派遣とは、労働者が派遣元である派遣会社と雇用契約を結び、派遣先企業で就業する働き方のことです。「ライフスタイルに合わせて仕事をしたい」「さまざまな職場で経験を積みたい」といった理由で、派遣という働き方を選ぶ人も増えています。しかし派遣は、正社員やパート、アルバイトとは異なり、雇用主と勤務先が同じではないため、「派遣の雇用形態がよくわからない…」という人も多いかもしれません。 ここでは、派遣の雇用形態や種類のほか、派遣という働き方の魅力について解説します。
派遣とは
派遣とは、労働者が派遣会社(派遣元)と雇用契約を結び、就業先の企業(派遣先)で働く雇用形態を指します。 日本における派遣の歴史は、1986年の労働者派遣法施行によって始まりました。その後、業務の多様化が進み、近年では派遣社員の保護や雇用の安定、キャリア形成などを目的とした法改正が行われています。 厚生労働省の「令和3年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報) 」によると、2021年度における派遣労働者数は約209万人に上り、前年度に比べて8.6%増加しています。
派遣の雇用形態と仕組みについて
派遣は、雇用者と指揮命令者が異なる働き方です。派遣社員の雇用主は派遣元である派遣会社ですので、給与の支払いや社会保険などは派遣会社が行います。ただし、仕事にあたっては、就業先企業に出勤し、その企業の担当者から指揮命令を受けて働くことになります。このように、雇用主と就業先が違う雇用方式を「間接雇用」と呼びます。
一方で、正社員や契約社員、パート・アルバイトなどのパートタイム従業員は、就業先の企業と直接雇用契約を結び、給与の支払いや社会保険、業務上の指揮命令などを、すべて就業先企業から受けます。このような雇用者と指揮命令者が同じ雇用方式を「直接雇用」といいます。
派遣の種類
派遣には、「有期雇用派遣(登録型派遣)」「無期雇用派遣(常用型派遣)」「紹介予定派遣」の大きく分けて3つの種類があります。
有期雇用派遣(登録型派遣)
有期雇用派遣(登録型派遣)は、一般的な派遣の形態です。就業先企業が決まった場合のみ派遣会社と雇用契約を結び、給与や業務内容、派遣期間など、定められた契約内容に基づき派遣先で就業します。
無期雇用派遣(常用型派遣)
無期雇用派遣(常用型派遣)では、派遣会社との雇用契約に期間の定めがありません。派遣先での就業期間が終了しても派遣会社との雇用契約は継続し、次の就業先企業へ派遣されます。
無期雇用派遣について詳しくはこちら紹介予定派遣
紹介予定派遣は、派遣社員として就業しながら正社員や契約社員を目指す働き方です。派遣期間終了時に派遣先・派遣社員がお互い合意すれば、そのまま直接雇用となります。
紹介予定派遣ついて詳しくはこちら派遣の働き方の特徴
派遣という働き方を知るには、次のような3つの特徴について理解しておきましょう。
就業先と雇用主が異なる
派遣は、就業先と雇用主が異なる働き方です。就業先は実際に働く派遣先企業、雇用主は雇用契約を結ぶ派遣会社となります。派遣社員は、派遣先企業の指示を受けて業務に従事しますが、派遣先との雇用関係はありません。
働ける期間に制限がある
派遣社員には、働ける期間に一定の制限が設けられています。派遣の中で最も一般的な有期雇用派遣(登録型派遣)は、あらかじめ決められた派遣期間が終わると、派遣会社との雇用契約も終了します。また、原則として同じ職場で3年を超えて働けないという、いわゆる「3年ルール」が定められています。一方、無期雇用派遣(常用型派遣)の場合は、派遣会社との雇用契約に期間の定めはありません。
派遣元が待遇決定方式を選択する
正社員と派遣社員との不合理な待遇の格差をなくす「同一労働同一賃金」のために、派遣会社が派遣社員の待遇を決定する方法には、「派遣先均等・均衡方式」と「労使協定方式」の2種類があります。
派遣先均等・均衡方式
派遣先均等・均衡方式とは、派遣会社(派遣元)と派遣先企業が協力し、派遣先企業の正社員と比較して、派遣社員の待遇を決める方式です。
労使協定方式
労使協定方式とは、派遣先の状況にかかわらず、派遣会社(派遣元)と派遣社員が話し合って労使協定を結び、それに基づいて派遣社員の待遇を決定します。
派遣という働き方のメリット・デメリット
派遣という働き方には、ライフスタイルに合わせて勤務条件を選べる上、パートやアルバイトに比べて給与が高いというメリットがあります。「プライベートも重視しながら正社員に近い月収を得たい」という人には、おすすめの働き方といえるでしょう。また、派遣会社による手厚いサポートが受けられる点も、派遣で働くメリットのひとつです。
一方、派遣の中でも一般的な有期雇用派遣(登録型派遣)には、「同じ派遣先で就業できるのは3年まで」という3年ルールが存在します。さらに、長期雇用を前提とした場合も3カ月ごとの契約更新が必要なケースが多く、雇用が不安定だと感じることがあるかもしれません。なお、無期雇用派遣(常用型派遣)であれば、派遣のデメリットである3年ルールもなく、安定した雇用を望めます。
メリット・デメリットのまとめ
- メリット
-
- ライフスタイルに合わせて就業可能
- パート・アルバイトと比較して時給が高い
- キャリアを生かして憧れの職場で働ける
- デメリット
-
- 有期雇用派遣の就業上限は3年
- 契約更新が必要
- 業務範囲が限定的になることも
雇用形態別!どの働き方が向いているかチェック!
