督署から長時間労働を是正するよう指導を受けたのですが、受け入れている派遣社員の長時間労働も派遣先の責任で改善しなければならないのでしょうか。

長時間労働の改善は、派遣社員を含めて派遣先が実施しなければなりません。派遣法第44条第2項で労働時間、休憩、休日、時間外及び休日労働に関する労基法の規定は罰則の適用も含めて派遣先が使用者としての責任を負うとされています。

ただし、変形労働時間制に関する労使協定の締結、届出と時間外休日労働に関する労使協定(36協定)の締結、届出は派遣元が行います。派遣先は派遣元の締結した範囲で時間外、休日労働をさせなければ労基法第36条違反となります。派遣先の36協定の範囲内で時間外労働を行っていても派遣社員には派遣元の36協定が適用されるため注意が必要です。特に特別条項により労働時間を延長する際は、特別条項を発動する場合の手続きが労使協定で定められているので事前に派遣元に特別条項を利用する旨を通知して派遣元に必要な手続きを取ってもらわなければなりません。適正な手続きを取らずに特別条項による延長を行うと派遣先が労基法第36条に違反したことになってしまいます。

労働時間管理に関しては主に派遣先の責任となっているため、長時間労働の改善はもちろんのことですが、派遣特有の責任分担にご注意ください。

労働時間に関する派遣元・派遣先の責任分担

適用条項 派遣先 派遣元
労働時間(32条、33条)
変形労働時間制等の協定の締結、届出(32条の2~32条の4)
休憩(34条)休日(35条)
時間外・休日労働の協定の締結、届出(36条)
時間外・休日労働(36条)
時間外、休日、深夜労働の割増賃金(37条)
産前産後の時間外、休日労働、深夜業の制限(66条)
育児時間(67条)
生理日の就業が著しく困難な女性に対する措置(68条)

POINT面接指導は派遣元の責任

長時間労働対策のうち安全衛生法第66条の8で定める面接指導制度は派遣元に実施責任があります。休日労働、時間外労働が1カ月100時間以上で疲労の蓄積が認められる者に対して医師の面接指導を実施し、医師の意見に基づき就業上必要な措置を講じなければならないのですが、労働時間の短縮が必要な場合等、派遣元だけでは対応できないこともあります。派遣社員の健康のために派遣先も可能な限りご協力ください。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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