日本の職場環境にも適性が高く、若手人材も豊富なため、多くの企業でベトナム人の人材が採用されています。
ベトナム人を雇用する際には、性格や価値観を理解した上で、日常のコミュニケーションや教育、働きやすい職場環境の構築が重要です。
本記事では、ベトナム人を雇用する際に知っておきたい性格・考え方の特徴、採用・面接の注意点を紹介します。後半では、ベトナム人を雇用する際の手続きの流れも解説します。
項目 | 内容 |
---|---|
面積 | 32万9,241平方キロメートル(日本の本州の約1.5倍) |
人口 | 約1億30万人(2023年、越統計総局) |
首都 | ハノイ |
民族 | キン族(越人)約86%、他に53の少数民族 |
言語 | ベトナム語 |
宗教 | 仏教、カトリック、カオダイ教他 |
ベトナム社会主義共和国は東南アジアに位置し、南北に細長いS字型の国。北部・中部・南部で気候や文化が異なります。首都はハノイ、最大都市はホーチミン市。
近年、社会主義体制を維持しつつも、市場経済を取り入れる「ドイモイ(Đổi Mới)」政策でGDP成長率6~7%と経済発展が著しく、主要産業は製造業(電子機器、繊維)、農業(コーヒー、米)、観光業。外資系企業が多く進出し、若い労働力が強みです。
日本では、57万人以上(2024年10月末時点)のベトナム人が働いており、日本での労働者数が最も多い国となっています。2025年10月末時点と比べると、1.1倍に増えています。
多くのベトナム人が日本で働くことを選ぶ理由は、以下が挙げられます。
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)
出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)
日本での高い給与水準を求めて、日本での仕事を選ぶベトナム人は多いです。
ベトナム統計総局によると、2023 年のベトナム人の平均月収は 496 万ドン(日本円で約3万円)です※1。
日本の平均年収が約460万円(月収に直すと約38万円)であることを考えると、日本での給与は高い水準にあり、多くのベトナム人にとって魅力的なポイントです※2。
※1 出典:TỔNG CỤC THỐNG KÊ「Thông cáo báo chí Kết quả Khảo sát mức sống dân cư năm 2023」
※2 出典:国税庁「民間給与実態統計調査(令和5年分)」
古くからの歴史的・文化的なつながりに加え、日本企業の進出もあって、日本に親しみを持っているベトナム人は少なくありません。ベトナムに進出している日系企業は、2023年時点で2,394社にものぼります※。
生活の足として使われているホンダのバイクをはじめ、日常の一部にも日本製品が浸透しています。また、日本のアニメ・漫画がきっかけで日本に興味を持つベトナム人も多いようです。
※ 出典:外務省「海外進出日系企業拠点数調査」
日本は世界的にも治安が良い国として知られており、犯罪率の低さもあって、ベトナム人にとっても安心して生活・仕事ができる環境です。
ほかに、医療の水準が高い、健康保険や福利厚生が手厚い、安定した職場環境があることなども、日本で働く魅力を感じる要素となっています。
日本はさまざまな工業分野で技術が発展しているため、働きながら技術を学べる場として、ベトナム人労働者に選ばれる場合があります。
日本での経験を通じてスキルや知識を向上させ、母国や日本でのキャリアに活かすことを目指しているベトナム人も多くいます。
ベトナム人を雇用する主なメリットとしては、以下が挙げられます。詳しく見ていきましょう。
国連人口予測(2024年版)によると、ベトナムの平均年齢は2023年の推計値で32.4歳と若く、若い人材を採用しやすいメリットがあります※。日本人だけでなく、ベトナム人の雇用を視野に入れると、活力のある若い人材を確保しやすくなります。
※ 出典:World Population Prospects 2024
真面目で勤勉な性格のベトナム人は多く、与えられた仕事に責任を持って取り組む姿勢から、製造業、建設業、小売業、サービス業など幅広い分野でベトナム人が活躍しています。
また、手先が器用なベトナム人も多く、たとえば製造業の加工や組み立てなどの細かな作業で高い能力を発揮します。
ベトナムでは、政府の方針により、小学校3年生から英語教育とあわせてコンピューター教育が実施されています。若手人材の多さ、人件費コストの優位性もあって、ベトナム人のエンジニアも注目されています。
