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派遣社員の受け入れ経験が少ない企業の担当者にとって、「派遣先企業は派遣社員に直接指示を出せるのか」は、意外と分かりにくい点ではないでしょうか。
結論から言えば、派遣先企業は派遣社員と直接雇用契約を結んでいるわけではありませんが、業務指示を出すことができます。
ただし、派遣先企業は派遣社員に対する指揮命令権を持つものの「指揮命令者」や「派遣先責任者」の選定など、いくつかの注意点があります。具体的に見ていきましょう。
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派遣先企業は派遣社員に指示ができる?指示は誰が担当する?
派遣先企業は派遣社員に対する「指揮命令」の権利を持ちます。つまり、派遣先企業は、派遣社員に直接的な指示が可能です。「派遣元企業に伝えたうえで、派遣元企業から派遣社員に指示内容を伝達してもらう」必要はありません。
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ただし、派遣先企業は派遣社員と直接的な雇用契約を締結するわけではありません。あくまで派遣社員への指揮命令には、労働者派遣法第26条に基づく規定があります。
具体的には、派遣先企業には「指揮命令者」の選任が求められます。また、派遣先企業は指揮命令者とは別に、「派遣先責任者」などの選任が求められます。
なお、派遣社員に対する「指揮命令」とは、作業内容や手順の指示や必要に応じたサポートなどを指します。また、派遣社員に契約の範囲外の業務を依頼することは、労働者派遣契約に違反します。そのため、業務範囲が適切かを確認し、他の社員に周知することも指揮命令者の役割です。
このほか、派遣社員の勤怠管理や就業環境の管理なども指揮命令者の役割です。
指揮命令者と派遣先責任者の役割の違いとは?
派遣先企業は、派遣社員への業務指示などを担当する「指揮命令者」に加え「派遣先責任者」「苦情処理等の申出先」を選任する必要があります。
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このうち「苦情処理等の申出先」は派遣社員の苦情処理の窓口に相当します。
一方で派遣先責任者と指揮命令者に関しては、名称を見ても役割の違いが今ひとつ分かりづらいと感じる方もいるでしょう。
この両者の違いを、もう少し詳しく見ていきましょう。
派遣先責任者の要件と職務
派遣先責任者は、派遣社員の就業に関する「責任者」に相当します。派遣先における派遣社員の適正な就業のために、労働者派遣法第41条に基づき選任される者です。
具体的には以下のような職務を担当します。
- 1.適用される労働関係法令や締結した労働者派遣契約の内容などについて周知すること
- 2.派遣受入期間の変更通知に関すること
- 3.派遣先管理台帳の作成、記録及び保存等に関すること
- 4.派遣労働者から申し出を受けた苦情の処理に当たること
- 5.安全衛生に関すること
- 6.派遣元との連絡調整に関すること
なお派遣先責任者は、派遣先事業所ごとに、受け入れる派遣労働者100人ごとに選任が必要です。まず派遣先がその指揮命令の下で受け入れる派遣社員が100 人以下のときは、 1人以上を選任します。100 人を超え200人以下のときは、2人以上を選任します。
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また派遣先責任者の選任については、必須資格などは定められていません。ただし「労働関係法令に関する知識、人事・労務管理等についての専門的知識や実務経験など、その職務を的確に遂行することができる者」を選任するように努めることとされています。
加えて派遣先責任者としての能力向上のため、各地で開かれている「派遣先責任者講習」の受講をすることもおすすめです。
参考・出典:厚生労働省「派遣先責任者講習」
指揮命令者の要件と職務
指揮命令者は、先にも述べた通り派遣社員への業務指示や各種サポート、就業管理などを行う担当者です。
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具体的には以下のような職務を担当します。
- 1.派遣契約内容の把握、および契約内容に基づく業務指示(指揮命令)と管理
- 2.労働基準法等に基づく派遣社員の労働時間・休憩・休日の指示と管理
- 3.男女雇用機会均等法、労働安全衛生法等に基づく就業環境への配慮
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Q.
