昨今の日本社会では、少子高齢化による労働人口の減少や仕事に対する価値観の変化などを背景にさまざまな働き方が選択されています。
そして、働き方が多様化するなかで「業務の属人化」が課題となるケースも少なくありません。コロナ禍を経て、テレワークなど社員間の対面コミュニケーションが減る職場も多く、組織の在り方自体が変化しつつあります。
働き方だけでなく組織の在り方自体が変化するなかで、改めて「チームビルディング」を重視する企業が増えてきています。
本記事では、チームビルディングの目的やメリット、実施する際のポイントを解説します。
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チームビルディングとは
企業活動で「チーム」と名がつく言葉や用語は数多く存在しています。
今回テーマとして着目する「チームビルディング」とは、どのような意味を持つ言葉でしょうか
企業活動での「チームビルディング」とは「チームによる成果を最大化するために、メンバーの能力や経験を最大限に引き出すこと、または、そのチーム構築のプロセスのこと」をさします。
「チーム」「チームワーク」「グループ」の違い
チームビルディングと似た印象を持つ「チームワーク」や、チームと同じく「人の集まり」を意味する「グループ」などの言葉もありますが、それぞれの言葉の意味はどう異なるでしょうか。
まず「チーム」とは共通の目的や目標を持った集団をさす言葉です。
対して「チームワーク」はチームでの作業を円滑に進めるために、メンバー間の連携を高めることを意味します。
「チームビルディング」では、連携から一歩踏み込んで、各メンバーの能力を最大化し、成果を強化するための組織作りを目指す意味が含まれている点が異なります。
また「チーム」と同じく「集団」を意味する言葉として「グループ」がありますが、グループは単なる人の集まりをさします。
たとえば、野球やサッカーなどスポーツでは試合に勝利する共通の目的を持つ人の集まりであるため「チーム」と呼び、「グループ」とは呼びません。
ビジネスの場合でも、組織構築を単なるグループで終わらせず、共通する目的意識を持ったチームを作る姿勢が重要です。
チームビルディングの目的
深刻な人手不足やITインフラの進化などを背景に、日本での働き方は目まぐるしく変化し続けています。
激しく変化する日本のビジネス環境のなかで、多くの企業がチームビルディングに注目している理由として、どういった要因があるでしょうか。
多くの企業がチームビルディングを重視する理由を理解するために、チームビルディングを行う主な目的を紹介します。
組織としての成長を目指す
チームビルディングを行う目的のひとつは、組織としての成長です。
個人の集まりであるグループではなく、さまざまな能力や経験を持つ個人が集まりチームとしてひとつになると、個人では解決できない困難な課題に取り組むことが可能となり、より大きな成果の創出へと繋がります。
そして、より高い目標を達成し続けるためには、チームとしての成長が必要となるため、チームビルディングが重要です。
共通認識の形成
チームビルディングを行う目的として、所属するメンバー同士での「共通認識」の形成が挙げられます。
複数のメンバーで1つの業務に取り組む際、同じ業務を目の前にしても、業務の重要性や優先度、どのように取り組むかなどの考え方はメンバーによって異なります
メンバーによって異なる考え方や意見が出されることは、さまざまなアイデアのもとでより高い成果に繋がる可能性もありますが、一方でチームとしての意見がまとまらず、業務進行に支障をきたすリスクや期待する成果に結びつかないケースもあります。
そのため、チームで同じ成果の創出を目指す際は、直面している課題に対して、メンバー全員が同じ認識でいる姿勢が重要です。
チームビルディングのプロセスを通じて、チームが目指すゴールや目標達成に対する課題などを正しく認識し、メンバー全員が同じ目的に向かって活動する共通認識を形成します。
チームビルディングを行うメリット
今よりも高い成果の創出や企業成長の目標達成に必要なチームとしての成長や、チームメンバー同士の共通認識の形成を目的として行われるチームビルディングですが、実際にチームビルディングを行うと、どういった効果やメリットが得られるでしょうか。
チームビルディングを通じて得られる具体的なメリットを紹介します。
メリット 1チーム内でのコミュニケーションの円滑化
チームビルディングを行うと、メンバー間の相互理解が高まります。
チームメンバー同士が、お互いの背景や考え方などを理解し合うと、業務上のコミュニケーションが円滑になります。
チームメンバー同士のコミュニケーションが円滑になると、より効率的な業務進行による生産性の向上が期待でき、より高い成果の創出へと繋がります。
メリット 2メンバー個人のモチベーションアップ
チームビルディングを通じて、チームでの成果が上がるとメンバー個人の成功体験にも繋がります。
また、チーム活動のなかで、メンバー個人の能力や成果が可視化されることでモチベーションがアップします。
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メリット 3多様な視点からの新たな発想が得られる
チームとしてひとつの課題に取り組むと、さまざまな背景を持つメンバーの多様な視点で考えられます。
多様な視点から、さまざまな意見を出し合うなかで、個人では限界がある新しい発想が得られる点もチームビルディングを通じて得られる大きなメリットです。
チームビルディング「5つの段階」
チームビルディングには5つの段階があると言われています。提唱者である心理学者のタックマンから名を取り「タックマンモデル」とも呼ばれています。
- 1形成期
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「形成期」は、チームが立ち上がったばかりのタイミングで、メンバーもお互いをよく知らない状態です。
チームの目標やビジョン、個人の役割などを探る時期です。 - 2混乱期
