少子高齢化に伴う労働人口の減少による深刻な人材不足を背景に、外国人材を積極的に活用する企業が増えています。
外国人材を雇用する際に必要となるものに「就労ビザ」があります。
また、就労ビザとは別に「在留資格」や「パスポート」と混同しやすいものもあり、その違いがわかりづらいと困惑する採用担当者も少なくありません。
本記事では、「就労ビザ」に関して「在留資格」との違いや手続きの流れなどとあわせて解説します。
「就労ビザ」とは、一般的には日本での収入を伴う事業を運営する活動や報酬を受ける活動を行うことを認められた「在留資格」のことをさします。
そもそも「ビザ」とは、海外の国や地域を訪れる際に当該国や地域を訪問する目的や理由などが正当であることを証明する「入国査証」のことで、出発前に訪問予定国の領事館等に申請し、発給を受けます。
日本企業が海外の国や地域に居住する外国人材を雇用する場合、当該外国人材は、日本への渡航前にビザの発給を受けて入国する必要があります。
海外在住の外国人が、日本への渡航に際してビザの発給を受けると、その際に日本への渡航目的や職業、保有する資格に応じた「在留資格」が付与されます。
「在留資格」は、日本国内で可能となる活動内容を規定するもので、日本国内での就労を希望する場合には、就労が認められた在留資格を保有して来日する必要があります。
なお本来、「ビザ」と「在留資格」は異なるものですが、一般的には在留資格をビザと呼称するケースも多く、外国人材を雇用する際に必要な「就労が認められた在留資格」のことを、「就労ビザ」や「就業ビザ」と呼ぶこともあります。
海外へ移動する際に必要となるものに「パスポート」があります。
「パスポート」は、自国民の身元を証明するために国が発行する「旅券」のことです。
一方で「ビザ」や「在留資格」は、渡航先の国や地域が来訪を希望する外国人に対して発行する査証や資格です。
外国人材を雇用する場合には、パスポートの所持は当然ですが、ビザと就労可能な在留資格を保有していることが必須となります。
外国人材が日本国内での就労を希望する場合には、就労が認められた在留資格を保有していなければなりません。
就労が認められた在留資格、いわゆる「就労ビザ」は、以下に紹介する19の在留資格です。
在留資格「外交」は、外国政府の大使、公使、総領事、代表団構成員等およびその家族のように、日本政府が受け入れる外国の外交使節団若しくは領事機関の構成員、条約もしくは国際慣行により外交使節と同様の特権および免除を受ける者またはこれらの者と同一の世帯に属する家族の構成員としての活動が認められる資格です。
外交の在留資格で認められる在留期間は、外交活動の期間です。
在留資格「公用」は、日本政府が承認した外国政府や国際機関の「公務」に従事する方とその家族に認められる資格です。在留資格「外交」に係るものは除きます。
公用の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月、30日もしくは15日です。
在留資格「教授」は、「大学教授」などとして、日本の大学や大学に準ずる機関、高等専門学校において、「研究」もしくは「研究の指導または教育」に従事する方に認められる資格です。
教授の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「芸術」は、「作曲家」や「画家」「著述家」など音楽や美術、文学などの「芸術」に関して、収入を伴う活動を行う方に認められる資格です。在留資格「興行」に関わるものは除きます。
芸術の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「宗教」は、「宣教師」のように外国の宗教団体から日本に布教やその他の宗教上の活動を目的として派遣された「宗教家」の方に認められる資格です。
宗教の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「報道」は、海外の報道機関に所属する「報道記者」や「カメラマン」などが日本国内で取材など報道上の活動を行うことを認める資格です。
報道の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「高度専門職」は、就労が認められる在留資格の要件を満たす外国人材のなかで「高度専門・技能」「高度経営・管理」「高度学術研究」の3分野において優秀と認められる能力を有した方に対して発給される在留資格です。
高度専門職の資格には「高度専門職1号」と「高度専門職2号」の2種類があります。
「高度専門職1号」に認定されると、以下のような「優遇措置」を受けることができます。
高度専門職1号として3年以上活動を行っていた方を対象に「高度専門職2号」が発給され、高度専門職1号に与えられる優遇措置に加えて、以下のような優遇措置が受けられるようになります。
在留資格「経営・管理」は、「企業経営者」のように日本で貿易その他の事業経営や事業の管理に従事する方に認められる資格です。
経営・管理の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、6ヶ月、4ヶ月もしくは3ヶ月です。
在留資格「法律・会計業務」は、「外国法事務弁護士」や「外国公認会計士」などの資格を有した外国人材が法律や会計に関する業務に従事することを認めた資格です。
法律・会計業務の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「医療」は、「医師」「歯科医師」「看護師」などの資格を有する外国人が、日本において医療に関する業務に従事することを認める資格です。
医療の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「研究」は、政府関係機関や私企業などに所属する研究者が、日本の公私の機関との契約に基づき研究を行うことを認める資格です。