ベトナム人を雇用する注意点を、性格・考え方、採用・面接に関して見ていきましょう。
一般的なベトナム人の性格・考え方の傾向を知っておくと、ベトナム人を職場のメンバーに加えた際の、円滑なコミュニケーションに役立ちます。
ベトナム人の性格・考え方の特徴・注意点としては、以下が挙げられます。
ベトナムでは家族を大切にする文化が強く、家族の事情が仕事よりも優先されるケースがあります。たとえば、家族の行事や病気があると、欠勤や早退を希望する場合もあるため、柔軟に対応できる職場環境を整えることが重要です。
ベトナム人は成果主義的な考え方が一般的で、成果に対する評価や報酬が明確に示される職場環境を好む傾向があります。評価や報酬をしっかりと説明するよう配慮しながら、協力しながら仕事を進める姿勢を伝えていくことが必要です。
また、ベトナム人は、自身のスキルやキャリアの向上に意欲的で、自身の成長につながる業務や研修には、積極的な取り組みが期待できます。職場でキャリアパスを明示できると、ベトナム人にとって働きやすい職場につながると考えられます。
ベトナム人は職場での人間関係を大切にし、同僚と家族のように親しく接する傾向があります。お互いの生活や背景を理解し合う関係を求める場合が多く、上司や同僚がプライベートな話題に関心を示すと信頼を深めやすくなります。
ベトナムでは一般的に時間に対する意識が日本ほど厳しくなく、遅刻や納期への感覚が異なることがあります。時間厳守の考え方をしっかり伝えて、意識を共有しましょう。
また、安全への意識が日本の基準と異なる場合もあります。5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の徹底に向けては、安全衛生教育を十分に実施して考え方を伝えることが必要です。
ベトナム人を採用・面接する時の注意点も確認していきましょう。
ベトナム人を雇用する際には、日本語での会話の能力を十分に確認することが重要です。日本語能力は、職場でのコミュニケーションや仕事の効率に直結します。
日本語能力を確認する際には、たとえば、日本語能力試験(JLPT)が参考になります。JLPTでは、N5からN1までの5段階の認定レベルで、日本語能力の確認が可能です。
レベル | 認定の目安 |
---|---|
N5 | 基本的な日本語をある程度理解することができる |
N4 | 基本的な日本語を理解することができる |
N3 | 日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N2 | 日常的な場面で使われる日本語の理解に加え、 より幅広い場面で使われる日本語をある程度理解することができる |
N1 | 幅広い場面で使われる日本語を理解することができる |
また、JLPTなどの日本語試験の結果だけでなく、面接の際にも、日本語でどのくらい円滑にコミュニケーションが取れるか確認を行いましょう。
以下の記事で外国人を雇用する際に、確認すべき点などを紹介しているので、あわせてご確認ください。
関連記事:外国人雇用の注意点やメリット・デメリット、手順についてわかりやすく解説
ベトナム人は、一般的に賃金や労働条件を重視する考えがあるため、給与や勤務時間、休日などの条件は明確に伝えておくことが重要です。
「基本給に何が含まれるのか」「残業代はどのように計算されるのか」など、細かいところまでしっかり説明をしておくと、採用後のトラブルを避けられます。
また、雇用契約書はベトナム語のものも用意するなど、書面上でも雇用条件をしっかり共有する準備を進めておきましょう。
以下の記事で外国人材の賃金に関するポイントを紹介しているので、あわせてご確認ください。
関連記事:外国人労働者の賃金の注意点は?実態や支給のポイントをわかりやすく解説
在留カードでは、以下の点を確認しておきましょう。
「就労制限の有無」の欄には、「就労制限なし」「就労不可」の記載や、一部就労制限がある場合の制限内容の記載があります。「就労不可」の場合も、裏面の「資格外活動許可欄」に次のいずれかの記載があれば、資格外活動許可の範囲内で就労が可能です。
なお、カードが失効しているかどうかは、在留カード等番号失効情報照会(出入国在留管理庁)から確認できます。照会時に入力する在留カードの番号は、カード表面の右上に記載されています。
出典:出入国在留管理庁「外国人の適正な雇用にご協力ください」
