メンタルヘルスとは心の健康を意味します。日本では従業員のメンタルヘルス不調が深刻な社会問題となっています。2022年4月からは、パワハラ防止法の遵守が中小企業にも義務付けられました。
また、従業員の健康管理を企業として戦略する健康経営への注目も集まっています。メンタルヘルスは、企業価値向上を図る健康経営の要素となるだけでなく、従業員の健康管理においても重要な課題とされています。人事担当者として、職場のメンタルヘルス対策について考えてみましょう。
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メンタルヘルスとは?
メンタルヘルスは「心の健康」をさす言葉です。身体の健康と同じくらい心の健康も重要です。心の状態は公私問わず生活に影響を及ぼしますが、目に見えにくいためケアが十分でない場合も少なくありません
厚生労働省はメンタルヘルス不調を「精神および行動の障害に分類される精神障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者の心身の健康、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のある精神的および行動上の問題を幅広く含むものをいう」と定義しています。
厚生労働省の調査によると、仕事や職業生活に関する強いストレスを感じる労働者の割合は50%以上で推移しています。
令和4年発表の「労働安全衛生調査(実態調査)」では「仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合」と回答した人は、82.2%でした。
参考・出典:「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」│厚生労働省
上記から昨今は、企業のメンタルヘルス対策への注目が集まっています。
精神障害による労災補償の支給決定数が年間2,000件以上になっているなど、職場でストレスを感じる理由も多岐にわたります。仕事の量や質、責任の発生といった労働内容だけでなく、対人関係や会社の将来性などもストレス源です。
常時50人以上の労働者がいる事業所ではストレスチェックが義務化され、メンタルヘルス対策は徐々に浸透しています。
一方で、常時10〜29人の労働者がいる事業所では実施率が約半数に留まっており、さらなる対策が求められています。
参考・出典:「2023_第1章_02_ 職場におけるメンタルヘルス対策の状況」│厚生労働省
職場のメンタルヘルス不調の要因と兆候
企業でメンタルヘルスケアを実施するには、不調が起こる要因を理解した上で、労働者にどのような兆候が現れるのか理解することが大切です。それぞれ解説していきます
要因
職場でメンタルヘルス不調が起こる要因と例は以下です。
外因性 |
内因性 |
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外的な環境要因が引き金となって発生する | 個人的な不安や悩みから発生する | ||
職場要因 | 職場で発生した要因 |
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私的要因 | 私生活上で発生した要因 |
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たとえば、新卒社員が陥りやすい春先のメンタルヘルス不調として、「五月病」「六月病」があります。環境の急激な変化による外因性要因、仕事に慣れないといった内因性要因、私的要因となる一人暮らしによる不安などが複雑に絡み合っていることが考えられます。
昨今では、テレワークによるストレスも新たな課題です。他の従業員とのコミュニケーション不足や、プライベートとの境界があいまいになることが原因で、不調が現れる方も出てきています。
兆候
メンタルヘルス不調の兆候は、一般に職場で次のようなかたちで現れるとされています。
- 勤怠上の変化 体調不良とする遅刻・早退・欠勤が増える。
- 業務能力の低下 業務上のミスや事故が多くなる。報連相を怠る。業務連絡や書類提出が遅くなる。
- 日常行動の変化 挨拶をしなくなる。会議中に居眠りしてしまう。協調性がなくなり怒りやすくなる。
なぜメンタルヘルスが重要なのか?