働き方を考えるときには、自分に合った雇用形態を選ぶことが大切です。正社員や契約社員、パート・アルバイト、そして派遣の特徴を比較して、自分に合った働き方を選びましょう。
雇用形態別の比較についてさらに詳しくみてみる派遣に向いている人
- 特徴
- 自分らしさにこだわり、能力を生かして働きたい人、未経験の方など幅広い方に適しています。働き方を自由に選びたいという方におすすめです。
- 当てはまり度チェック
-
- 大手企業で働きたい
- 特化したスキルを生かして働きたい
- フレキシブルに働きたい
- 高い時給で働きたい
派遣は、派遣会社と雇用契約を結ぶ間接雇用です。自分らしく働きたい人や、スキルを生かしたい人、未経験の人など、幅広いタイプに適した働き方です。大手企業への就業も可能ですので、高収入を狙いつつ、働き方を自由に選びたい人におすすめです。
正社員に向いている人
正社員は就業先企業との直接雇用で、入社した企業で長く安定して働きたい人や、収入を重視したい人に向いています。反面、正社員は責任を求められる場面が多いことや、希望と違う部署への配属・異動、転勤などを命じられる可能性があるため、プライベートと仕事の両立は難しいと考える人も多いようです。
契約社員に向いている人
契約社員は、就業先と直接雇用契約を結ぶ働き方です。さまざまな職場で自分の得意な分野や、専門性を突き詰める仕事をこなすのが好きな人や、自分の裁量で物事の判断を行うのが苦手で範囲の決まった仕事をこなしたい人に向いています。
パート・アルバイトに向いている人
パートやアルバイトは、就業先企業との直接雇用です。仕事内容をはじめ、就業期間や週の勤務日数なども柔軟に選ぶことができます。収入よりも自由度の高さに重きを置く人に向いている働き方といえます。
派遣とパート・アルバイトの違いについて詳しくはこちらPoint.派遣バイトって何?
最近、注目を集めているのが、派遣バイトという働き方です。
派遣バイトとは、派遣会社に登録して単発の仕事をすることを指し、「登録制アルバイト」とも呼ばれます。派遣バイトは、派遣と同様に派遣会社が雇用主となる間接雇用ですが、勤務が半日から長くても数日と、単発的であることが特徴です。
また、直接雇用である一般的なアルバイトとは異なり、給与は就業先(派遣先)ではなく派遣会社から支払われます。派遣バイトの大きなメリットは、派遣会社に登録すれば条件に合った仕事を紹介してもらえる手軽さでしょう。空いた時間に働きたい主婦・主夫や、夏休みや冬休みだけまとめて働きたい学生など、隙間時間の活用にもぴったりです。さらに、日払いや週払いに対応している派遣バイトも多く、スピーディーにお金が手元に入る点もメリットといえます。
派遣バイトについて詳しくはこちら派遣は自由度の高い働き方!自分に合ったスタイルを見つけよう
派遣は、派遣元である派遣会社と雇用契約を結び、条件に合った就業先で仕事をする雇用形態です。「ライフスタイルに合わせて働きたい」「未経験の分野にチャレンジしたい」「大手企業でスキルを磨きたい」など、多様なニーズに応えられる、自由度の高い働き方だといえるでしょう。
また、派遣には「有期雇用派遣(登録型派遣)」「無期雇用派遣(常用型派遣)」「紹介予定派遣」の3種類があり、安定して長く働きたい場合は、無期雇用派遣や紹介予定派遣を選ぶのもおすすめです。派遣という働き方を知り、将来の選択肢のひとつとして検討してみてはいかがでしょうか。