人材派遣会社を上手に活用すれば、業務効率化や人手不足の解消につながります。派遣社員を受け入れるときに気になるのが、派遣社員の管理。派遣元の人材派遣会社と派遣先の企業で分担して責任を負うことになっています。
せっかく派遣社員を受け入れても、体制が整っていないために、思ったように業務が進められないという結果になるのは避けたいところ。派遣先である企業が管理する項目をしっかり押さえ、より効率の良い体制を整えましょう。
今回は、派遣社員を管理する際に必要なチェック項目についてお伝えします。
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派遣社員とは
派遣社員とは、人材派遣会社と雇用契約を結び、派遣された企業で就労する社員です。直接雇用とは異なり、派遣社員と派遣先の間に雇用関係は存在しません。一方で、派遣社員は派遣先の指揮命令権のもと、仕事に従事します。
派遣社員の仕事は、原則として契約で定められた範囲の業務です。諸事情により、勤務場所、就労日、就労時間などを変更する必要が生じた場合、派遣先と派遣元が話し合い、派遣社員の合意のもとで契約内容を変更できます。
一時的な補充ではない長期就業や、事務や介護など専門領域に特化した人材確保など、自社の課題にあわせて活用すると良いでしょう。
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派遣先と派遣元が管理する項目
派遣先は派遣された先の企業、派遣元は雇用契約を結ぶ人材派遣会社をさします。まずは、派遣先と派遣元が管理する項目について確認してみましょう。派遣法で定められている内容を大まかにまとめると、下記のようになります。
派遣先が管理する項目
派遣先が管理すべき主な項目は以下のとおりです。
- 業務の指示
- 職場環境を整える
- 出退社時間
- 安全衛生の管理
派遣先に求められる管理は、派遣社員が従事する業務の内容、勤怠管理、職場での安全の管理など、主に業務の現場に関する項目です。
派遣元が管理する項目
次に、派遣元が管理する項目を見ていきましょう。主な管理項目には以下が挙げられます。
- 給与の支給
- 有給休暇の付与
- 産前産後休業や介護休業
- 定期健康診断
派遣元が管理すべき項目は、主に雇用主の責任に関する項目です。給与は派遣元から支給され、産前産後や介護の休業の申請は派遣元に行われます。
派遣社員の管理のために必要な5つのチェック項目と対応方法
では、実際に派遣社員を受け入れる際の「派遣先が派遣社員の管理のために必要な項目」を詳しく紹介します。派遣社員の管理においては様々な項目がありますが、この記事では以下の5つの項目において、それぞれ確認してみます。
- 1.勤怠管理
- 2.派遣社員への指導、指示
- 3.派遣社員の健康管理
- 4.派遣社員が快適に業務にあたれる環境を整える
- 5.苦情の申出を受ける者を決めて解決する
上記の項目は派遣社員の就業前に準備し、就業中も派遣先に責任の所在があります。
勤怠管理
勤怠管理とは、派遣社員の始業・終業時刻、休憩時間などを記録することで、勤務状況を確認することです。派遣社員の始業・終業時刻、休憩時間については、1カ月に1度以上、派遣元に通知する必要があります。
記録を行うツールには決まりがないため、企業や業務内容の状況に合わせて選択できます。例えば、勤務状況を記載する所定の用紙を用意し、派遣社員に手書きしてもらう方法があります。派遣社員番号や氏名、始業・終業時刻、休憩時間を記入し、派遣先の担当社員が了承のサインをする形式です。
また、パソコンから勤務状況を入力できるシステムが採用されるケースもあり、パソコンを使う業務の現場で導入されることが多いスタイルです。手書き同様に、派遣社員が自らの始業・終業時刻、休憩時間をシステム上で入力、申請することになります。
クラウドで勤怠状況を管理するようなシステムを導入する場合には、派遣元と派遣先がともに同じシステムを採用することで、より効率の良い管理体制が整います。