厚生労働省によると、令和4年11月から令和5年10月までに、メンタルヘルス不調により1ヶ月以上職場を休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%に上ることが判明しました。およそ10社に1社であり、決して低い数値ではありません。
また、メンタルヘルス不調により退職した労働者がいた事業所は6.4%です。事業所規模1,000人以上の企業で退職者がいた割合は67.4%でした。従業員がメンタルヘルス不調に陥ってしまうと、休職や離職などにつながるリスクが高まります。労働力不足、職場全体のモチベーションや生産性の低下などの問題も起こり得るでしょう。
労働力人口が減り続けており、人手不足が問題視されている今、採用した従業員が適切に働ける環境を整えることが大切です。働きやすい環境を目指すだけでなく、不調を抱える従業員を早期に発見し、対処することで長く働けるようにサポートする必要性も高まっています。
メンタルヘルス対策は自己管理や自己責任などの言葉で片付けず、経営課題のひとつとして捉えるべきでしょう。
企業がメンタルヘルスケアによって得られるメリット
メンタルヘルスケアを行うメリットには、代表的なものとして下記のような項目が挙げられます。
- 職場の生産性低下防止
- リスクマネジメント
- 職場環境の改善
- 長期休業者・離職者の発生率低下
職場の生産性低下防止
職場の生産性低下を食い止めるのに、メンタルヘルスケアが役立ちます。
メンタルヘルス不調によって集中力や意欲が低下し、適切な業務判断ができない、遅刻・欠勤が増えるなど、その従業員本来の業務能力が著しく低下する場合があります。その結果として職場全体の生産性低下につながる可能性もあります。
メンタルヘルスケアは、従業員のメンタルヘルス不調を防ぐと同時に、個々人のパフォーマンスを発揮するための対策にもなるといえるでしょう。
リスクマネジメント
メンタルヘルスケアはリスクマネジメントにも有効です。
メンタルヘルス不調によって、従業員の集中力や注意力が低下し、事故が発生しやすくなります。場合によっては、他の従業員が労働災害に見舞われたり、情報漏洩をして企業全体にダメージを与えたりする可能性も高まるでしょう。
そのほか、従業員のメンタルヘルス問題が多い企業はレピュテーションリスクがあり、イメージの低下にもつながります。
このようなリスクを回避するために、従業員のケアが必要です。
職場環境の改善
従業員がメンタルヘルス不調に陥ると、職場のコミュニケーション低下やモチベーション低下などを招きます。
メンタルヘルスケアを実施することで、従業員全員のメンタルヘルス増進を促し、満足度と生産性が高い職場環境への改善が期待できます。ひいては企業活力向上の一助にもなるでしょう。
長期休業者・離職者の発生率低下
メンタルヘルス不調による長期休業者が発生したり、離職が起こったりすると人員計画の狂い、生産性低下、企業活力低下などの誘因になります。新たな雇用が必要になると採用コストや教育などの負担も発生するでしょう。
メンタルヘルスケア実施は、こうした経営リスク防止策にも役立つといえます。
人事担当者が知っておきたい職場のメンタルヘルスケア実施の基本
企業が具体的なメンタルヘルスケアを実施しようとしても、実際には成果が見えにくいケースが多いようです。その理由は、メンタルヘルス不調を発生させる要因の複雑さにあります。メンタルヘルス不調は、前述した四つの要因が複合的、あるいは連動的に絡みあって発生するからです。
これに関して、厚生労働省は「職場における心の健康づくり ~ 労働者の心の健康保持増進のための指針 ~」において、次のように指摘しています。
-
心の健康問題における特性
心の健康問題については、客観的な測定方法が確立しておらず、さらにその発生過程には個人差が大きく、そのプロセスの把握が難しい。 -
人事労務管理との関係
心の健康は、職場配置、人事異動など人事労務管理と密接に関係する要因によって、大きな影響を受ける。したがって人事労務管理と連携しなければ、適切に進まない場合が多い。 -
家庭・個人生活等における職場以外の問題
心の健康問題は、職場におけるストレス要因のみならず家庭・個人生活等の職場外ストレス要因の影響を受けている場合もある。これらは複雑に関係し、相互に影響し合う。
こうした課題を前提に、厚生労働省は職場のメンタルヘルスケア実施の基本として同指針を示しています。多くの項目があるなかでも、人事担当者が押さえておくべき項目は次の三つでしょう。
参考・出典:「労働者の心の健康保持増進のための指針」│厚生労働省
心の健康づくり計画
心の健康づくり計画とは、メンタルヘルスケア実施の骨子を示したものです。厚生労働省は企業に求められる「心の健康づくり計画」策定に盛り込む事項として、
- 事業者がメンタルヘルスケアを積極的に推進する旨の表明に関すること
- 事業場における心の健康づくりの体制の整備に関すること
