Q59 パートタイム労働法の差別的取り扱い禁止

パートタイム労働法第9条において差別的取り扱い禁止の対象となる「職務内容が同一」、「職務の内容及び配置の変更の範囲が同一」をどのように判断するのでしょうか。

パートタイム労働法第9条では、正社員と比較して職務内容が同一で、職務の内容及び配置の変更の範囲が同一と見込まれるパートタイマーの賃金の決定、教育訓練、福利厚生その他すべての待遇についてパートタイマーであることを理由に差別的に取り扱うことを禁止しています。
通達「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律の施行について」(平成26年7月24日)によると、差別的取り扱い禁止の対象とする要素の一つである職務内容とは、業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度とされています。業務の内容が実質的に同一であるか否かは以下の手順で判断します。

  1. 1.業務の種類の比較
    販売職、営業職といった業務の種類で比較します。厚生労働省作成の職業分類を参考に比較することをお勧めします。分類が異なれば同一ではないと判断します。
  2. 2.
    中核的業務の抽出
    業務分担を分析し、担当する業務(作業)からその仕事を代表する中核的業務を抽出し比較します。中核的業務の判断は以下の基準で総合的に判断することとされています。
    1. 与えられた職務に本質的又は不可欠な要素である業務
    2. その成果が事業に対して大きな影響を与える業務
    3. 労働者本人の職務全体に占める時間的割合・頻度が大きい業務
    同じ販売職でも接客だけ担当するパートタイマーと在庫を管理し発注業務まで担当する社員では中核業務が異なる可能性があります。ただし、一見異なる場合でも当該業務に必要とされる知識や技能の水準等も含めて比較した上で、実質的に同一と言えるかどうかを判断する必要があります。
  3. 3.
    責任の程度の判断
    責任の程度が著しく異なる場合、同一ではないと判断されます。責任の程度の判断について厚生労働省は以下のように例示しています。
    1. 授権されている権限の範囲
      単独で契約締結可能な金額の範囲、管理する部下の数、決裁権限の範囲等
    2. 業務の成果について求められる役割
    3. トラブル発生時や臨時・緊急時に求められる対応の程度
    4. ノルマ等の成果への期待の程度
    5. 上記の事項の補助的指標として所定外労働の有無及び頻度

もう一つの要素である「職務の内容及び配置の変更の範囲の見込み」とは、雇用されている間にどのような職務経験を積むこととなっているかを見るものであり、転勤、昇進を含むいわゆる人事異動や本人の役割の変化等の有無や範囲を総合判断するものとされていて、同一であるか否かは以下の手順で判断します。

  1. 転勤の有無の比較
    パートタイマー、正社員どちらも同じように転勤する若しくは、転勤しない場合、同一と判断します。正社員は全国転勤、パートタイマーはエリア限定転勤の場合、同一ではないと判断されます。
  2. 事業所内における職務内容の変更の範囲の比較
    従事する業務内容の変更の範囲を比較します。正社員だけ長期的な人材活用の視点から担当業務を定期的に変更している場合、雇用されている期間に経験する職務の範囲がパートタイマーより広く、変更の範囲が異なる可能性があります。また、契約更新の可能性がある有期雇用のパートタイマーについては、契約期間内の転勤、職務内容の変更の範囲を判断するのではなく、更新された場合も含めて変更の見込みを検討してください。

POINTまずは担当業務の整理から

差別的取り扱い禁止の対象となるか否かを判断するためには、パートタイマーの役割を明確にしておく必要があります。職務記述書等の作成を通じて担当業務を整理し、役割に応じた待遇としていくことが求められています。

Profile

答える人
社会保険労務士 中宮 伸二郎 (なかみや しんじろう)

立教大学法学部卒業後、流通大手企業に就職。2000年社会保険労務士試験合格し、2007年社会保険労務士法人ユアサイド設立。労働法に関する助言を通じて、派遣元企業、派遣社員双方に生じやすい法的問題に詳しい。2007年より派遣元責任者講習講師を務める。

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