ただし、いずれの場合でも派遣社員が入力、申請している内容に間違いがないかを常にチェックする必要があるでしょう。実際の勤務状況と申請内容が一致するかだけでなく、契約書で定められた業務外の就業時間や内容になっていないかも確認しましょう。
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Q34 派遣社員の労働時間管理の責任
派遣社員の労働時間は、主に派遣先の管理項目です。ただし、変形労働時間制に関する労使協定の締結と届出、36協定の締結と届出は、派遣元が実施します。長時間労働の改善をはじめ、労働時間に関する管理責任の詳細はこちらのQ&Aもご確認ください。派遣社員への指導、指示
派遣社員は、派遣元と雇用契約を結んでいますが、具体的な業務内容を指導・指示するのは派遣先側です。複雑な業務においては、就業前に派遣先による研修を実施するようにしておくとよいでしょう。その場合、研修を担当する社員を決め、同時にマニュアルの作成も進めておくと効率的です。
また、実際に業務がスタートしてからも、派遣社員からの質問に答えたり、指示を出したりする指揮命令者を定めなくてはなりません。業務遂行ルールが変更になるときは、速やかに派遣社員に周知するようにしましょう。
就業する派遣社員の数が多い派遣先では、多くの派遣社員が一人ひとり社員に質問していると業務が滞ってしまいかねないため、派遣社員のなかでリーダーを決めるケースもあります。
派遣社員の代表的な存在としてリーダー役を決め、他の派遣社員から出る質問をまとめたり、相談役をしたりしてもらうことで、より効率的な業務の遂行が可能になります。こうした場合も、リーダーに指示・指導をする指揮命令者は決めておく必要があります。
派遣社員の健康管理
派遣先企業は、派遣社員の健康面を管理することも忘れてはいけません。一般健康診断については、雇用主である派遣元に実施義務がありますが、労働時間や危険防止に関する項目については、派遣元・派遣先の双方で管理責任を負います。
例えば、業務スペースの環境において、暑すぎる、または寒すぎるということがないように、適切な温度調節を行うことも健康管理の一部です。また、繁忙期であっても、社員同様に、派遣社員にも必要な休憩時間を与えるといった基本的な勤怠管理は欠かせません。
そのほか、契約条件とは異なる危険な業務の遂行を指示したり、健康に害を及ぼすような材料などを扱わせないように注意したりすることも大切です。
派遣社員が快適に業務にあたれる環境を整える
派遣先は、派遣社員が業務を行うために十分な作業スペースを確保するといった環境整備も求められます。ロッカーなどの設備とともに、着替えが必要であれば、着替えができるスペースも準備しましょう。社員向けのリフレッシュルームがあるのなら、派遣社員も気軽に利用できるような体制を整えましょう。
加えて、社員が利用する保健室や診療施設などについても、業務中の健康管理として派遣社員も利用できるように便宜をはかると、より良い環境が提供できます。また、パワハラやセクハラが起きていないかのチェックも怠らないようにしましょう。
苦情の申出を受ける者を決める
派遣先と派遣元は、それぞれ派遣社員からの苦情の申出を受ける担当者を定めなければなりません。この場合、指揮命令者と苦情の申出を受ける担当者を同一人物にすることは望ましくありません。派遣先の担当者は、派遣社員から苦情の申出があった場合、派遣元に連絡をして苦情の処理を行います。
具体的には、苦情内容の確認を行ったり、状況改善をはかったりするといった対策が求められます。ただし、苦情を申出た派遣社員に対して、契約上の問題がない限り、派遣契約の早期打ち切りや更新をしないといった結果にならないように注意が必要です。
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もう1つ、派遣社員を管理するうえで、派遣先は受入事業所ごとに派遣先管理台帳を作成する必要があります。特に、下記の項目については、1カ月に1度以上、派遣元である人材派遣会社に通知を行う必要があるため、確認しておきましょう。また作成した派遣先管理台帳は、派遣契約終了日から3年間、保存しておく義務があることも覚えておきましょう。
