特定技能外国人は、日本で就労する外国人のなかでも特に専門的な技能を有する人材です。
特定技能外国人の受け入れには政府も積極的な姿勢を見せており、人手不足解消に向け、受け入れ人数の拡大や対象分野の追加を発表しました。
受け入れ前から一定水準以上のスキルが把握できるため、採用のミスマッチが発生しにくく、特定技能外国人を雇用する事業所も増えつつあります。
特定技能外国人は適切な受け入れ先があれば転職が可能です。
特定技能外国人が転職する際には、本人および企業側にも求められる手続きが存在します。本記事では、特定技能外国人の転職手続きを解説します。
特定技能は、在留資格の一種です。人材の確保が特に困難な状況にある特定産業分野を支援するため国によって制度が創設されました。
1号と2号の分類があり、1号の在留期間は通算5年まで、2号は無期限となります。特定技能1号の在留資格は技能評価試験および日本語の検定の両方に合格するか、技能実習制度の2号を良好に修了して取得できます。
一定水準以上の知識やスキルがなければ取得できない資格であるため、即戦力としての活躍が期待できる点がメリットです。
特定技能と名称の似た制度に「技能実習」が存在します。技能実習は新制度「育成就労」への移行が予定されていますが、現行制度では原則として本人都合による転職ができません。
特定技能制度は技能実習と異なり、特定技能外国人を雇用できる受け入れ先があり、条件を満たす場合は転職が可能です。次項では以下2つの条件を詳しく解説します。
転職前と同じ分野・区分であれば、技能評価試験の再受験の必要はありません。ただし、在留資格変更許可申請は必要です。
同じ分野であっても、区分が異なる場合は該当の技能試験に改めて合格しなければなりません。たとえば農業分野には耕種農業と畜産農業の2種類の区分が存在しますが、片方の試験にしか合格していない場合、もう片方の区分に転職はできません。
ただし、技能の共通性が認められる一部区分では異なる職種でも受験する必要がない場合もあります。例えば、技能検定1級合格で、機械金属加工区分と電気電子機器組立て区分の両方に含まれる技能(機械加工やプラスチック成形など)の検定に合格した場合には、機械金属加工区分と電気電子機器組立て区分のいずれの業務区分でも就労が可能です。
受け入れの際は各分野の条件を確認しましょう。
特定技能2号の在留期間は無期限ですが、1号の在留期間は通算で5年以内と定められています。
この「5年」は分野や所属先の企業を問わず通算されます。また、日本から出国してもリセットされません。そのため、すでに特定技能1号の在留資格での在留歴がある方を受け入れる場合は、残り期間に注意しましょう。
日本に在留している特定技能外国人を雇用する場合のフローを解説します。
受け入れ機関は、「技能実習2号を良好に修了」または「所定の試験に合格」の条件を満たす外国人と雇用契約を締結します。特定技能1号の外国人を受け入れる場合は支援計画を作成し、事前ガイダンスもこのタイミングで行ってください。
その後、地方出入国在留管理官署に「在留資格変更許可申請」を行います。申請内容に問題がなければ在留資格が変更された在留カードが交付され、就労を開始できます。
すでに特定技能外国人として日本に在留している方についても、転職する場合は必ず入管への申請と許可が必要です。許可を受けないまま自社で働かせた場合、不法就労助長罪に当たり、3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金またはその両方が科される可能性があります。不明点は登録支援機関などに相談し、手続きに不備がないように気を付けましょう。
なお、支援業務は一部または全部を登録支援機関と呼ばれる外部の機関に委託も可能です。
特定技能外国人を受け入れるための、企業側が満たすべき基準を解説します。
特定技能外国人の受け入れが可能な分野は以下のとおりです。
特定技能外国人を受け入れる事業者を受け入れ機関といいます。制度で定められた特定分野に該当する事業者のみ受け入れ機関になれますが、所定の基準を満たさなければ特定技能外国人の雇用はできません。
特定技能外国人の受け入れ機関が満たすべき基準は以下のとおりです。
① 外国人と締結する雇用契約が適切である
外国人である旨を理由に不当な内容にしてはなりません。雇用契約の基準は次項で解説します。
② 受け入れ機関自体が適切である
受け入れ機関は法律や条例などを遵守しなければなりません。また、「禁錮以上の刑に処せられた者」などの欠格事由に該当する場合は受け入れ機関として不適切とみなされます。保証金の徴収や違約金契約も認められません。
③ 外国人を支援する体制がある
受け入れ機関は、特定技能1号人材が日本で円滑に生活するための各種支援を実施しなければなりません。支援を「登録支援機関」に委託することも可能です。
④ 外国人を支援する計画が適切である