特定技能でベトナム人を雇用する時の手続きの流れを見ていきましょう。以下の2つのケースについて手続きの流れを紹介します。
ベトナムから新たにベトナム人を受け入れる時の流れは、以下のとおりです。
受入機関は、ベトナム認定送出機関と労働者提供契約を締結する必要があります。
労働者提供契約の締結後は、送出機関が「ベトナム労働・傷病兵・社会問題省海外労働管理局(DOLAB)」から労働者提供契約の承認を得る手続きを行います。
また、受入機関は、ベトナム人と雇用契約を締結した後に、送出機関から推薦者表の送付を受けます。推薦者表は、送出機関がDOLABへ発行を申請し、送出機関から受入機関に送付されます。
その後は、受入機関による出入国在留管理庁への在留資格認定証明書交付申請、ベトナム人本人によるビザの申請を経て、受け入れするベトナム人が日本に入国する流れとなります。
日本に在留するベトナム人を雇用する流れは、以下のとおりです。
ベトナム人と雇用契約を締結後に、駐日ベトナム大使館に推薦者表を申請して発行を受けます。推薦者表の申請は、受入機関、ベトナム人本人のどちらからでも可能です。
その後、出入国在留管理庁でベトナム人本人が在留資格変更許可申請をして、在留カードの交付を受ける流れです。
日本で働く在留ベトナム人は増加傾向です。出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」によると、在留ベトナム人の人数は、令和4年末は489,312人でしたが、令和5年末は565,026人に増加しました※。
以下で在留資格別の在留ベトナム人・産業別の在留ベトナム人の人数を紹介します。
出典:出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」
出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」によると、在留資格別の在留ベトナム人の人数は、以下のとおりです。
在留資格 | 人数 |
---|---|
永住者 | 24,505人 |
技能実習 | 203,184人 |
特定技能 | 110,648人 |
技術・人文知識・国際業務 | 93,391人 |
留学 | 43,175人 |
家族滞在 | 52,523人 |
定住者 | 6,536人 |
日本人の配偶者等 | 6,686人 |
特定活動 | 11,918人 |
その他 | 12,455人 |
特別永住者 | 5人 |
総数 | 565,026人 |
出典:出入国在留管理庁「令和5年末現在における在留外国人数について」
技能実習が多くて約20万人、特定技能では約11万人が日本で働いています。
厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」によると、産業別のベトナム人労働者数は、以下のとおりです。
項目 | ベトナム人労働者数 | 構成比※ |
---|---|---|
建設業 | 62,026人 | 12.0% |
製造業 | 201,128人 | 38.8% |
情報通信業 | 5,977人 | 1.2% |
卸売業・小売業 | 57,492人 | 11.1% |
宿泊業・飲食サービス業 | 53,998人 | 10.4% |
教育、学習支援業 | 1,849人 | 0.4% |
医療、福祉 | 19,673人 | 3.8% |
サービス業(他に分類されないもの) | 65,051人 | 12.5% |
全産業計 | 518,364人 | - |
※ :小数点以下第2位を四捨五入
出典:厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
製造業で働く割合が最も多く、全体の4割近くを占めています。次いで、建設業、サービス業(他に分類されないもの)で働くベトナム人が多いことが分かります。
ベトナム人は、家族を大切にする、成果主義などの特徴があり、特に時間や安全の面では日本人とは異なる傾向があります。職場でのルールや意識の共有を重視しながら、柔軟な対応も取り入れる姿勢が重要です。
日本では、50万人以上(2023年10月末時点)のベトナム人が働いています。採用にあたっては、語学力の確認、労働条件の明示、在留カードの確認などが注意点です。ベトナム人を雇用する際の注意点を理解して、トラブルなく円滑に採用を進めていきましょう。
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