研究の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「教育」は、外国人が日本の各種教育機関において、語学教育などの教育に関する活動に従事することを認める資格です。
教育の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」は、日本の公私の機関との契約に基づいて行う「理学、工学その他の自然科学」や「法律学、経済学、社会学その他の人文科学」に関する「技術」や「知識」を要する業務もしくは「外国の文化」に基づく思考もしくは感受性を必要とする業務に従事することを認める資格です。
具体的な職種としては、機械工学等の技術者、通訳、デザイナーなどです。
技術・人文知識・国際業務の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「企業内転勤」は、日本国内に本店、支店その他の事業所がある公的機関や私企業の外国にある事業所に所属する外国人職員が、日本にある事業所に期間を定めて転勤して行う活動を認める資格です。
企業内転勤の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「介護」は、「介護福祉士」の資格を有する外国人材が、日本において介護もしくは介護の指導を行うことを認める資格です。
介護の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「興行」は、演劇、演芸、演奏、スポーツなどの「興行」に関わる活動や、その他の芸能活動を認める資格です。
興行の在留資格で認められる在留期間は、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月、もしくは30日です。
在留資格「技能」は、外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦士、貴金属等の加工職人等の「産業上の特殊な分野」に属する熟練した技能を要する業務に従事する活動を認める資格です。
技能の在留資格で認められる在留期間は、5年、3年、1年、もしくは3ヶ月です。
在留資格「特定技能」は、日本国内で人手不足が深刻とされている特定産業分野(12業種、追加予定を入れると16業種)において、人手不足解消のために、即戦力となる外国人材の雇用が可能になった在留資格です。
「特定技能1号」と「特定技能2号」の2種類があり、「特定技能1号」は16分野、「特定技能2号」は11分野が対象となっています。
特定技能1号の対象となる16分野は以下のとおりです。
上記のうち、「自動車運送業」・「鉄道」・「林業」・「木材産業」は令和6年3月に対象の追加が発表された新しい分野です。具体的な受け入れ状況については、2024年6月現在では発表がないため今後の情報に注目しておきましょう。
なお、特定技能2号の対象となる分野は上記16分野から介護・自動車運送業・鉄道・林業・木材産業を除いた11分野となります。
特定技能の在留資格で認められる在留期間は、特定技能1号の場合、1年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間と規定されており、特定技能2号の場合では、3年、1年、もしくは6ヶ月です。
在留資格「技能実習」は、日本が保有するさまざまな産業技術の習得を希望する外国人材に対して認められる資格です。
技能実習の在留資格は技能実習1号、技能実習2号、技能実習3号の3種類に分けられます。それぞれ認められる在留期間は、1号が1年、2号が2年、3号が2年を超えない範囲で法務大臣が個々に指定する期間とされており、あわせて最長5年まで認められています。
在留資格のなかで、以下に紹介する4つの資格には、就労活動に対する制限がありません。
「特定活動」は指定される活動によって就労の可否が異なる在留資格です。告示されている内容だけでも1〜50号(11,13,14号は削除済み)まであり、告示外の特定活動もあります。
具体的には、外交官等の家事使用人、ワーキング・ホリデー、経済連携協定に基づく外国人看護師・介護福祉士候補者などが挙げられます。
就労の可否は、旅券に添付されている指定書に記載されています。
在留資格のうち以下の5つは、原則として就労が禁止されており、就労ビザには該当しないため注意が必要です。
ただし、「留学」「家族滞在」「特定活動」に関しては、地方入国管理局からの資格外活動の許可を受けることで就労が可能となります。
外国人を雇用する際には、就業可能な在留資格を保有していることが前提となります。そこで、就業可能な在留資格を申請する際のポイントを紹介します。
就業可能な在留資格の申請には、新たに在留資格を申請する場合と就労不可の在留資格から就労可能な在留資格へ変更する場合の2種類があります。
在留資格の変更は、たとえば「留学」の在留資格を保有している外国人が、就労可能な在留資格に変更するケースなどが該当します。
新規で在留資格を取得する際には、以下のような手続きが必要となります。
ビザは、海外在住の外国人が日本に入国する際の許可証であるため、日本国内での申請作業は代理人が対応し、出国地での対応は申請する外国人本人が対応することとなります。
在外外国人の入国と日本国内での就労に必要なビザ発給に必要な在留資格認定証明書交付申請には以下の書類が必要です。
留学生など既に在留資格を保有しており、日本国内に滞在中の外国人が資格を変更する場合の流れは以下のとおりです。
「就労ビザ」とは、一般的には「就労が認められた19の在留資格」のことをさします。
海外に居住する外国人を雇用する場合には、就労が認められた在留資格が必要となり、この就労が認められた19の在留資格が「就労ビザ」です。
就労ビザの申請方法は、新たにビザを取得するケースと既に保有している在留資格から変更する2つのパターンが存在します。
Adeccoの「特定技能外国人材紹介」では、特定技能に特化した外国人材の紹介を行っております。厳格な基準をクリアした意欲的な人材のみ採用しているため、在留外国人の雇用や定着などでお悩みの方は、ぜひAdeccoにご相談ください。