海外から受け入れた技能実習生が職場に定着し、企業の成長に寄与するためには、適切な指導とサポートが欠かせません。
「技能実習指導員」は、適正な技能実習の実施で重要な役割を果たす人材です。
本記事では、技能実習指導員の概要や役割、要件などを解説し、企業が効果的に外国人技能実習生を支援するためのポイントを紹介します。
外国人材の活用を検討している企業担当者の方は、ぜひ採用活動にお役立てください。
技能実習指導員とは、外国人技能実習制度にもとづき、技能実習生への指導を担当する人材です。
技能実習指導員の選任は、技能実習計画の認定基準のひとつに含まれています。技能実習生を受け入れる企業は、技能実習計画の認定を受けるにあたり、「技能実習責任者」、「技能実習指導員」、「生活指導員」を選任しなければなりません。
区分 | 概要 |
---|---|
技能実習責任者 | 技能実習の実施に関する責任者 |
技能実習指導員 | 技能実習生の指導を担う人材 |
生活指導員 | 技能実習生の生活指導を担う人材 |
技能実習指導員の具体的な役割は、大きく下記の3つです。
技能実習指導員は、実際の職場で必要な技能や知識を技能実習生に教える立場です。具体的には、以下のような指導を行います。
技能実習生が安全かつ快適に生活できる環境を提供し、必要に応じて支援することも技能実習指導員の役割です。たとえば、以下のようなサポートを行います。
技能実習指導員は、実習生の技能習得状況を定期的に評価し、管理しなければなりません。
観察、テスト、フィードバックセッションなどを通じて技能実習計画の目標が達成されているかどうかを確認し、技能実習生に対してどの部分が上手くいっているか、どの部分を改善すべきかを具体的に伝えます。
なお、技能実習指導員が評価を行う際は、技能実習責任者を立ち会わせるなどの方法で公正に実施されるように努めなければなりません。
また、技能実習指導員は、監査の際に実習生の進捗状況や問題点の報告も行います。
技能実習生を受け入れる企業や個人事業主などは、技能実習責任者の選任が義務付けられています。技能実習責任者は、仕事で必要な知識やスキルを習得するための「技能実習責任者講習」の受講が定められています。本記事では、技能実習責任者講習の受講方法や詳しい受講内容、講習機関をまとめてご紹介します。
技能実習指導員になるには、以下2つの要件を満たす必要があります。
有資格者(指導対象となる職種・作業の技能検定等の2級合格者など)であることが望ましいとされていますが、技能実習指導員になるために資格の取得は必須ではありません。
なお、技能実習指導員は、それぞれの要件を満たしていれば技能実習責任者や生活指導員との兼務も可能です。
また、一人ひとりが技能実習の全体について連帯責任を負う場合は、同一の実習実施場所にて複数名の技能実習指導員を選任しても問題ありません。
2つの要件を以下で詳しく解説します。
技能実習指導員は、技能実習生を直接指導するため、技能実習を行う事業所に所属している必要があります。
技能実習生が複数の現場で学ぶ場合や、交代制勤務によって学ぶ場合など、技能実習指導員と技能実習生を同じ場所・時間に配置するのが難しいケースもあるため、常に同時に配置することまでは求められません。ただし、複数人の技能実習指導員を選任するなど、適切に指導が行えるように体制を整備する必要があります。
また、技能実習指導員は、常勤の役員や職員(いわゆる正社員)でなければなりません。2023年4月1日以降、常勤性が確認できる書類の提出は原則として不要となりましたが、個別に提出を求められる場合があります。
技能実習指導員には、実習生が学ぶ職種に関連する5年以上の実務経験が求められます。これは、技能実習生に対する十分な指導を行うために設けられている要件です。
そのため、技能実習生に複数の職種・作業を学ばせる場合は、その全ての職種・作業に関わる5年以上の実務経験が必要となります。ただし、職種・作業ごとに異なる技能実習指導員を選任することも可能です。
また、その職種での通算の経験となるため、職場が変わっても同じ職種での経験年数が5年以上であれば問題ありません。
なお、技能実習指導員は技能実習生を直接指導する立場であるため、移行対象職種・作業に該当する場合は、有資格者(指導する職種・作業にかかる技能検定等の2級など)であることが望ましいとされています※。
※移行対象職種とは、技能実習生が第1号技能実習(1年以内の在留)から第2・3号技能実習(1年以上、最大5年の在留)への移行を認められる一定の業務です。現在、90職種・165作業が移行対象職種として認められています(2023年10月31日時点)。
技能実習指導員になるための2つの要件を満たしていても、以下の内容に該当する場合は技能実習指導員にはなれません。
欠格事由には、主に以下の事由が該当します。
技能実習指導員には、講習や研修の受講義務はありません。
ただし、技能実習指導員の講習受講履歴(直近過去3年以内)は、「優良な実習実施者」の評価項目に含まれており(配点5点)、技能実習を適正に実施し、技能実習生を保護する観点から受講が推奨されています。
技能実習指導員の技能実習への理解を深めるためにも、講習を受講させるのが望ましいでしょう。
技能実習指導員講習の講義項目は、以下のとおりです。
講義項目 | 講義内容 |
---|---|
技能実習法 | ① 技能実習の仕組み ② 近年の制度改正の沿革 ③ 法の意義、目的 ④ 技能実習計画認定関係 ⑤ 技能実習生の保護 ⑥ 罰則 |
労働基準法および関係労働法令 | ① 労働基準法、関係政省令等 ② 労働安全衛生法、関係政省令等 ③ 男女雇用機会均等法、関係政省令等 |
技能実習指導の行い方 | ① 技能実習計画策定の方法 ② 実習成果の確認方法 ③ 技能実習記録のつけ方 ④ OJTのポイント ⑤ 上記①~④の実務演習 |
技能実習生との向き合い方 | ① 技能実習生とのコミュニケーションの取り方 ② わかりやすい日本語の話し方、書き方 ③ 技能実習生のモチベーションを高めるための工夫 ④ 上記①~③の実務演習 |
労働災害防止・労働災害時対応 | ① 技能実習生の事故・災害事例と防止策 ② 実習実施者の義務 ③ 災害時の対応 |
理解度テスト | ① 理解度テスト ② 理解度テストの内容の解説 |
講習の実施機関・日時は、厚生労働省のホームページにてご確認ください。
なお、優良な実習実施者とは、技能習得の実績や学ばせる体制、技能実習生の待遇などの事項を総合的に評価し、「技能を習得させる能力が高い」と認められた受け入れ企業のことです。評価基準ごとに配点が決まっており、合計が6割以上となった場合に優良な実習実施者と認められます。
優良な実習実施者として認められると、第3号技能実習の実施が可能となる、受入れ人数枠が増えるなどのメリットがあります。
技能実習指導員は、技能実習生の受け入れを成功させるための大きな役割を担う人材です。技能実習を行う事業所に所属している常勤の役員または職員で、実習を行う職務に関連する5年以上の実務経験がある方が就任できます。
技能実習生の定着と安定した就業のためには、技能実習指導員による適切な指導とサポートが欠かせません。技能実習指導員の適切な運用は、外国人材を活用した人的課題の解決の第一歩となるでしょう。
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