昨今の日本では、飲食店の人手不足が深刻な問題として挙げられます。
人手不足の原因を追求し、問題解決する必要がありますが、どう対応すれば良いかわからない場合もあるでしょう。人手不足解消のため、外国人材採用を視野に入れるのもひとつの手です。
本記事では、飲食店でなぜ人手不足が起きているのか、解消する方法や外国人材採用する際の注意点などを紹介します。飲食店で外国人材を雇用するメリットや流れも解説するので、外国人材採用を考えている場合はぜひ参考にしてください。
農林水産省が発表した「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」のデータによると、飲食店の欠員率は全産業と比べて2倍以上高く、離職率の高さが課題とされています。
飲食店で人手不足が深刻化している原因として、主に以下の理由が考えられます。
参考・出典:農林水産省「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」
厚生労働省発表「産業別にみた賃金」を見ると男女計では「宿泊業、飲食サービス業」の257.6千円が全産業で最も低く、女性は「宿泊業、飲食サービス業」が215.0千円と同じく最も低い賃金です。
データからもわかるとおり、飲食業は他業種と比べて給与待遇が低いため、飲食業界を志望する人が少なくなっており、飲食店の人手不足が深刻化する大きな理由になっています。
参考・出典:厚生労働省「産業別にみた賃金」
飲食業はシフト制を採用しているところが多く、基本的に年末年始や連休にも出勤します。年中無休や24時間営業の店舗もあり、自由に休みを取りづらい環境が人手不足に繋がっています。
農林水産省発表の「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」によると「育児休業を取りにくい」と回答した男性は46.9%で「残業が多かったり労働時間が不規則」と回答した女性が33.8%です。
男女ともに、長時間の拘束や休暇の取りにくさが課題として浮き彫りになっており、休みの取りにくさや少なさを理由に離職する方も多くいます。
参考・出典:農林水産省「外食・中食産業における働き方の現状と課題について」
メインがホール業務でも、一部キッチン業務をしなければならない店舗があるなど、飲食業は業務量の幅が広い傾向です。接客業務やクレーム対応でのストレスをはじめ、疲労も感じやすいでしょう。
アルバイトでも、社員や店長と同等の業務量を求められるケースもあり、飲食業は仕事量が多いのに給与が安い現状に繋がっています。責任が伴う業務も多く、業務に関するストレスから辞めてしまう方も少なくありません。
近年ではフリーランスや在宅勤務もメジャーになっており、働き方が多様化しています。企業に属さない働き方を選択する方も増えました。
シフトどおりの出勤が求められる飲食業は、自由な働き方を求める方からは選ばれにくく、人手不足に繋がっています。労働時間の長さや仕事量の多さも、多様化した働き方のなかでは敬遠されやすいポイントです。
飲食店で人手不足が起きると、以下の問題が発生するかもしれません。各ポイントを詳しく解説します。
業務が忙しくなると、効率重視で顧客にかけられる時間が少なくなり、サービスの質が低下してしまいます。片付けが間に合わなかったり、料理の提供に時間がかかったりと、細かな気配りが難しくなるでしょう。
人手不足でひとりのスタッフが担当する業務が増えると、ミスにも繋がりやすいです。飲食業でのミス増加は、顧客の不満にも直結します。
人手不足で効率が悪くなると、待ち時間の増加、サービスの質低下などが発生して顧客満足度が低下するかもしれません。顧客満足度の低下は、店舗からの客離れに繋がりやすく、売り上げの低下が進む原因にもなります。
また、近年ではSNSや口コミの影響が大きく、悪い評判が広がってしまうと新規で来店する客数も減ってしまうでしょう。人手不足はサービスの低下、顧客満足度の低下と悪循環を引き起こす要因です。
業務量や給与に納得できず従業員が辞めて離職率が高まると、新しく人員を確保するための採用コストが比例して増加するため、さらなる経営難に陥ってしまうでしょう。
求人広告を出すのにもコストがかかりますが、反応がなく雇用に繋がらないケースも珍しくありません。
また、人材を確保してもすぐに離職してしまう環境では、人手不足が慢性化します。採用コストを抑えるためにも、人材が定着するための対策が必要です。
