近年、多様な働き方を選択する人が増えていますが、それを実現する一つの手段として人材派遣があります。企業にとっても有効性が高く、必要な時に必要な人材を雇用することで、自社のビジネスに大きな効果をもたらします。
一方で、派遣社員と良好な関係を築けず、短期離職が繰り返されるケースも見受けられます。課題に感じている企業さまも少なからず存在するのではないでしょうか。今回は短期離職の主な要因と防止策、また長期就業につなげるポイントを解説します。
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派遣人材の短期離職を防ぐポイント 17のチェックリスト
派遣人材の短期離職を防ぐポイント17項目のチェックリストを用意しました。
派遣人材の短期離職対策を検討される際にご利用ください。
企業を悩ます短期離職という課題
短期離職の要因は企業都合と派遣社員都合に大別されます。企業都合は予算や事業の変化などによるもので、やむを得ない側面があります。一方、派遣社員都合は派遣社員や企業の希望と相反して起こってしまうもので、複数の要因と防止する手段が考えられます。ここでは派遣社員都合に着目します。
Adeccoでは、離職の理由が本人の躍動できていない状態に関係があると捉え、その要因として、
- 1体調の変化
- 2ワークライフバランスの崩れ
- 3個人の意見の軽視
- 4心理的安全性の欠如
- 5指揮命令者との人間関係の悪化
の5つがあると考えています。離職を希望する派遣社員にヒアリングをすると、5つの要因のいずれかを挙げることがほとんどです。また、2020年から続く、コロナ禍の影響も見逃せません。リモートワークが増えたことで、コミュニケーションの不足や欠如に陥り、5つの要因が引き起こされやすくなっています。
派遣社員の短期離職は、企業にとってデメリットが決して小さくありません。組織の生産性が下がるばかりか、新たな人材を採用するまでに時間もコストもかかります。採用後は改めて教育を行う必要もあり、そこにも再度コストがかかります。1人、2人と離職が続くと、周囲の社員にも影響を及ぼします。
業務量が増えることでモチベーションの低下を招き、躍動要因が欠け、連鎖反応的に、離職が起こることも少なからずあります。また、人の入れ替わりが激しいとイメージダウンにもつながります。企業にとって短期離職は、プラス要素が全くないといっても過言ではありません。
人間関係を改善するコミュニケーションのポイント
離職の要因をさらに深掘りすると、多くがコミュニケーションに基づくものだと分かってきました。無意識のうちに正社員と派遣社員との間に壁をつくってしまっていることも多くあります。
例えば、それは「派遣さん」という言葉にも表れているでしょう。雇用形態によって役割や業務内容が異なるのは事実です。しかし、責任とプライドを持って業務を手掛けているところに、「派遣だから仕方がない」「(派遣だから)言われたことだけやっていればいいよ」という言葉を投げかけられると、モチベーションが大きく低下します。期待されていない、必要とされていない、と感じ取ってしまう場合もあります。
国内では正社員の立場が優遇される傾向があります。この点、日本は、働き方の多様化に対応しきれていない面も否めません。正社員の方は、「派遣さん」と呼ぶことで無自覚に派遣社員と壁や溝をつくってしまうことがあります。もしかしたら配慮のつもりで「派遣だから」と言っているのかもしれませんが、良好な関係を築くためにも意識を変えることが必要です。無意識に正社員と派遣社員を区別してしまっていると気付くことが、無用なトラブルを防ぐ第一歩にもなります。
入社後のギャップが起こるのは、現状の詳しい把握ができていないから
派遣社員の短期離職を招く要因として、入社後のギャップも見逃せません。「事前に聞いていたことと異なり、Excelでマクロを組むことまで求められた」「電話のトークスクリプトが用意されていなかった」「メンターがいると言われていたのに、資料を渡されるだけだった」などはありがちです。派遣社員は入社当初に聞いていた話と違うと不信感を募らせ、慣れない業務に心身の負担が重なり、離職へつながります。これは本人が躍動できるかどうか以前の問題です。
なぜこうしたことが起こるのでしょうか。多くの場合、派遣の受け入れ先は人手不足で派遣に頼ることになり、現状が多忙なため十分な受け入れの準備ができません。本来ならマニュアルを用意しておく予定だったが、そこまで手が回らなかった、ということがたびたび起きているのです。
そうした場合は、マニュアルづくりの段階から派遣社員を募集するといいでしょう。マニュアルづくりが得意な方や、定型のオペレーションが得意な方などさまざまな人材がいるため、自社の状況に応じて募集要件を検討することが大事です。
人手不足解消のために派遣社員を入れたのに、何の解決にもならなかった。そればかりか、再度の派遣元とのやり取りで余計に負担も増えてしまった、という悪循環に陥らないためにも、現状を詳しく把握して業務を依頼し、入社後のギャップが起きないように対策しましょう。
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離職を防ぐ具体的な解決策は小さなことの見直しから
短期離職を防ぐ具体的な施策にはどのようなものがあるのでしょうか。挨拶をきちんと行う、気遣いや感謝の一言を伝えるなど、ごく当たり前のことを見直すことが重要です。この部分を疎かにしては、他の対策を行っても十分な効果は得られないでしょう。
