7月1日に定年後再雇用により週3日、1日5時間勤務となる者の有給休暇は新たに雇用した者として6カ月勤務後の1月1日に付与すればよいでしょうか。
定年退職者の再雇用は、原則として継続勤務していると判断し、新たな雇用として取り扱うことはありません。基発150号(S63.3.14)では、「継続勤務か否かについては、勤務の実態に即し実質的に判断すべきものであり、定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再採用している場合は、労働関係が継続している限り勤務年数を通算する」としています。
同通達では、継続しない場合として、「定年退職と再雇用の間に相当期間が存し、客観的に労働関係が断絶していると認められる場合」をあげていますが、仮に相当期間が空いて新たに有給休暇を付与するのであれば高年齢者雇用安定法上の問題が生じます。定年退職後65歳までの継続雇用制度の運用に関し、高年齢者雇用安定法Q&Aにおいて「定年後相当期間をおいて再雇用する場合には、継続雇用制度といえない場合もある」と指摘しています。そのため、定年後再雇用制度に基づいて再雇用する場合は事務手続きの都合などで雇用契約の空白期間が一時的に発生したとしても継続勤務として取り扱うことが妥当と考えられます。
定年退職前の付与基準日が7月1日であれば、再雇用期間中の付与基準日も7月1日のままとなります。付与の可否を判断する出勤率は定年退職前のフルタイム勤務のものを使用しますが、付与日数は付与基準日の労働契約に基づくため、週3日勤務、勤続6年半以上であれば11日を付与することになります。
POINT定年退職前に付与された有給休暇
再雇用時に所定労働日数、時間が変更されても定年退職時に既に付与されていた有給休暇はそのまま持ち越します。有給休暇は付与基準日に発生するため、その後の労働契約変更の影響を受けません。例えば定年退職時に有給休暇が20日ある場合、再雇用で週所定労働日数が3日になったとしても、労働契約にあわせて日数を減じることはできません。
Profile
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)
立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。