人手不足で店が回らなくなると、経営が難しくなり閉店を余儀なくされます。資金力の乏しい飲食店の場合、人手不足を解消するための投資を行うことも難しく、改善に繋がらないケースも多いです。
近年小売や飲食業界では、慢性的な人手不足を理由に、24時間営業の取りやめや営業時間見直しなどの動きが広がっています。
飲食店で人手不足を解消する方法として、以下の対策が挙げられます。各方法を詳しく解説します。
前述のとおり、飲食業界では雇用待遇や労働時間、給与面などに不満を持ち、離職する方が多いです。不満を解消するべく、時給や待遇を見直して、改善する必要があるでしょう。
ひとり当たりの業務量が多くなりやすい場合は、効率的な流れで業務が行えているか、複数のスタッフ間で重複している作業がないかなど、業務の最適化が求められます。全員が無理なく働ける環境づくりが重要です。
また、人手不足の原因として挙げられる「休みの取りにくさ」を改善するためには、シフトの融通がつきやすいよう工夫しなければなりません。休みを取りたい時にヘルプで入れる人を確保する、代わりの人を探しやすいツールを使用するなどの方法を検討しましょう。
飲食業では評価されづらい点も離職率の一因です。評価による昇給制度の導入で従業員のモチベーション向上をはかり、定着率安定を目指すと改善に繋がるでしょう。
自身の頑張りを適正に評価される環境なら、仕事へのモチベーションも上がりやすく、人材の定着を目指せます。評価が上がると給与や賞与が上がるなど、あらかじめ基準を明確に定める姿勢が大切です。
少子高齢化の日本の飲食業界では、外国人材を積極的に採用している企業も増えてきました。雇用の対象を外国人まで広げると、より多くの優秀な人材に出会えるでしょう。
外国人材を雇用する場合、主に特定技能で採用するか、就労時間に制限のある留学生等の資格外活動の外国人を採用するかの選択肢があります。
特定技能とは、2019年から開始した在留資格制度で、専門性や特定の技能を有する外国人を労働者として受け入れるために作られた制度です。
「特定技能1号」「特定技能2号」の2種類が存在していて、飲食業界への従事が可能な特定技能「外食」は1号に分類されます。特定技能を取得している外国人は、接客、調理、衛生管理など飲食業全般の業務は可能です。
「文化活動」「留学」「家族滞在」の在留資格を取得している外国人は、原則就労できませんが、資格外活動の許可を得ていれば、制限内で就労が可能です。
飲食業界では、資格外活動の許可を得た、留学中の学生も多く働いています。留学生の本来の活動はあくまで勉学であるため、本来の活動を阻害しないよう、アルバイトができる時間は週28時間以内と定められています。
参考・出典:出入国在留管理庁「外国人労働者の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」
参考・出典:東京外国人雇用サービスセンター「日本で働ける外国人・働けない外国人」
飲食店で外国人材を採用する際は、国内もしくは国外から募集します。採用までの流れは以下のとおりです。
国内にいる外国人を雇用する場合は、外国人向け求人サイトや外国人雇用サービスセンター(ハローワーク)、人材サービスなどを利用して募集を行います。
特にハローワークでは、日本で働きたい外国人の職業相談、職業の紹介などを積極的に行っています。求人を出すことで、日本での就労に意欲的な外国人材の雇用に繋がりやすいでしょう。
東京外国人雇用サービスセンターや新宿外国人雇用支援・指導センターには、外国語通訳員も配置されています。
日本国内にいる外国人を雇う以外に、国外からの募集もひとつの手です。より多くの優秀な人材と出会い、人手不足解消に繋がります。
SNSや海外の求人サイトに求人を掲載するほか、人材紹介会社を利用しても良いでしょう。より希望にあった人材も探せます。
採用する職にマッチしているか、応募者の能力などを調査し、書類選考を行った後はオンラインなどで面接を行い、内定を出します。
契約の際、口頭での説明だけではうまく伝わらず、すれ違いやトラブルが生じるかもしれません。海外では、日本以上に書面による契約書を重視する国が多いため、契約の際は書面による雇用契約を結ぶと望ましいです。
飲食店で外国人材を雇用する主なメリットは以下です。詳しく解説します。
厚生労働省が発表している「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)によると、令和5年の外国人労働者数は前年から225,950人増加した2,048,675人で、はじめて200万人を超えています。