反対に、基礎の部分がしっかりとしていれば、お互いを尊重しながら意見を交わす「アサーティブなコミュニケーション」や、業務や職場の悩みを聞き改善へとつなげる「指揮命令者との1on1」などが本来の効果を発揮します。
些細なことに感じるかもしれません。しかし、細やかな心くばりからのコミュニケーションの活性化が人間関係を変え、職場環境を変えることにつながることを十分に理解する必要があります。チームビルディングを行う際も、話しかけやすく、相談がしやすい環境づくりから始まります。コミュニケーションの活性化なくして、チームビルディングは行えないでしょう。
職場によっては、リモート環境でコミュニケーションの取りづらさを感じていることがあるかもしれません。しかし、工夫によって対面で仕事を行っている時以上に円滑なコミュニケーションを実現することができます。例えば、チャットアプリを活用し、コミュニケーションの活性化につなげているケースは多くあります。
具体的には、疑問や質問、気付いたことをチャットにいつでも書き込めるようにし、書き込みに気付いた人が誰でも答えられるようにしておく。そうすることで、コミュニケーションを取っているのは上長だけ、忙しい時は話しかけづらい、問題を一人で抱え込むなどという状況が解消され、チームに一体感が生まれるケースもあります。派遣社員はそうした環境を好意的に受け入れ、「長期的に働き続けたい」という声が多く挙がるに至っています。
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仕事の意義と意味を伝えて、期待を明示する
業務を任せる時は、なぜ任せるのか、その仕事にはどんな意味や意義あるのか、を伝えることが重要です。背景を理解することで、自分が必要とされているという感情も芽生えてきます。企業さまのなかには、そこまで派遣社員に伝える必要はないと捉えているケースもありますが、雇用形態による壁をつくることは短期離職を招きます。想いを共有できた方が、互いに良い仕事につながります。
本人のできることや得意なこと、目指すことを聞いて、担当してもらう業務を決定することも有効です。あまり歓迎されることではありませんが、万が一想定していた仕事内容と多少ズレ異なっていたとしても、本人が納得すれば前向きに取り組むこともできます。ただ、派遣法によって契約以外の業務を任せることができない現状もあります。
そうした場合は、派遣元の人材派遣会社へご相談ください。場合によっては、契約内容を変更するなど必要な対処を実施します。
長期就業につなげるためのビジョンマッチングの重要性
これまで派遣の受け入れといえば、条件のみのマッチングを行うことがほとんどでした。しかし、Adeccoでは、企業さまの課題により踏み込んだヒアリングを行っています。
具体的には、企業や組織がどのようなビジョンを描き、どんな方向に進みたいかを確認し、課題になっている点をヒアリングしています。他方、派遣社員に対しては本人のキャリアビジョンをヒアリングします。その上で、両者のビジョンおよび条件におけるマッチングを行います。
短期離職を防ぎ、長期就業につなげるためには、ビジョンマッチングが鍵となるとAdeccoは捉えています。
1年以上の長期就業を実現するための具体的な施策としては就業評価があります。待遇改善を兼ねて、1年に1回評価を実施します。この時、企業側の評価に加え、自己評価も欠かせません。自分は何ができて、何ができなかったのかを振り返りえるのです。
場合によっては、企業と派遣社員の評価のすり合わせを行うことも、自己の立ち位置を知るという意味で効果的です。あわせて、次の1年で何を成し遂げたいか目標を掲げます
Adeccoにはキャリア構築の伴走者となるキャリアコーチがいます。コーチングセッションを設けるなどしながら、本人のキャリアビジョンを明確にします。
自分が何を目指しているかを知ることで、自己成長を始める大きなきっかけとなり、仕事にもモチベーション高く臨めるようになります。結果として、派遣社員が躍動し、職場の生産性が高まります。
まとめ
今回は、派遣社員の短期離職の要因やその解決策を紹介しました。短期離職を招く主要な要因として挙げられるのが、コミュニケーションの欠如です。些細なすれ違いを重ねていたり、正社員と派遣社員の壁を無自覚につくっていたりするケースも少なくありません。
その一方で、基本的なコミュニケーションを丁寧に行うことで、短期離職の課題の大部分が解決されます。また、長期就業につなげるためには、ビジョンマッチングが鍵となります。企業と派遣社員が互いにビジョンを共有することで、長期就業が実現され、より生産性の高い状況もつくられます。
派遣社員の短期離職を防ぎ、長期就業を目指すために「派遣人材の短期離職を防ぐポイント 17のチェックリスト」をダウンロードの上、活用してみてください。
派遣人材の短期離職を防ぐポイント 17のチェックリスト
派遣人材の短期離職を防ぐポイント17項目のチェックリストを用意しました。
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Profile
金融業界での勤務を経て、2004年アデコ株式会社に入社。JOBセンターにて求職者の面談や登録業務に従事。2016年新規部署となるキャリア開発本部の立ち上げに携わり、キャリアコーチとして就業者のキャリア支援に取り組む。同年9月にキャリアセンター長となり、現在に至る。
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