指揮命令者が行わなくてはいけないことはどのようなことですか
(1)派遣契約内容の把握、および契約内容に基づく業務指示(指揮命令)と管理
(2)労働基準法等に基づく派遣社員の労働時間・休憩・休日の指示と管理
(3)男女雇用機会均等法、労働安全衛生法等に基づく就業環境への配慮
詳細はこちらのQ&Aをご確認ください。
なお、指揮命令者の選任にあたり、派遣先責任者と同様に必須資格などは定められていません。ただし、派遣先企業に直接雇用されている社員の中から選任する必要があります。また、直接的に業務指示を行う担当者のため、業務内容を正確に把握している人物を選ぶことが望ましいです。
派遣先責任者と指揮命令者は同一人物でも良い?
派遣先責任者と指揮命令者は、1名が兼任することが可能です。
ただし「指揮命令者」と「苦情の申出先」については、別の方を選任するのが望ましいです。この両者を同一人物にするのは、望ましくありません。
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派遣先企業が派遣社員に対して避けるべき指示や命令(一例)
派遣社員への業務上の指示出しや適正な管理は、派遣先企業が選任した「指揮命令者」が担当します。
そのため、指揮命令者は派遣社員の業務範囲や所属部署、勤務時間などを正確に把握している必要があります。これらの情報を把握していない場合、労働者派遣契約に違反する指示を出すリスクがあります。
以下に、派遣先企業が派遣社員に対して避けるべき指示や命令の一例をいくつか紹介します。
契約書に記載のない業務の指示
派遣労働者が従事する業務内容は、労働者派遣契約に明確に記載する必要があります。契約に記載された業務範囲を超えて他の業務に従事させることは、労働者派遣契約違反です。そのため、契約書に記載のない業務の指示はしてはいけません。指揮命令者には、派遣社員の業務範囲を正確に把握することが求められます。
所属部署以外での業務や部署異動
労働者派遣契約には、派遣社員が配属される部署名や支店名なども明記されます。つまり所属部署や所属する支店以外での業務に従事させることも、労働者派遣契約に違反します。
ただし、以下のいずれかに該当する場合は派遣社員の部署異動が可能です。
- 派遣元企業及び派遣社員との合意がある場合
- 契約期間が満了し、契約を更新するタイミングでの部署異動の場合
上記に該当しない場合、所属部署以外での業務や部署異動を指示することはしてはいけません。
二重派遣
派遣社員を別の企業に派遣する行為や、それに類する指示出しもしてはいけません。それらは「二重派遣」に該当するためです。
二重派遣とは派遣元企業から派遣された労働者を、派遣先企業が別の企業に派遣する行為です。この場合、派遣先企業は直接的な雇用関係の無い労働者を別の企業に派遣している形となり、「労働者供給」に該当する行為となります。
そして労働者供給は職業安定法第 44 条で禁止されているため、二重派遣は違法行為です。
無理な勤務時間変更や残業の強要
派遣先企業と派遣元企業が36協定を結んでいる場合、派遣先企業は派遣社員に対して時間外労働や休日労働を行わせることが可能です。
一方で、派遣先企業の指揮命令者から直接「時間外労働」「休日労働」を指示された場合、派遣社員にとっては指示を断りづらい点には配慮が必要です。派遣社員の立場も理解し、無理な残業の強要などは控えましょう。
また36協定を結んでいる場合でも、協定の範囲を超えて時間外労働を行わせることは、派遣先企業が労働基準法違反となるため注意しましょう。
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まとめ
今回は、派遣先企業における「指揮命令者」と「派遣先責任者」の役割の違いを中心に、派遣先企業が派遣社員に対して指示を出せるのかについて解説しました。
派遣先企業は派遣社員に対する「指揮命令」の権利を持つため、派遣社員に対する指示が可能です。ただし「指揮命令者」「派遣先責任者」の選任がそれぞれ必要です。同一社員がこの2つの役割を兼任することも可能です。
もっとも派遣社員の受け入れ経験があまり無い企業の担当者にとっては「指揮命令者」「派遣先責任者」の選任や、派遣社員の受け入れ態勢の構築に不安を感じる機会があるかもしれません。
そうした場合は、ぜひアデコにご相談ください。派遣社員のご紹介から受け入れ態勢の構築、指揮命令者や派遣先責任者の選定など、専門知識が必要で理解が難しい箇所まで幅広くサポートさせていただきます。