また、外国人を雇用する事業所数は318,775所で、前年から19,985所増えています。届出が義務化されて以降、過去最高である点を踏まえると、外国人雇用をはじめている事業者は増えつつあるとわかります。
外国人雇用が増えると、飲食業界でも人手不足が解消され、サービスの質や顧客満足度の向上に繋がります。
参考・出典:厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和5年10月末時点)」
ダイバーシティ(Diversity)は多様性を意味する言葉で、企業など集団にて性別や人種、属性の異なる人々が集まっている状態をいいます。
近年では、外国人をはじめ多様な人材を採用することで、多様な働き方を実現する動きが広まっています。
外国人雇用で企業が多国籍環境になると、新しいアイデアの創出につながるかもしれません。海外進出を見据えている場合は、情報収集やマーケティングの際に即戦力となるでしょう。
コロナ禍以降の訪日外客数は、2023年12月に単月過去最多数を更新しています。観光客が多い地域や場所の飲食店では、外国人材がいるとスムーズな接客が可能です。
訪日外国人が多く訪れる飲食店なら、注文の際に対応できるスタッフがいると、顧客の安心感にも繋がります。きめ細やかな接客対応は、リピート客の増加にも大いに役立つでしょう。
参考・出典:日本政府観光局「訪日外客数(2023年12月および年間推計値)」
外国人材の年齢は「20~29歳」が多く、若い人材が獲得できる可能性が高いです。少子高齢化の日本では、優秀な若手人材の確保が難しく、外国人材の雇用で問題を解決しています。
なかでも、先述した特定技能制度を利用して採用する場合、規定以上のスキル所持が前提のため、飲食業界でも即戦力になるでしょう。
参考・出典:厚生労働省「在留資格別×男女別にみた外国人労働者数の推移」
飲食店で外国人材を雇用する際は、以下のポイントに注意しましょう。
飲食店で外国人材を雇用する場合、最低限の日本語能力が求められますが、能力の程度には個人差があります。面接の際、求める日本語能力を身につけているか確認しましょう。
日本語能力は日本語能力試験で判定されます。レベルに応じてN1〜N5まで分けられていますが、採用目安はN3以上が一般的です。しかしながらN3は日常会話程度のレベルですので、飲食業の接客における複雑なビジネス会話は難しいかもしれません。
参考・出典:法務省「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第10回)資料」
雇用する外国人の在留期限切れや、観光で短期滞在目的を理由に入国した外国人が未許可で働くなど、不法就労助長罪に抵触しないよう注意が必要です。
リスクを避けるために、内定を決める前に在留期限が切れていないか、在留カードが本物か、業務内容が在留カードで認められている範囲かをチェックしましょう。
外国人に不法就労をさせてしまうと、不法就労助長罪として罰せられ、企業にも3年以下の懲役や300万円以下の罰金など罰則が与えられる可能性があります。
参考・出典:法務省「不法就労防止にご協力ください。」
文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在など原則として就労が認められない在留資格もあります。雇用する外国人の在留資格が、就労できる内容かどうか必ず確認しましょう。
定められた範囲で就労活動ができる在留資格は以下19種類です。
上記の在留資格を有する外国人は、定められた範囲で就労活動が可能です。なお、就労活動に制限がない在留資格は以下4種類です。
雇用を検討する際は、就労可能な在留資格が許可されているかどうか、必ず確認してください。
参考・出典:厚生労働省「外国人の方を雇い入れる際には、就労が認められるかどうかを確認してください。」
飲食業界での人手不足は深刻化しており、業務の大変さや賃金の低さ、休みの取りにくさなどが原因で離職してしまう方も多くいます。人手不足を解消するため、外国人材採用を取り入れている店も増えています。
飲食店ではじめて外国人材を雇う場合、採用方法や人材の選び方に悩むケースもあるでしょう。スムーズな外国人雇用を叶えたいなら、Adeccoの「特定技能外国人材紹介」の利用もおすすめです。
Adeccoの「特定技能外国人材紹介」では、定着率が高く意欲的な外国人の紹介を行っています。独自の日本語トレーニングも行っているため、外国人材の育成にお悩み場合もぜひご相談ください。