派遣先管理台帳の項目で、通知を行うべき内容
- 派遣労働者名
- 派遣就業した日
- 派遣就業した日ごとの始業・終業時刻、休憩時間
- 業務の種類
- 派遣就業した事業所の名称・所在地、就業場所、組織単位
- 派遣労働者が従事する業務に伴う責任の程度
- 派遣労働者が労働に従事した事業所名称および所在地その他派遣就業をした場所ならびに組織単位
その他の記載する主な項目
- 派遣元の会社名・事業所名・事業所の住所
- 無期雇用派遣なのか有期雇用派遣なのか
- 60歳以上であるか
- 苦情処理の状況
- 紹介予定派遣の場合のみ、紹介予定派遣に関する事項
- 派遣先責任者名・派遣元責任者名
- 期間制限のない業務としている根拠となる労働者派遣法の条項番号など
- 派遣会社から通知を受けた雇用保険・社会保険の加入状況(なしの場合はその理由)
- 教育訓練を行った日時・内容派遣労働者氏名
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業務効率化のために派遣社員を利用しても、管理業務が負担となれば予定していた目的を達成できないケースも考えられます。以下では、派遣社員の管理を効率化する2つの方法を紹介します。
人材派遣管理システムを導入する
人材派遣管理システムは、派遣スタッフの基本情報や勤怠、給与を管理できるシステムです。人材派遣管理システムはオンプレミスやクラウドを活用したシステムで管理するため、派遣社員の管理の一元化やペーパーレス化が図れます。
勤怠管理や給与計算などの自動化により、自社社員の負担軽減が期待できる点もメリットです。
人材派遣会社の「派遣管理デスクサービス」を利用する
近年では、派遣社員の管理業務や契約業務も合わせてアウトソーシングできる人材派遣会社も増えています。派遣管理業務のプロセスが標準化されていない、派遣社員の定着に課題がある企業などにメリットの多いサービスです。
例えば、Adeccoでは「派遣管理デスクサービス」を提供しています。派遣先との派遣ニーズや案件のとりまとめ、Adeccoを含む各派遣会社との発注管理などを、専門性と経験をもつAdeccoのオンサイトコーディネーターが人事担当者に代わって派遣管理業務を実施します。
Adeccoのオンサイトコーディネーターは、派遣先に常駐して業務を行います。派遣管理業務の効率化やトラブルの未然防止、派遣社員の調達や定着に適したサービスです。
派遣管理デスクサービス
派遣管理デスクサービスは、アデコの人材ビジネスに精通した人材が貴社に常駐し、派遣活用に関する業務を代行します。各派遣会社との関係構築により、安定した派遣社員の確保および定着に向けた支援を行います。また、労働法制を遵守した派遣社員の契約管理やデータに基づく改善提案も行い、貴社の生産性向上を実現します。
まとめ
派遣先が行う派遣社員の管理内容は、派遣社員の就業スペースの確保や勤怠管理など、業務を行う場でしか確認できない項目がほとんどです。また、業務の指示を出すのは派遣元ではなく派遣先なので、体制を整えて、滞りなく派遣社員が業務を進められる環境を維持できるような仕組みも求められます。
派遣社員が快適に業務を行える万全の体制作りは、業務の効率アップにもつながります。派遣社員の就業中だけではなく、受け入れ前から派遣先で管理する事項をチェックし、スムーズな業務遂行ができるように整備していきましょう。
派遣管理業務の効率化には、人材派遣管理システムの導入のほか、人材派遣会社に派遣管理業務をアウトソーシングする方法が挙げられます。ぜひAdeccoの「派遣管理デスクサービス」をご検討ください。
【人事・労務 担当者必見】人材派遣活用のチェックリスト
人材派遣を活用するにあたって外せないチェックリストをご紹介します。
- 【初めての方向け】派遣先担当者がはじめに確認すべきこと
- 労働法制を遵守するための派遣活用チェックリスト
- 定着率向上のためのチェックリスト
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