話題のAI OCRとは? RPA連携から活用事例までを包括的に解説

OCRとは、Optical Character Readerを略したもので、紙に印刷された文字や、手書きの文字などを機械でスキャンしてデータ化する技術です。この技術にAIのディープラーニング機能が加わったものを「AI OCR」と呼びます。

紙で業務を行っている場合、AI OCRの導入で業務を大幅に効率化することが可能です。さらにAI OCRと、RPAや既存システムを連携することで、ルーティン業務を自動化することもでき、生産性向上に役立ちます。

本記事ではAI OCRの概要やメリット、注意点や活用事例を詳細にご紹介していきます。

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AI OCRとは

AI OCRは、各種書類やPDF・画像における文字を抽出して読み取り、デジタルデータの文字列に変換するOCR技術を基礎とし、AIが得意とするディープラーニングなどを組み合わせたシステムやソフトウェアを指します。

導入費用は従来のOCRよりも高くなることが一般的ですが、業務時間を大幅に削減できるといえるでしょう。

AI OCRが注目される背景

AI OCRは、なぜ今注目されているのでしょうか? AI OCRが注目される理由や、背景について紹介していきます。

働き方改革とテレワークの浸透

政府が推進している「働き方改革」や、新型コロナウイルス感染症の流行により昨今テレワークが急速に普及しました。「働き方改革」やテレワークの必要性などの背景により、業務の抜本的な見直しについて必要性を感じる企業も増えています。

このような社会的背景から、より企業活動における効率や生産性に注目するという傾向が強くなっています。保険・金融などのビジネスシーンや自治体などでは紙を使った業務はまだまだ多く、手作業で一つひとつExcelに入力しデータ化しているケースも少なくありません。

AI OCRは、こうした紙を中心とした業務を効率化できるツールとして幅広い企業・団体から着目されているのです。

テクノロジーの進化と認識精度向上

近年AI(人口知能)領域では、ディープラーニング分野における研究が急速に進み、特にパターン認識技術の領域においては目覚ましい成果が表れています。AI OCRでは、文字認識事例を多く学習させることによって、識字率の精度がより向上していきます。

文字自体の認識だけでなく、対象となる帳票において認識範囲を特定する「レイアウト認識」についても高い精度で読み取ることが可能です。

AIの技術革新により、手書き帳票のデータ化など、柔軟に実務に対応できるレベルまで識字率が上がったことも、大きな注目を集めている理由の一つです。

OCRの基本的な仕組みとAI OCRの特徴

そもそもOCRとはどのようなものなのでしょうか? OCRにおける基本的な仕組みと、AI OCRの特徴を理解してより効果的に活用できるよう準備しましょう。

OCRの仕組み

OCRで文字認識と読み取りを行う場合は以下のステップを踏みます。

1対象の書類や画像をスキャン
まずは、データ化したい書類や画像をスキャナで読み込んでいきます。 スキャンの際には、対象になる文章の文字がかすれていないか、斜めになっていないかなどに注意してスキャンしましょう。
2画像データを読み取り、行単位・文字単位で文字を特定
読み込んだデータを、ソフトウェアが書類におけるレイアウト・行・文字単位でそれぞれ領域の特定をしていきます。
3特定した文字をデジタルデータに変換
ソフトウェア上で対象の書類における文字領域が特定できたら、該当の文字や文字列をデータベースとマッチングさせてデジタルデータに変換していきます。

以上がOCRの基本的な仕組みです。

AI OCRの特徴とOCRとの違い

AI OCRでは、AIがディープラーニングを行うという特徴があります。
ディープラーニングは深層学習ともいわれ、適切な学習データを与えることでAIが自動的にデータの特徴を抽出する技術です。

そのため、文字の読み取りを行えば行うほど、文字認識(識字率)精度が向上するという特徴があります。

OCRでは基本的に読み取った文字を人間が目視してチェックし修正する工程が生じます。これはAI OCRでも同様ですが、識字率が高いため確認のための労力を大幅に削減できるのです。

さらに、従来のOCRでは実現できなかった帳票のレイアウトを自動認識するAI OCRも存在します。異なる帳票フォーマットでも柔軟な対応が可能になっており、大幅に利便性が向上しています。単純なOCRと比べると、人間が行う確認などの工程は非常に少なくて済むといえるでしょう。

