派遣社員の個人単位の受け入れ期間制限(抵触日)を迎える際に派遣先は派遣社員を直接雇用しなければならないのでしょうか。
単に抵触日が到来したことだけを理由に派遣先が受け入れている派遣社員を直接雇用しなければならないという定めはありませんが、派遣社員の中には直接雇用を希望しつつも、やむを得ず派遣就労に従事している方も存在していることから、派遣先も可能な限り直接雇用することが求められています。
派遣終了に際して派遣先に求められることは「雇入れの努力義務」と「労働者募集情報の提供」です。雇入れの努力義務は、以下の3つの条件をすべて満たす場合、派遣先は直接雇用するよう努めなければならないというものです。
- ①有期雇用派遣社員が組織単位における同一の業務で1年以上継続して就業している
- ②派遣元から当該派遣社員について直接雇用の依頼があった
- ③派遣終了後、引き続き同じ業務に従事する労働者を雇用するつもりである
派遣元には、同一の組織単位に継続して1年以上派遣される見込みがあるなど一定の場合に、派遣社員の派遣終了後の雇用を継続させるための措置を講じることが必要となるため、個人単位の抵触日が到来していない場合でも、派遣社員が希望する場合は、派遣先へ直接雇用の依頼をすることがあります(努力義務※)。ただし、直接雇用の形態は正社員以外でも差し支えありません。
- ※派遣元事業主は、同一の組織単位に継続して1年以上3年未満派遣される見込みがある派遣社員に対しては雇用を継続させるための措置を講じる"努力義務"、同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある派遣社員に対しては雇用を継続させるための措置を講じる"義務"となります。
個人単位の抵触日に達する見込みがある派遣社員について、派遣元から直接雇用の依頼があった場合は、派遣先は上記に加えて労働者募集情報の提供を行う必要があります。派遣社員が従事する業務の募集に限定せず同一事業所の求人があれば、派遣先はそれを対象派遣社員に周知しなければなりません。正社員に限らず契約社員、パートタイマー等の募集も含まれます。周知の方法は派遣社員に直接伝える、事業所の掲示板に募集要項を貼りだすことの他、派遣元を通じて対象者に周知することも可能です。派遣元を通さずに派遣社員に直接情報提供を行う場合は、派遣先から派遣元に情報提供した旨を伝えることが望ましいとされています。
POINT派遣就業中に行う措置
派遣先は派遣契約終了時だけではなく、派遣就業中にも直接雇用を推進する措置を講じなければなりません。派遣先が正社員の中途採用を行う場合、その募集情報を派遣社員に周知し応募の機会を提供してください。対象者は派遣先事業所で1年以上勤務している派遣社員です。途中で派遣先組織単位を変更して就業している者も対象になります。周知の方法は労働者募集情報の提供と同じです。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。