受け入れ機関は、特定技能1号人材を支援する計画を作成し、計画に基づいた支援の実施が必要です。支援計画書は支援責任者の氏名および役職のほか、次の内容を記載しなければなりません。
事前ガイダンス・出入国の際の送迎・住居確保や生活に必要な契約支援・生活オリエンテーション・公的手続きなどへの同行・日本語学習の機会の提供・相談や苦情への対応・日本人との交流促進・転職支援(人員整理等の場合)・定期的な面談や行政機関への通報・支援を委託する場合は登録支援機関名
特定技能外国人と締結する雇用契約が適切な内容でなければ、受け入れ機関としては認められません。特定技能の雇用契約が満たすべき具体的な基準は以下のとおりです。
出典:出入国在留管理庁「特定技能外国人受け入れる際のポイント」
外国人を雇用した場合は、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」も必要です。「雇用保険被保険者資格取得届」の提出をもって外国人雇用状況の届出とすることができます。
提出期限は雇い入れの翌月10日までです。
雇用保険被保険者でない外国人を雇い入れた場合は、「外国人雇用状況届出書」を提出してください。
提出期限は雇入れの翌月末日です。
特定技能外国人が退職する場合は、下記のうち必要な届出を地方出入国在留管理官署に行ってください。
【地方出入国在留管理官署への届出】
地方出入国在留管理官署への届出は事由発生より14日以内に行います。インターネット・窓口持参・郵送での届出が可能です。
【ハローワークへの届出】
提出が必要な届出書について詳しく解説します。
経営上の都合や特定技能外国人本人の都合により雇用契約が終了した場合、「特定技能所属機関による受入れ困難に係る届出」が必要です。受け入れ困難となった事由や発生時期・原因などを、「受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書」に添付して届け出ましょう。
特定技能1号の外国人が企業の都合により非自発的転職をする場合、企業は転職先探しや行政情報の提供など必要なサポートを行わなければなりません。
特定技能外国人の雇用の継続が困難になった時点が事由発生日となります。例えば、外国人から退職の申し出があった日などです。
特定技能外国人との雇用契約を変更または終了した際は「特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書」の提出が必要です。雇用契約の終了年月日や事由などを記載して届け出ましょう。
特定技能外国人の退職日が事由発生日となります。
ハローワークヘの届出は、雇い入れ時だけでなく退職時にも必要です。
雇い入れ時同様、雇用保険被保険者資格喪失届の提出外国人雇用状況の届出とすることができます。期限は退職日の翌日から起算して10日以内です。
雇用保険被保険者でない外国人が退職した場合は、「外国人雇用状況届出書」を提出してください。期限は雇い入れ時と同じく翌月末日です。
転職の際に外国人本人が行う手続きを解説します。
特定技能外国人は、退職した際と、転職先で雇用契約を締結した際の両方のタイミングで「所属(契約)機関に関する届出」を行わなければなりません。
届け出先は地方出入国在留管理官署で、期限は届出の事由が生じた日から14日以内です。インターネット・窓口持参・郵送から都合の良い方法を選択できます。
特定技能外国人が転職する場合は在留資格変更許可申請が必要です。
特定技能外国人が転職先との雇用契約を締結し、必要な各種書類が揃ったタイミングで、地方出入国在留管理官署に在留資格変更許可申請の手続きを行います。許可が下りなければ就労を開始できません。
許可がおり在留カードが発行される際に、パスポートには受け入れ機関や分野が記載された「指定書」が貼付されます。
また、新しい在留カードの受け取り時には手数料として印紙代4,000円がかかります。手続きはオンライン申請が可能です。
在留資格変更申請の手続きが完了するまで数か月程度の期間を要します。特定技能外国人は許可が下りるまで就労できません。
申請中はパート・アルバイトなども認められないため、空白期間ができる旨は外国人本人も把握しておくほうが良いでしょう。また、受け入れ機関は可能な限り入社日の調整に協力しましょう。
申請内容に不備があると、在留資格変更許可申請が不許可になる可能性も考えられます。スムーズに手続きを進めるため、ミスや漏れのないようチェックを行ってください。
特定技能外国人は、受け入れ先があり、職種や在留期間の条件を満たせば転職は可能ですが、外国人本人・企業ともに必要な手続きが存在します。
転職には在留資格変更許可申請手続きが必要で、許可が下りるまでは就労できないため注意が必要です。手続きに不備がないよう注意しましょう。
アデコでは特定技能外国人材紹介サービスを行っているので、ぜひご活用ください。