AI OCR導入のメリットと注意点

AI OCR導入のメリットと注意点にはどのようなものがあるのでしょうか? 一つずつ見て行きましょう。

AI OCR導入のメリット

  • 文字読み取りの大幅な作業時間短縮が実現可能
    AI OCRでは、短い時間でレイアウトや文字列を読み込むことができます。

  • 紙のデータ化で検索が容易に
    データ化がしやすくなることで、検索が容易になります。
    業務で確認したい書類を簡単に探せるようになることは大きなメリットの一つだといえるでしょう。

  • 紙のデータ化で共有が容易に
    書類をデータ化することで、他の人に共有することが容易になります。 紙の保管のみだと、特定の書類にアクセスするために在宅勤務ができないといったこともあります。データ化しておくことでこのような状況を回避できるといえるでしょう。

  • 物理的な紙の保管場所が不要に
    AI OCRを導入して、紙の書類をデータ化することで不要な場合は原本を保管しておく必要がないため、保管場所を空けることができます。

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AI OCR導入の注意点

  • 抽出範囲や文字認識の精度が100%ではない
    AI OCRを利用する場合でも、レイアウトの抽出範囲や、文字認識における精度が100%ではないことには注意が必要です。

  • 最終チェックはOCR同様、人間の手で行う必要がある
    最終的なデータチェックや誤字脱字などにおける文字の補正は、人間の手で行う必要があることにも留意しましょう。

導入にあたってのチェックポイント

AI OCR導入にあたって、どのような点に留意すればよいのでしょうか? 導入にあたってのチェックポイントを解説していきます。

将来的な取り組みを見据えた読み取り精度の確認

AI OCRを導入する時点の対象文書の読み取り精度だけでなく、これから順次対応していきたい書類についてもどのレベルで読み取りが可能か事前に確認しておきましょう。このポイントについて確認しておくことで、長く利用できるシステムを選定できるため、長期的な利用を計画しているなら、ぜひ確認したいところです。

また、読み取りたい帳票などのレイアウトも自動で認識してくれるAI OCRであるかどうかで、読み取りにかかる工数が大きく異なることにも留意しましょう。

読み取りの設定も、対象文書の範囲を特定して行うAI OCRと、レイアウト設定など事前準備を行うことで柔軟に複数の対象文書の読み取りを行えるAI OCRがあります。

いずれも自社の目的や将来的な活用計画に応じて、使い方を決めるとよいでしょう。

特定の業務に特化してAI OCRを利用する場合

あらかじめ「見積」や「納品」、「請求書」など特定の業務と帳票に限定してAI OCRを使う場合には事前設定を行わなくても、複数フォーマットの読み取りを行えるタイプもあります。

業務を限定せずにAI OCRを利用する場合

業務と帳票を限定せずにAI OCRを利用したい場合には、事前に帳票のフォーマットやレイアウトについて設定を行うことで対応可能です。
事前に設定を行う場合には、設定の時間や手間がかかってしまいますが、その分読み取り精度が高まります。

システムのセキュリティの確認

AI OCRでは、契約書などに代表されるように、機密情報を扱うことも少なくありません。 導入するシステムが高度なセキュリティを持っていることは重要だといえるでしょう。

ベンダーがプライバシーマークなどの各種認証を取得しているかなど、セキュリティレベルを確認しておくことをおすすめします。

他のシステムとの連携可否

基幹システムなど社内で導入している他のシステムと連携できるかも重要な確認ポイントです。システムによっては、書類画像のアップロードや読み取り結果の確認をAPI連携で実現できるものもあります。

またAI OCRとRPAを連携すれば、読み込んだ帳票を任意のシステムに自動登録することも可能となり、さらに大幅な業務効率化が期待できる場合もあります。

他のシステムとの連携を前提とした活用方法については、ベンダーによく相談してみるのが良いでしょう。

サポート体制

システムやソフトウェアの導入をしても、導入後にきちんと社内に定着させなければ、十分な効果は得られません。社内で安定的に運用を行っていくためにも、導入時をはじめとしたサポートの充実度も重要な検討ポイントです。

導入時だけではなく、社内における運用がきちんと定着するまで、ベンダーからどのようなサポートが受けられるのかも事前に確認しておきましょう。

人事領域における対応可能な業務例

人事関連業務において、AI OCRが活用できる業務にはどのようなものがあるのでしょうか? 4つの業務例をご紹介していきます。

雇用契約書のデータ化

派遣社員を受け入れている企業では、あらかじめ決められている契約期限ごとに雇用契約書の締結業務が発生します。これらの定期的に発生する契約書をAI OCRでデータ化し管理することで、更新漏れなどのミスを防げるようになるといえるでしょう。