- 事業場における問題点の把握およびメンタルヘルスケアの実施に関すること
など計7項目を挙げています。
四つのメンタルヘルスケア推進
心の健康づくり計画を具体的に推進するための方法です。厚生労働省の指針のなかでは「四つのケアが継続的かつ計画的に行われることが重要である」とし、四つのケアについて次のように説明しています。
-
セルフケア
労働者自身がストレスに気付き、これに対処するための知識、方法を身に付け、それを実施することが重要である。 -
ラインによるケア
管理監督者は労働者の職場における具体的なストレス要因を把握し、その改善を図ることができる立場として、職場環境等の把握と改善、労働者からの相談対応を行うことが必要である。 -
事業場内産業保健スタッフ等によるケア
事業場内産業保健スタッフ等は、セルフケアおよびラインによるケアが効果的に実施されるよう、労働者と管理監督者に対する支援を行う。また、心の健康づくり計画に基づく具体的なメンタルヘルスケア実施に関する企画立案、事業場外資源とのネットワーク形成やその窓口など、心の健康づくり計画実施の中心的な役割を担う必要がある。 -
事業場外資源によるケア
メンタルヘルスケアに関して、専門的な知識を有する各種の事業場外資源の支援を活用することが効果的である。
メンタルヘルスケアの具体的進め方
心の健康づくり計画実施における取り組みとして、指針では「具体的な推進に当たっては、事業場内の関係者が相互に連携し、以下の取り組みを積極的に推進することが効果的である」とし、次の三つの必須的取り組みを求めています。
-
メンタルヘルスケアを推進するための教育研修・情報提供
・労働者への教育研修・情報提供
・管理者への教育研修・情報提供
・事業場内産業保健スタッフ等への教育研修・情報提供
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職場環境等の評価と問題点の把握
・職場環境等の評価と問題点の把握
・職場環境等の改善
-
メンタルヘルス不調への気付きと対応
・労働者による自発的な相談とセルフチェック
・管理監督者、事業場内産業保健スタッフ等による相談対応等
職場のメンタルヘルスケア実施の流れ
職場のメンタルヘルスケアにおいて、人事担当者が押さえておかなければならないのは、メンタルヘルスケア実施の流れです。メンタルヘルスケアの実施の流れは次の四つのフェーズに分かれています。
0次予防従業員や環境の活性化を行うフェーズ
組織診断やコーチングを行い、メンタルヘルス不調者をなるべく出さない環境づくりを行います。
1次予防メンタルヘルス不調を未然に防止するフェーズ
従業員のメンタルヘルス不調予防を目的に2015年12月に施行された「ストレスチェック制度」を活用します。
2次予防メンタルヘルス不調者を早期に発見し、適切な措置を行うフェーズ
従業員自身のセルフチェック機能、管理監督者等による相談対応、家族の気付きなど、早期に発見できるような仕組みづくりを行います。
3次予防メンタルヘルス不調で休業してから職場復帰を支援するまでのフェーズ
また、メンタルヘルスケア実施において、人事担当者が担うべき役割は、管理監督者や保健スタッフだけでは対応できない課題の解決をすることだといわれています。
たとえば、
- 新入社員の職場配置、人事異動、転勤などがその従業員のメンタルヘルスに及ぼしている影響を把握し、職場環境の改善を提案する
- 社内の立場と責任が異なる人たちの意見を聞いた上で多角的な視点から現場の問題点を洗い出し、有効な対策を提案する
- 自社に適したメンタルヘルスケアサービス、産業医・カウンセラーなどの選定を提案する
などです。
メンタルヘルスケアの最良策は0~1次予防の徹底
職場のメンタルヘルスケア対策で最も効果的なのは、従業員のメンタルヘルス不調を未然に防ぐ0~1次予防といえるでしょう。2次予防、3次予防とフェーズが進むに連れて職場への悪影響の度合いが強くなり、必然的にメンタルヘルスケアコストも増加していくからです。
0~1次予防を徹底するためには、
- 従業員が自由に自分の意見を言える職場の雰囲気づくりに努める
- 管理職としてのコミュニケーション能力を向上する
- 従業員の勤務状況が可視化できる仕組みをつくる
などが重要といわれています。
0~1次予防を心がけ、風通しの良い組織づくりを進めましょう。
企業が実施するべきメンタルヘルス対策
次に、職場における具体的なメンタルヘルス対策をご紹介します。
ストレスチェックの導入
ストレスチェックとは、ストレスについての質問票に対して従業員が答えを選択し、結果について集計と分析を行う一連の検査プロセスです。労働安全衛生法により、2015年12月から50名以上の従業員を有する企業や事業所では、ストレスチェックが義務付けられています。
従業員にとっては、客観的に自分の状態を知れるため、セルフケアのきっかけとなります。企業としては、従業員の不調を事前に知り、予防や職場の具体的な改善点も見つけやすくなる効果があるでしょう。導入するには、産業医への相談や、サービス事業者に委託するなどの方法があります。