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「混乱期」は、チームの目標や個人の役割が明確に定まっておらず、メンバー同士で意見の食い違いなどが発生する状態です。
人間関係や具体的な業務の進め方で、衝突したり不満を抱えたりしやすい時期になります。
- 3統一期
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混乱期を乗り越えると、チームとして目指すビジョンや意見が統一され、一体感が生まれる「統一期」を迎えます。
統一期になると、メンバーがお互いのことを理解し、信頼関係が構築されます。
- 4機能期
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統一期からさらにチームが成熟し、メンバー個人の自立性が高い状態が「機能期」です。
リーダーからの指示がなくても、メンバー個人が率先して行動したり、お互いのサポートができたり、また、チームとしてパフォーマンスを発揮できる時期です。
- 5散会期
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企業内でチームを編成する際は、チームを作るべき目的や目標があります。よって、チームを編成した目標や目的を達成した時点で、多くの場合チームは解散します。
以上の通り、チームビルディングは一連のサイクルを経て、目的を達成すればチームが解散となりますが、混乱期での役割決めや、チームのビジョン統一がスムーズに進行できるか不安な方もいるでしょう。
アデコでは、企業が抱える課題解決に向けた組織開発や人材開発をサポートする「人財躍動化コンサルティング」のサービスを提供しています。
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チームビルディングを行う際のポイント
目標とする成果の創出に向けてチームビルディングを実施する際は、下記のポイントを意識して取り組むようにしましょう。
Point 1メンバー同士による価値観の共有
チームビルディングを円滑に進めるには、メンバー同士の相互理解を深めてコミュニケーションのアンマッチを防ぐ必要があります。
メンバー編成の時点でスキルや経験などを考慮した適切なメンバー構成をしなければなりません。
また、メンバー間で共有すべき価値観に関しては、得意な分野の共有だけでなく、苦手な分野の共有も積極的に行うことが重要です。
Point 2自発的な目標設定
チームビルディングでの重要な要素のひとつに「メンバーの自立性」があります。
多くの企業では、組織での行動管理の方法として、組織の管理者からメンバーに対してトップダウンによる指示命令が出されます。
メンバーの多くが経験の浅い初任者や未経験者の場合はトップダウン型の組織形態が有効に機能しますが、さらに高い目標を目指すために行われるチームビルディングでは、トップダウンによる行動管理は望ましくありません。
チームビルディングを行う際は、メンバーに対してノルマのようなトップダウンでの目標設定は避けて、メンバー自身で主体的に目標を設定してもらうようにしましょう。
Point 3メンバーの役割を明確にする
メンバーひとりひとりに対して、チーム内での役割を明確にし、役割に応じた責任も与えましょう。
メンバー自身が、個人として与えられた役割に対して十分な責任を持ち、メンバー同士で問題解決を行える環境を整えてください。
チームビルディングの実例
企業が抱える課題解決に向けて、実際にチームビルディングを実施した企業の実例を紹介します。
株式会社メルカリ
株式会社メルカリは、国内大手のフリーマーケットアプリ「メルカリ」を運営する企業です。
メルカリでは、世界的に認知度が高いブロック玩具の「レゴ」を使用したチームビルディングを実施しています。
チームメンバーがレゴブロックを使って自由に創作を行います。できあがった創作物に対して、メンバー同士で質問をしたり、創作物に思いを語ったりして、相互理解の促進を目的としています。
参考・出典:メルカリ「レゴ(R)で思考が丸わかり? メルペイPRメンバーでチームビルディングをしたよ #メルカリな日々」
株式会社タニタ
株式会社タニタは、国内大手の計量機器メーカーです。タニタでは、ビジネスゲーム「the商社」を用いたチームビルディングを実施しています。
「the商社」は、ビジネスをテーマとしたカードゲームで、参加者がひとつの会社のメンバーとして3~6人のチームを組み、 ほかのチームとさまざまな交渉を行いながら、自分たちの事業を立ち上げて会社を大きくしていくビジネスゲームです。
カードゲーム上での会社経営を通じて、営業力や組織管理力などの向上を目的としています。
参考・出典:Project Desigh「ビジネスゲーム「The 商社」を活用した営業力・組織力強化研修」
株式会社ぐるなび
株式会社ぐるなびは、国内大手のグルメサイト「ぐるなび」を運営する情報サービス企業です。
ぐるなびでは、アイデアの創出を目的とした会議を歩きながら実施する「ウォーキングミーティング」を実施しています。
ウォーキングなどの適度な運動は血流を活発にし、脳の働きの活性化が期待できます。
より創造的なアイデアの創出が求められる状況では、会議室で座って行うミーティングよりも、歩きながら活発な意見交換を実施するウォーキングミーティングが効果的だと考えたぐるなびでは、皇居の周りをウォーキングしながら、2〜3名のメンバーで新企画のブレーンストーミングなどを実施しているそうです。
まとめ
テレワークの普及など、多様化する働き方の影響で、企業での組織の在り方も変化しています。
企業を取り巻く環境の変化に対してチームの重要性を再認識する企業も増えてきており、チームビルディングに注目する企業も少なくありません。
チームビルディングは、チームの一体感を醸成し、メンバーの能力を最大限発揮できる環境を整え、チームの成果を最大化するための取り組みです。
チームビルディングを通じて、チーム内のコミュニケーションが円滑になり、メンバーのモチベーションアップや新たなアイデア創出などの効果が期待できます。
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