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社内申請のデータ化

社内申請において、紙の書類を印刷した上で押印をし、上長から承認を得る企業も多くあります。このような書類を決裁した後にAI OCRで電子化することによって、データとして管理できるようになります。

勤怠管理のデータ化

勤怠管理をタイムカードなどの紙で行っている場合、タイムカードをAI OCRによりデータ化することができます。改正労働基準法により出勤簿、タイムカード等の記録は5年間の保管が必要となっています。

義務化されているような長期の保管では、データ化して管理する利便性が高いといえるでしょう。

これまでデータ化されていない業務のデータ化

上記以外にも、定期的に発生するルーティン業務や、データ化されていないものはデータ化を検討してみるとよいでしょう。データ化することで、経年データの調査や追跡が容易になり、場合によっては経営判断などにも活用できる場合があります。

経営判断などに活用できるデータには、例えば定期的な従業員満足度調査やストレスチェック、お客様へのアンケートなどを紙で保管していたりする場合などが考えられます。

自治体や企業におけるケーススタディ

自治体や企業におけるケーススタディにはどのようなものがあるのでしょうか。先進的な取り組み事例を3つご紹介します。

RPAと組み合わせた活用方法などにもぜひ注目してみてください。

愛知県

愛知県では、働き方改革の一つとして、AI OCRとRPAによる実証実験を行っています。対象となる業務は「財務システムでの支払い事務・予算の執行管理」などです。

請求書をAI OCRで読み取り、愛知県の財務システムにおいて、支出金調書と呼ばれる書類を自動で作成し、その後エクセルの帳票に自動で入力するというものです。

実証実験の結果、対象業務全てで作業時間を大幅削減(削減率 最大95%)などの成果を得られたとのことです。

参考・出典:愛知県

損害保険ジャパン株式会社

損害保険ジャパン株式会社では、タブレットで自動車保険証券などについて自動で読み取るシステムを開発しました。新システム開発の目的は、代理店や各店舗におけるサービス品質の均質化と向上です。

このシステムには、読み取った情報をもとにして見積書作成を自動で行える機能もあります。保険料算出システムに入力を行って見積提案にかかっていた時間を短縮できるようになりました。

保険料算出システムに読み取った情報を送ることで、顧客への提案から契約までを完結できる点も特徴です。このAI OCRを活用した新システムでは、これまで人の手が介在していた見積提案が、完全に自動で行われます。

AI OCRを活用したシステムを開発したことで、従業員の習熟度やスキルに依存することのない体制を構築した好事例といえるでしょう。

参考・出典:【業界初】人工知能(AI)を活用した自動車保険証券・車検証読取りアプリ『カシャらく見積り』の提供開始│損害保険ジャパン株式会社

東京都港区

港区は、東京23区において初めてAI OCRを導入した自治体です。港区では、コミュニティバスと呼ばれる小型バス「ちぃばす」を運用しています。「ちぃばす」で妊婦や障害者、高齢者が使用する無料乗車券を、システムに入力するためにAI OCRを活用しています。

さらに、RPAが自動登録することにより、年間900時間の業務量削減が見込めるようになりました。自治体におけるAI OCRとRPAの連携活用は非常に先進的であり、大幅な業務時間削減につながった好例であるといえるでしょう。

参考・出典:東京都港区

AI OCR導入でコア業務にフォーカスできる体制を構築

AI OCRを導入することにより、定期的に発生する入力や登録における作業が大幅に効率化できます。

ノンコア業務の作業工数を効率化して減らすことによって、よりコア業務にフォーカスした活動ができるでしょう。

アデコではペーパーレス化支援をはじめ、AI OCRを用いた業務効率化の支援を行っています。

デジタルBPO(ITツール×アウトソーシング)

AIを搭載したデジタルツールを活用したアウトソーシングをご提供しています。
業務の品質を高め、生産性を向上し、貴社の組織変革の推進を一気通貫でサポートします。

まとめ

本記事では、AI OCRの導入や、人事領域における具体的な活用方法などについて包括的に紹介してきました。

AI OCRのみでも、作業時間や文書を探す時間を大幅に減らす効果があります。さらに、RPAなどをはじめとした他のシステムと連携することで、さらに業務効率化が期待できるでしょう。

業務効率化から生産性向上というように、AI OCRを導入して良い循環を生み出すことは有効な手段といえます。

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