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ストレスチェックの対応はできていますか?導入手順~実施までの流れを解説
本記事では、ストレスチェック制度の導入から実施までの流れを解説します。
研修や情報提供
職場においてメンタルヘルスに関する階層別の研修を導入することは有効な手段のひとつです。継続的に研修を行うことによって、メンタルヘルスに対する理解を深められます。管理職には必須の知識となりつつあるため、昇進試験や評価などに含めることも有効です。
管理職向けの内規をつくる
管理職には部下からのさまざまな相談や悩みを受け止める役割もあります。メンタルヘルスケアの第一歩は、部下のいつもと違う様子に気付くことです。これまでにはない行動が目立ったり、残業が大幅に増えたりした場合にはコミュニケーションが必要だといえます。
そのような場合、どのように対応するかを決めた内規を作成することも有効です。
復帰を支援する制度をつくる
職場におけるメンタルヘルスの問題から従業員が休職した場合、復帰は従業員やその家族にとって非常に重要です。また、従業員に復職してもらうことは、生産性やチームのモチベーション、採用コストといった観点からも企業にとって取り組むべき重要課題です。
円滑な職場復帰のためには、休職してから復職するまでのフローを明確に整備する必要があります。 厚生労働省が示している標準的な支援のステップは以下です。
- 1病気休業開始および休業中のケア
- 従業員が不調により休業する基準は数値で設けづらいため、面談や産業医の見解などにより判断します。また休業中には、定期的に連絡を続けるといったコミュニケーションも欠かせません。
- 2主治医による職場復帰可能の判断
- 一定期間の休業が終わったら、主治医や産業医が職場復帰可能かどうか判断を行います。
- 3職場復帰支援プランの作成
- 主治医や産業医によって職場復帰が可能とされた場合、復帰支援プランを作成します。
部署を異動した方が良い場合もあれば、しない方が良い場合もあり、個別に対応する必要があります。 - 4最終的な職場復帰の決定
- 復帰について具体的な内容が確定すれば、いよいよ復帰となります。
- 5職場復帰後のフォローアップ
- 職場復帰後のフォローアップについても上司や主治医などのサポートが欠かせません。定期的なフォローアップの予定を立てましょう。
厚生労働省の点検票に基づく自主点検
厚生労働省では、「職場のパワーハラスメント対策に係る自主点検票」を公開しています。 トップメッセージを発信しているかをはじめ、就業規則に盛り込むべき事項を確認できます。
参考・出典:「職場のパワーハラスメント対策に係る自主点検票」│厚生労働省
産業医に協力を仰ぐ
産業医は、職場における従業員の健康に関するアドバイザーとしての役割を担います。労働安全衛生法によって従業員の数が50人以上の企業または事業所は、産業医の選任が義務付けられています。健康診断やストレスチェックに基づくケア、また従業員に治療が必要な場合のアドバイザリー支援が期待できるでしょう。
職場のメンタルヘルス対策を行う企業の取り組み事例
メンタルヘルス対策に関する企業の取り組み事例には、どのようなものがあるのでしょうか? 具体的な対策などを見ていきます。
株式会社イトーキ
オフィス環境づくりを支援するイトーキでは、2017年より「健康経営宣言」を制定しています。 12の分野で健康経営に取り組んでおり、そのなかにメンタルヘルスも含まれています。
メンタルヘルスに関する取り組みでは、研修による事前防止に注力しており、複数回に分けて自己学習するなど工夫されているのが特徴です。
管理職向けには、事例をワークシート形式で取り組んでもらうことで理解向上に努めており、休職者に対しては人事部や健康管理室という部門が連携して復帰支援を行っています。再休業を防ぐために慣らし出勤やカウンセリングを取り入れている理想的な事例だといえるでしょう。
味の素株式会社
味の素では、健康経営を推進しており経済産業省が選定する健康経営銘柄にも、2017年以降複数回選出されています。取り組みの特徴は、セルフケアにフォーカスし、重要性を啓発していること。
また、発見も治療も休業も早期に行う方針を明確にしています。これを実現しているのは、年に1回行われる従業員と専門家である産業医との面談です。メンタルヘルス不調の再発防止に重点を置いた復職プログラムも独自に導入しており、有効な対策となっています。 これにより、再発率が一般的な水準の半分にとどまっていると報告されています。
参考・出典:「味の素グループ ASVレポート2023」│味の素
株式会社ベネッセコーポレーション
ベネッセコーポレーションは、2008年にヘルスケア体制の見直しを行い、相談デスクを立ち上げました。相談デスクは嘱託の産業医と連携し、担当部署や専門家と連携して問題解決に活かせる体制を整えています。
また、メンタルヘルス研修にも力を入れ、管理職への教育を強化している点も特徴です。ラインケアを充実させることで、メンタルヘルスケアをいち早く行い、労働損失を最小限に抑える取り組みを強化しています。
参考・出典:「働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト心の耳」│株式会社ベネッセコーポレーション東京支部
第一工業製薬株式会社
第一工業製薬株式会社は、2020年から毎年健康経営銘柄に選出されています。
メンタルに不安を感じやすい新入社員および新任管理者に対して、体験カウンセリングを取り入れ、カウンセリングのハードルを下げているところが取り組みのひとつです。
また、マッサージ体験会を全社展開し、メンタルヘルスと腰痛・肩こりなどの不調の緩和にも力を入れています。
参考・出典:「2024健康経営銘柄選定企業紹介レポート」│経済産業省
サントリー食品インターナショナル株式会社
サントリー食品インターナショナル株式会社では、運動を日常に取り入れる「Activeプラス10宣言」活動を実施しています。
生活の中で毎日プラス10分取り組めそうな運動週間の目標を従業員が宣言し、85.3%が参加、全体の59.8%が週2回以上の運動を意欲的に継続するようになりました。
体力・体組成測定や運動アドバイスも全国で開催して気づきを与えたり、定期的な情報提供を続けたりして、運動の定着によるメンタルヘルスケアに取り組んでいます。
参考・出典:「2024健康経営銘柄選定企業紹介レポート」│経済産業省
ブラザー工業株式会社
ブラザー工業株式会社では、ストレスチェックを活用した取り組み「ココカラ活動」を行っています。部門長向けのワークショップを行い、産業保健スタッフも支援しながら職場環境改善活動を推進しています。
事例紹介やアクションプランの作成支援も取り入れるなど、多角的な取り組みを継続的に実施して、ストレスチェックの高リスク部門の減少に成功しました。
もしも職場にメンタルヘルス不調者が出たら?
もしも職場にメンタルヘルス不調者が出たら、どのように対応していけば良いのでしょうか? 大きく下記のような流れになります。
- 1本人との面談
- まずは、本人との面談が必要です。具体的な悩みが、人間関係にあるのか、業務にあるのか、または私生活にあるのかを話せる範囲で共有してもらうことが重要です。
- 2医療機関受診の推奨
- 次のステップは、医療機関の受診です。自己判断や素人判断では分からないことも多くあります。医療機関を受診し、診断書を発行してもらうことで具体的な今後の方針を決められるようになります。
- 3休業~復職へのフォロー
- 総合的な事情を鑑みて、休業が必要だと判断された場合には休業期間の設定や引き継ぎ、復職までの支援プランを作成しましょう。
休業期間中はさまざまな申請も含めて、人事部門が窓口になることも多くあります。休職者は復帰に当たり大なり小なり不安を感じるもの。心強い相談相手になれるよう、部門の責任者とも連携しながら、コミュニケーションも取っていきましょう。
組織や従業員の悩みを解決するEAPとは
EAPは英語の「Employee Assistance Program」の略で従業員支援プログラムという意味の言葉です。 生産性の維持向上のために、組織や従業員の悩みや心配事について解決する取り組みをさします。
メンタルヘルスに関する支援や、キャリア・コンプライアンスなど広い領域をカバーしていることが最大の特徴です。
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まとめ
メンタルヘルス不調は、企業が取り組むべき経営問題のひとつです。企業としての競争力を失わないためにも、積極的に取り組むことが必要だといえるでしょう。メンタルヘルスケアに取り組むと、職場環境が改善したり、離職者を減らしたりでき、生産性の向上にもつながります。
職場のメンタルヘルスケア実施の流れをよく理解し、0~1次予防に力を注ぎましょう。管理職向けの内規や、休業した後の復帰について支援する制度をつくることで、安心して働ける職場づくりにつながります。
メンタルヘルス対策には、研修や情報提供を行ったり、職場の自主点検を実施したりする方法などがあります。いずれの方法でも、制度設計やコミュニケーションも含め人事が大きな役割を担います。経営層や管理職と従業員の間を取り持つ懸け橋として、取り組んでいきましょう。
AdeccoのEAP・メンタルヘルスケア
企業の生産性の向上という観点からよりよい職場環境づくりに役立つソリューションを提供する、Adecco独自の従業員支援プログラム(EAP: Employee Assistance Program)です。 企業の組織・人事・管理監督者・従業員、その家族に対して、さまざまなサービスをご用意しています。
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